「絶対に行くな!」
中国の男性が会社の社員旅行についてネットで相談すると、警告が殺到した。それでも男性は会社を信じ、東南アジアへ。
ところが、現地から届いたのは、不自然な「無事です」の動画だった。
詐欺組織に捕まったのではないか。心配したネットユーザーが次々と通報し、数日後、男性は帰国した。
いったい何が起きたのか。ネットの声が男性を救ったのだろうか。
男性は中国河南省鄭州市の出身。以前は北京で働いていたが、妊娠中の妻を世話するため一時帰郷。その後、再び仕事を求めて上海へ出てきた。
働き始めてまだ2か月。試用期間中にもかかわらず、会社から東南アジアへの社員旅行に誘われた。
なぜネットユーザーは必死に止めたのか。
実は東南アジアでは、高収入の仕事や旅行を口実に中国人を誘い出し、詐欺拠点に連れ込む事件が問題となっている。中国国内で社員を採用し、信頼関係を築いた後、「社員旅行」と称して海外へ連れ出す手口も報じられている。
男性も危険性を耳にしていたようだが、結局は参加を決めた。
出発前に上海浦東国際空港から動画を投稿。その動画には2万件以上のコメントが寄せられ、7万回以上共有された。
現地到着後、男性はほかの社員らとバスに乗る動画を公開。観光施設へ向かうという案内もあり、当初は普通の旅行に見えた。
しかし、その後、様子が一変した。旅行を楽しむ映像は消え、男性が一人で「無事です」と繰り返す動画が投稿されるようになった。
表情はこわばり、視線も落ち着かない。そして、こんな言葉を口にした。「これ以上勝手に憶測しないでくれ。本当に帰れなくなる」
「無事だ」と言いながら、「帰れなくなる」と訴える。その矛盾にネットユーザーは異変を感じた。
動画には女性の悲鳴のような声が聞こえたとの指摘もあり、詐欺組織に監禁されているのではないかという疑惑が広がった。
人々は動画を拡散し、警察に通報するなど、男性の救出を求めた。
そして数日後、男性は上海浦東国際空港から動画を投稿し、帰国したことを報告。助けようとしてくれたネットユーザーに感謝を伝えた。
ネット上では、騒ぎが大きくなったため、詐欺組織が男性を解放したのではないかとの見方が広がっている。
2025年、中国人俳優の王星さんが詐欺に遭い、ミャンマーの詐欺拠点に連れ込まれた事件は、中国内外で大きな注目を集めた。中国共産党当局は世論の圧力を受け、ミャンマーの詐欺拠点に対する、いわゆる「大規模な取締り」を再び実施し、悪名高いミャワディのKK園を破壊したと発表した。
しかし、最近の情報によると、KK園などの拠点はすべて破壊されたわけではなく、今年に入って再建が始まり、ミャワディの詐欺拠点には拡張の動きも見られる。
東南アジアの詐欺拠点の多くは中国人が運営しており、中国共産党の「一帯一路」プロジェクトと密接に関係している。外部では、中国共産党が詐欺拠点の背後にいる黒幕だと広く認識されている。当局による詐欺拠点への「取締り」は、いずれも「見せかけ」にすぎないという見方が広がっている。
中国共産党が繰り返し取締りを行っても、詐欺拠点は消えるどころか、急速に拡大し続けている。拠点内の犯罪も、臓器の生体摘出、採血・売血、強制売春、強制代理出産にまで及び、さらには乳児の骨髄を採取して「不老薬」を製造するなど、さまざまな非人道的暴行に発展している。
こうした問題を前に、中国では元裁判官や警察官までもが、自らの身分証を手に動画を撮り、ネット上で不当な扱いを告発する時代になった。
本来なら法律や警察に頼るべき問題を、世間に知ってもらうことで解決しようとする。ネット世論が、追い詰められた人々に残された最後の武器になっているのだ。
今回の男性も、多くの人が騒ぎ、通報したことで帰国できたのかもしれない。ネットの声が、一人の男性を救った可能性がある。
それにしても、あれほど大勢から「絶対に行くな!」と警告されながら、なぜ男性は東南アジアへ向かったのか。
中国では就職難が続き、ようやく得た仕事を失いたくないという思いもあったのかもしれない。入社してわずか2か月。まだ試用期間中の身では、会社の誘いを断ることで職を失う不安もあっただろう。危険を感じながらも、会社を信じたい気持ちと、仕事を守りたい思いの間で揺れ、最後は賭けに出たのだろうか。
そして、彼と一緒に東南アジアへ向かったほかの社員たちは、今どこにいるのだろうか。
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