モンゴル東部ドルノド県のヌムルグ自然保護区で10月8日に発生した草原火災は、同保護区を含む約53万ヘクタールに被害が及んだ。KDDIの連結子会社モビコムは、通信ネットワークの開通式典への出席や通信品質の確認のため現地を訪問しており、移動中に同社車両の下部から発煙し、周囲に延焼したと説明している。
モンゴル関係当局が詳しい原因を調べる中、日本政府は専門家を派遣し、復興や環境回復を支援する方針を示した。
報道によると、火災の最初の通報は8日午前11時55分(日本時間午後0時55分)だった。出火地点はドルノド県ハルハゴル郡にあるヌムルグ自然保護区の中核区域で、立ち入りが厳しく制限されている地域だったという。
消火活動には、モンゴルの緊急対応要員や消防隊員、国境警備隊員、地元住民ら計606人と機材100台が投入され、60の消火チームが編成された。隣接する中国の内モンゴル自治区でも、国境への延焼を防ぐため消防救援隊など計3400人余りが動員され、国境沿いの監視と防火体制が強化された。
火災の原因や現地訪問の目的を巡っては、現地メディアの報道とモビコム側の説明に違いがある。
新華社は、モビコム幹部らが車両で保護区に進入したことが火災の原因になったと報じていた。現地ニュースサイト「Eguur News」などは、関係者13人が7日に車両5台で保護区に入り、走行中に枯れ草へ引火したと伝えた。狩猟や、絶滅危惧種に指定されているアムールイトウの釣りを計画していたとの噂も取り上げた。
これに対し、KDDIは23日の発表で、訪問は通信インフラ整備に伴うもので、現地当局の許可と管理・監督の下で行われていたと説明した。
同社によると、モビコムは2018年以降、モンゴルの遠隔地や国境地域で通信環境の改善に取り組んできた。国境港湾局などの要請を受け、ハルハゴル国境警備隊拠点への4G通信ネットワーク導入と、スンベル国境検問所までの光ファイバー敷設を完了した。
10月6~8日の訪問は、6日に開催された通信ネットワークの開通式典への出席と、4G通信ネットワークの通信品質などの現地確認が目的だったという。式典にはモンゴルの国会議員らも出席した。
KDDIは、国境警備隊が発行した入域許可に基づいて行動していたと説明。国境警備総局も13日、許可を発行していたことを公表したという。
移動は国境港湾局の全般的な管理・監督の下で行われ、モビコム側の車両2台を当局の車両3台が先頭と最後尾から挟む形で走行していた。モビコム側の乗車者は7人で、日本人は越智康博最高経営責任者(CEO)1人だったとしている。
保護区内は草丈が高く、路面状況も厳しかった。KDDIによると、車両下部に付着した枯れ草からの出火を防ぐため、20~30分ごとに停車して枯れ草を除去しながら低速で移動していた。
しかし、8日の移動中、停車時にモビコム車両の下部から発煙を確認した。当局の指示で消火活動を行ったものの、風と乾燥によって周囲に燃え広がったという。
狩猟や釣りを巡る噂について、KDDIはモビコム社員による火災以外の法令違反行為はないことを確認していると説明した。同社はモンゴル国民や関係者に謝罪し、当局の調査に全面的に協力するとともに、被災した自然環境の状況把握や早期回復、地域の環境保全に取り組む方針を示した。
モンゴル側では、責任の所在や被害補償を追及する動きが出ている。テムーレン法務・内務相は、モビコム職員や国境検問所の管理部門関係者の責任を追及し、国家が受けた損失を補償・賠償させる方針を表明した。
緊急事態を担当するノムトイバヤル副首相は、野生動物への被害を再評価するとともに、モビコム側が業務上、保護区に入る必要があったかを精査する考えを示した。消火活動に伴う税負担については「謝罪だけでは済まない」と指摘した。
一方、モンゴル出身の元横綱朝青龍、ドルゴルスレン・ダグワドルジ氏は、日本側だけに責任を負わせるような言説に疑問を呈した。21日のX投稿で、現地を案内したモンゴルの国会議員らについても言及すべきだと主張した。
23日には報道への圧力に疑問を示す投稿を行った。26日には、モンゴル側と日本側の双方で圧力によって問題を風化、沈静化させようとする動きが強まっていると指摘し、事実関係を精査した上で、近く首相官邸を訪問する意向を明らかにした。
日本政府は27日、森林や自然環境保全分野の国際協力機構(JICA)専門家をモンゴルに派遣した。高市早苗首相は29日、オチラル首相との電話会談で被害への見舞いを伝え、復興支援の方針を示した。
今後、専門家の報告を踏まえ、モンゴル政府と協議しながら、火災からの復興や環境回復に向けた人材育成、必要な機材の供与を含む総合的な協力パッケージを実施する方針である。
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