米司法省 投資詐欺で6人訴追 中国への資金流出と詐欺マニュアルが判明

2026/10/28
更新: 2026/10/28

米司法省は10月27日、アフリカのマダガスカルを拠点に、米国人を狙った暗号資産投資詐欺を行った疑いで、6人を訴追したと発表した。容疑者らは東南アジアや中国とつながりがあり、非代替性トークン(NFT)への投資を装って金銭をだまし取っていたという。

詐欺組織の摘発を指揮する検察官、ジニーン・フェリス・ピロ氏は記者会見で、「中国の国際犯罪組織は、出会い系サイトやSNS、メッセージアプリに詐欺師を潜り込ませ、米国人の銀行口座から預金を根こそぎ奪おうとしている」と警告した。

ピロ氏によると、捜査チームは2025年以降、東南アジアの詐欺組織やその活動拠点の摘発に力を入れ、これまでに約10億ドル相当の暗号資産を凍結した。

現在はアフリカやインド、欧州など、詐欺グループが新たに活動する地域にも捜査範囲を拡大している。ピロ氏は、各国と協力し、こうした国際犯罪組織の拡大を食い止める考えを強調した。

詐欺拠点がカンボジアからマダガスカルに移転か 被害金は中国へ

27日に公表された訴追内容によると、マレーシアや中国とつながりのある詐欺グループが2025年初め、マダガスカルに新たな拠点を開設した。

米司法省は、カンボジアで特殊詐欺拠点への取り締まりが行われた後、この詐欺グループがマダガスカルに拠点を移した可能性が高いとみている。

詐欺グループは、美しい女性を装って出会い系サイトで米国人男性に接触し、NFT投資を装った偽サイトに誘導していた。

被害者が自身の暗号資産ウォレットをサイトに接続すると、詐欺グループはさらに資金を追加するよう促し、本人に気づかれないまま資金を引き出していたという。

捜査では、だまし取った資金が中国国内の暗号資産口座に送金されていたことも判明した。

FBIは、メリーランド州、オレゴン州、ネバダ州、ミネソタ州などで、関連する暗号資産詐欺の被害約74件を確認した。送金は計127件に上り、推定被害額は51万7千USDT(暗号資産)に達した。

被害金の受取口座の一つは中国在住者の名義で登録されており、本人確認には中国の身分証明書が使われていた。また、この口座に関連するアリペイのアカウントを通じて、26万9千USDTが人民元に換金されていた。

このほか、中国本土の利用者がWeChatのアカウントを通じて資金を受け取っていたことも、捜査で明らかになった。

中国語の詐欺マニュアル発見 恋愛感情を利用して投資へ誘導

起訴状によると、チュイ・コックワーは今回のNFT投資詐欺グループの首謀者とされ、通信詐欺の共謀罪で訴追された。

チュイの携帯電話には、マダガスカルの拠点での夜間勤務を定めた雇用契約書が保存されていた。勤務時間は米国の昼間と夜間の時間帯に合わせて設定され、従業員には詐取した金額に応じて報奨金を支払う仕組みだった。

また、従業員の氏名、パスポート情報、給与、勤務時間、懲戒処分の記録、暗号資産ウォレットのアドレスなどを記載した名簿も見つかった。

これらの内部名簿や管理資料は、すべて中国語で作成された。

さらに、携帯電話には被害者との会話方法を詳しく説明した「脚本」、マニュアルも保存されていた。そこには、恋愛感情につけ込み、相手を投資へ誘導する具体的な手口を記していた。

起訴状によると、マニュアルには被害者をだますための一連の手順を示していた。まず架空の人物になりすまして信頼関係を築き、詐欺の標的を選別。その後、相手の感情につけ込み、最終的に投資へと誘導するという内容だった。

最初の段階では、従業員に対し、美しい女性の写真をむやみに送らないよう指示していた。

「写真は武器であり、貴重な資源でもある。決して無駄に使ってはならない。美しい女性が知り合ったばかりの男性に何枚も写真を送るだろうか。もしそうしたら、男性はその女性をどう思うだろうか。写真を求められてすぐに送れば、軽い女性だと思われないだろうか」

次の段階では、接触から2日以内に初めてのビデオ通話を行い、相手の信用を得るよう指示していた。

マニュアルには、次のように記している。

「なぜビデオ通話が重要なのか。それは出会い系サイトには詐欺師が多いからだ。ビデオ通話をすれば、相手はあなたをより信頼し、率直に話すようになる」

さらに、「我々が行っているのは、相手の感情につけ込む詐欺だ。相手が我々に抱く好意を利用して、投資へと誘導する」と明記していた。

「相手が過去に詐欺に遭ったことがあると話しても、慌ててはいけない。何があったのか詳しく聞くこと。その詐欺がNFTに関係していなければ、引き続き会話を続けてもよい」との指示もあった。

被害者の同情を誘うため、別の筋書きも用意していた。

この筋書きでは、夫が白血病と診断されたという作り話をし、治療に付き添った経験や、眠れない夜を過ごし、恐怖に苦しんだ日々を語るよう指示していた。FBIは、こうした話を被害者の同情を引き出すために使っていたとみている。

その後は、苦難を乗り越えて成功を収めた女性を装うよう求めていた。

さらに、2020年のコロナ禍で輸出入事業が打撃を受けたものの、暗号資産による安定した収入のおかげで苦境を乗り切ったという話をするよう指示していた。

マニュアルでは、「卵を一つのかごに盛るな」という言葉を使い、さまざまな資産に分散して投資するよう勧めることも求めていた。

また、ビジネスや暗号資産に精通しているように装い、NFTは戦争やパンデミックなどの外的要因に左右されないと説明することで、被害者の警戒心を弱めようとしていた。

米国、マダガスカルに被告6人の身柄引き渡しを要請

2026年8月、マダガスカル司法省と国家警察の要請を受け、FBIは捜査チームを現地に派遣した。マダガスカル国家警察による13か所の詐欺拠点の摘発を支援し、現地当局は3200台以上の電子機器を押収した。

起訴状によると、マダガスカル当局は13か所の拠点で約400人を拘束した。このうち約40人は中国籍だった。

しかし、米国の捜査員は、現地当局が詐欺組織の幹部とみなしていた中国籍の人物らを聴取できなかった。すでに中国へ送還されるなど、マダガスカル当局の身柄拘束下になかったためだ。

こうした状況を受け、ピロ氏はマダガスカル当局に対し、米国の捜査に協力し、被告6人の身柄を引き渡すよう改めて求めた。

また、米当局は詐欺グループの従業員15人について、重要証人として身柄を確保するための令状を取得した。

この15人は、チュイによって人身売買の被害に遭い、虐待を受けたと訴えている。現在もマダガスカルの刑務所に収容されている。

米シークレットサービスのワシントン支局で捜査を指揮するタラ・マクリース氏は記者会見で、「詐欺拠点を運営するサイバー犯罪者たちは、拠点を移せば我々の追跡から逃れられると思い違いをしている」と述べた。

さらに、「こうした犯罪者の身元は特定できる。犯罪で得た資金は没収でき、犯行に対する責任も追及できる」と強調した。

林燕