東京大学が次期学長に、教職員による意向投票で2位だった候補を選出した問題を巡り、文部科学省は10月20日、東大の監事と運営方針会議に対し、選考の経緯を検証し、説明責任を果たすよう求める要望書を手渡した。
個別の国立大学の学長(学長)選考について文科省が大学側に検証を要請するのは初めてで、関芳弘文部科学相は同日の閣議後記者会見で「今なお選考の過程や理由について明確な説明がなされていないとの声も多く、遺憾だ」と語った。
文科省によると、20日午前、合田哲雄高等教育局長が東大を訪れ、要望書を直接手渡した。
要望書は、学長選考は客観的な事実に基づいて慎重に審議を尽くし、公正かつ公平に行われる必要があるとした上で、学内外から選考の過程や理由の説明を求める声が上がっている現状を踏まえ、説明責任を果たすことが東京大学のガバナンス改革を進める上で重要だと指摘した。
学長選考・監察会議に意見を述べる権限を持つ運営方針会議と、法人の業務を監査する監事の双方に是正を促した形だ。
大学の自治を国が踏み越えることにならないかとの質問に対し、関文科相は「大学の自治は我々も重要と考えている」としつつ、監事や運営方針会議が「職務が適正に果たされるよう努めていただくことが必要」と述べ、東大側の自主的な対応に委ねる考えを示した。
発端は9月28日。学外委員を含む16人で構成する東京大学学長選考・監察会議(国谷裕子議長)は、大学院総合文化研究科の藤垣裕子教授(64)を次期学長予定者に選出したと発表した。
藤垣氏は来年4月1日、任期満了を迎える藤井輝夫学長の後任として就任し、東大史上初の女性学長となる。任期は6年。
ところが同日実施された教職員の意向投票では、藤垣氏は首位ではなかった。
上位3人による決選投票となった第2回投票で、染谷隆夫執行役・副学長が1107票(得票率約51%)を集めて首位に立ち、藤垣氏は553票で2位、山本隆司理事・副学長が451票で3位にとどまった。
選考・監察会議は、候補者の資料や推薦書、面接、所信表明に加え意向投票の結果も総合的に考慮したうえで藤垣氏を選んだと説明している。
得票で過半数を占めた候補が選ばれなかったことには、学内外から疑問の声が相次いだ。
10月13日には教職員有志523人が、意向投票の結果をどのように考慮し候補者を比較したのか具体的な説明を求める要望書を選考・監察会議に提出した。
同会議は16日、投票結果は各委員の評価に影響したと説明した一方、協議や面接の内容は守秘を理由に詳しい開示を避けた。関文科相はこの対応について「外形的な選考過程の説明にとどまっている」と不十分との見方を示していた。
東大は文科省の要望を受け、今後の対応を検討するとみられる。藤垣氏の学長就任は来年4月に迫っており、選考過程の正当性を巡る議論はなお続きそうだ。
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