【独自】米国 東南アジア向け農産物輸出を拡大 対中依存の低減へ市場多角化

2026/10/29
更新: 2026/10/29

米国は、中国への過度な依存を減らし、農産物の輸出先を多角化するため、東南アジア市場の開拓を加速させている。エポックタイムズが入手した米農務省の新たな報告書によると、東南アジアは米国産農産物の輸出先として世界4位の市場に浮上した。

ベトナム向け輸出が大幅に伸びたほか、トウモロコシや木の実類、綿花、エタノールなどの取引も拡大している。

米農務省の高官は、エポックタイムズに対し、米国の農業生産者に安定した販路を確保するとともに、中国市場への依存を抑える取り組みの一環だと説明した。

ベトナム向け輸出が急伸 綿花やトウモロコシも拡大

米農務省の報告書によると、東南アジア11か国のうち、米国産農産物の輸入が最も大きく伸びたのはベトナムだった。2025年の輸入額は約47億ドルに達し、2024年比で38%増加した。

米国産綿花の東南アジア向け輸出額も2025年にほぼ倍増し、2026年に入っても最初の8か月間は増加傾向が続いた。報告書によると、輸出の伸びを主導したのはベトナムで、同地域向け取引の約8割を占めた。中国向け販売の減少を補う役割も果たしている。

米国産トウモロコシの東南アジア向け輸出は2025年に過去最高を記録した。木の実類の輸出も前年比で40%超増加した。

エタノールの輸出も拡大している。フィリピンの2025年の米国産エタノール輸入額は過去最高の1億9200万ドルとなった。消費の拡大と国内生産の限界が輸入増加の背景にあり、米農務省によると、フィリピンは米国産エタノールの輸出先として世界6位の市場となった。

米農務省で通商・外国農業担当の次官代行を務めるミシェル・ベッカリング氏は、エポックタイムズの取材に対し、「この地域では、当方にとって非常に大きな市場拡大が起きている」と述べた。

同氏は、東南アジアで市場アクセスを拡大することは「米国の農業生産者の経営の安定性を高める重要な手段だ」と強調。「米国は農産物の主要輸出国だ。生産者には、誠実に取引を行う海外のパートナーとの間で、安定的かつ信頼できる市場が必要だ」と語った。

対中依存を見直し 輸出先の多角化を推進

米国が輸出先の多角化を急ぐ背景には、中国との貿易摩擦がある。中国は米国産大豆の主要な輸出先だが、米中関係が悪化するたびに購入を制限し、交渉上の圧力として利用してきた。

世界最大の大豆輸入国である中国は、2018年と2025年初めに米国との貿易摩擦が激化した際、米国産大豆の購入を停止した。こうした措置は米国の農業生産者に大きな損失をもたらした。

米農務省が2026年6月に公表した報告書によると、中国は2025年、米国産農産物の輸出先上位5か国から外れ、6位に後退した。対中輸出額は前年比66%減の84億ドルに落ち込んだ。

2025年10月、韓国で米中首脳が会談した後、中国は米国産農産物の購入拡大を約束した。それでも米国は、中国向け輸出の回復だけに依存せず、東南アジアをはじめとする他の市場の開拓を進めている。

ベッカリング氏は「すべてを一つのかごに入れるわけにはいかない。賢明な事業計画とは、何よりも多角化を重視するものだ」と指摘した。市場開拓では先行することも重要だとし、「早期に市場に参入し、関係構築を始めなければ、需要の獲得で後れを取ることになる」と述べた。

中国の購入公約を監視 履行の行方は不透明

米ホワイトハウスによると、トランプ大統領と習近平は2026年5月の会談で、中国が2028年まで米国産農産物を年間少なくとも170億ドル相当購入することで合意した。

この合意は、中国が2025年10月に表明した、米国産大豆を年間少なくとも2500万トン購入するとの公約を踏まえたものだ。

米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が2026年6月に公表した分析では、これらの目標が達成されれば、米中間の農産物貿易は2025年以前の水準に回復する見込みと指摘している。

ベッカリング氏によると、米農務省は中国側の公約履行状況を毎週追跡する専門チームを設けている。監視対象には大豆のほか、ソルガムや小麦の購入状況も含む。

同氏は「中国は重要な貿易相手国であり、今後もそうあり続ける。ただし、われわれは変化を求めている」と述べた。

米国が目指すのは「公正さと相互主義に基づく建設的な貿易関係」だとし、「次は中国の出方次第だ」と語った。

米通商交渉担当者は中国に対し、関税のさらなる引き下げに加え、米国製品の輸入を妨げる行政上・規制上の障壁を撤廃するよう求めているという。

非関税障壁も焦点 食肉施設の輸出認可に課題

関税の引き下げに向けた動きがある一方、米国側は非関税障壁の撤廃も重要な課題と位置付けている。

トランプ氏と習近平による9月下旬の首脳会談で成立した合意の一環として、中国は米国産の複数の農産物に対する関税を引き下げることで合意した。対象にはトウモロコシ、小麦、乳製品のほか、魚介類や牛肉などの畜産物が含まれる。

しかし、ベッカリング氏は、関税以外にも米国産品の市場参入を妨げる障壁が残っていると指摘した。同氏は、非関税障壁について「貿易は開かれていると主張しながら、実際には米国産品を締め出すための巧妙な抜け道だ」と批判した。

具体例として挙げたのが、中国向け牛肉輸出をめぐる認可問題だ。

トランプ政権が2025年初めに中国製品への追加関税を課した後、中国は米国の豚肉、牛肉、乳製品、鶏肉の各施設について輸入認可の更新を停止し、認可の期限切れを招いた。

米食肉輸出連合会によると、中国当局は2026年5月、米中首脳会談を前に、米国の牛肉加工施設400か所超について輸入認可を更新。ただし、同連合会によると、なお38施設が輸出停止措置の対象となっている。このうち25施設は認可が更新されたものの、輸出再開には至っていない。

中国では、食品を輸出する企業に対し、国内販売に先立って税関当局への登録を義務付けている。ベッカリング氏は、ほかにも国際的に認められた科学的根拠や安全基準に沿わない追加検査を輸入品に要求することなどが、非関税障壁に当たると説明した。

同氏は「中国は農産物貿易にさまざまな障害を設けてきた。われわれとしては、他国で市場アクセスを拡大する以外に、ほとんど選択肢がなかった」と述べた。

そのうえで、米国産農産物を求める国々への供給を拡大する方針を示し、「われわれは、その農産物を求める国々に供給する。今、その受け皿となっているのが東南アジアだ」と語った。

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。