「中国とのケンカを呼びかけているのではない。世界中で非難している人道犯罪を非難して」人権組織SMGが3周年、日本の人道問題への取り組みを後押し

2021/03/31
更新: 2021/03/31

3月30日、参議院議員会館で、中国臓器収奪問題の停止に向けて活動する人権組織「SMGネットワーク」設立3周年記念集会が開かれた。集会には山田宏参議院議員や長尾敬衆議院議員をはじめとする国会議員のほか、地方議員も参加。中国の人権問題の解決に向け結束を強めた。

集会では、中国人道犯罪を非難する国会決議が一部政党の拒否で成立しない見通しとなることが明らかになった。出席議員によると、菅首相の4月訪米前の決議は困難になったという。この話を受けて、出席したウイグル協会副会長アフメット氏は、「私たちはウイグルのために中国とケンカしてほしい、と呼びかけているのではない。世界中で非難されている非人道的な犯罪だ」と国際的な人権問題への認識の一致を呼びかけた。

SMGネットワークの加瀬英明代表は冒頭のあいさつで、中国共産党政権は臓器移植を国の収益事業として行っていることに言及。諸外国では臓器移植のために渡航することを禁じているが、日本ではなぜか禁止されていないと疑問を投げかけた。

そして、中国共産党政権の拡張政策に触れ、ウイグルや香港で現在起きている人権侵害は「明日台湾で起こることであり、明後日には日本の問題になる」「今日ウイグル自治区で起こっていることは、明日の日本で起こりうること」と考えなければならないと述べた。

山田宏議員「中国共産党政権が倒れないと世界は平和にならない」

登壇した山田参議院議員は、ウイグル、南モンゴル、チベット、香港など中国共産党による人権弾圧について並べ、「このおぞましい全体主義政党が倒れないと、世界が平和にならない」と語った。「コロナ禍のなかで、全世界が中国共産党政権とはなにかをはっきりわかった。今こそ臓器の問題を超党派で手を携えて、しっかりメジャーな問題にしていきたい」と訴えた。

長年、中国の人権問題に声を発してきた山田議員は2年前、参議院外交防衛委員会で臓器収奪問題を取り上げた。外務省の問題認識は低く、提出した資料の調査を促すほどだったという。

また、当時の安倍首相が訪中時、習近平中国主席に対してウイグル人権問題を直接提起したのは、外務省のアジェンダにはなく、安倍氏の判断だったことを明らかにした。

山田議員は、国会では超党派で中国共産党の非人道的な人権弾圧について国会決議をまとめる動きであると語った。大半の政党が賛同を示すなか、「某党は抵抗している」と述べた。

大紀元が確認した情報では、国会決議に反対する政党は公明党だという。30日に開かれた自民党と公明党幹部の連立与党定期会談で、「国会決議を総理訪米前という急なスケジュールで進めるのは避けたい」と公明党が要望。自民党側がそれを受け入れたという。

原田義昭議員は、中国臓器狩り問題については「満身創痍で取り組まなければ問題だ」と強調。米国や欧州は同問題に向き合っているとして、日本は遅れないよう、国際強調のもとに中国人権問題に対応するべきだと語った。

笠浩史議員は、政府のみならず、国会議員も中国人権侵害問題は許されないと国際的なメッセージを発出するべきだと述べ、引き続き、超党派で国会の決議を出す努力を続けると述べた。

渡航移植、透明性の確保を 浜松医大教授

集会では、浜松医科大学医学部で医療法学教授の大磯義一郎氏が基調講演を行なった。WHOの見解を引用し、移植商業主義は人類に対する犯罪と説明。日本は、残念ながら違法性の高い渡航移植に関与しているとして、渡航移植の透明性ある登録制度、海外渡航のあっせんの定義明確化などの必要性を訴えた。

同大学病院は2015年、海外渡航で腎臓移植を行なった患者を正規ルートを経て手術を行なったものではないとして診療を断った。患者側と渡航をあっせんしたNPO法人は病院を提訴した。2020年5月、最高裁判決では「国際移植学会会員として、臓器取引と移植ツーリズムを禁止すべきとしたイスタンブール宣言を遵守」し、移植ビジネスに加担・関与しない方針から、診療拒否は正当だったと判断。患者側の訴えを退けた。

大磯教授は大紀元の取材に対して、「重病患者である渡航移植経験者を罰するのは人道的に難しい。しかし、犯罪が疑われる渡航移植に関わることは、人間としての質が問われる問題だ」と意見を述べた。また、ほとんど医療界ではタブーであった渡航移植問題にスポットをあて、同問題の周知を行うSMGネットワークは「マイルストーン的な存在」だと語り、活動に支持を示した。

集会では、中国臓器移植問題を10年以上にわたり調査する米国のNGO「法輪功迫害追跡国際組織(WOIPFG)」の映像資料を紹介。実際に、中国の病院でのおとり調査のなかで、中国の移植病院医師は「(ドナーは)30代、20代でもできる」などと、ドナーを選べれる状況であるとの生々しい実態を暴露した。

SMGネットワーク事務局によれば、3周年に寄せて、国際人権弁護士デービッド・マタス氏、新疆ウイグル自治区出身の元医師エンバー(アニワル)トフティ氏、医師による倫理組織「強制臓器摘出に反対する医師の会(DAFOH)」代表トルステン・トレイ博士、米ニューヨークの弁護士・朱婉琪氏からのビデオレターが送られた。

行方不明にされているウイグル人 臓器収奪の疑い

SMGネットワーク全国地方議員の会代表世話人を務める丸山治章・逗子市議員は、これまでの同会活動を報告。同会に加わる地方議員は116人、中国臓器移植問題を背景にした意見書は87議会で可決し、政府に提出された。また法務省、外務省、厚生労働省に対して、臓器狩りに関与する医師のリストを提出したことを報告。関与者の入国停止措置や問題認知などを各省に働きかけた。

NPO法人日本ウイグル協会も出席。レテプ・アフメット副会長は、中国臓器移植問題について「外部による中国(医療)ビジネスの関わりで成立している。この市場に入れば共犯になってしまう」「他人を犠牲にしても自分の命は救われたい、という考えが消えなければ、この問題はなくならないだろう」と述べた。

また、日本の国会でも中国人権問題は無視できないという考えが醸成されてきているとし、中国人権問題を非難する国会決議の可決に期待を示した。一部政党がこの決議を拒んでいるとの話を受けて、アフメット氏は、「私たちはウイグルのために中国とケンカしてほしい、と呼びかけているのでは決してない。世界中で非難されている非人道的な犯罪」の問題を取り上げていると強調。「自分たちの利益が取れれば、相手がどんな酷いことをしても構わない。果たしてそれでいいのか。その党の関係者を含めて胸に手を当てて聞いてみてほしい」と語った。

アフメット氏は、ウイグルに関する臓器狩りの疑わしい事案について並べた。ウイグル人は新疆ウイグル自治区の収容施設から中国各地に移送されているが、大型の中国人民解放軍運営の病院がある地域に移ったのち、行方が分からない人が相次いでいるという。イスラム教の中東地域から来る富裕層にとって、「ハラール臓器」として、同じ信徒の臓器であるとして提供されている。そして、ウイグル人の子どもたちが行方不明になっていることなどを挙げた。

アフメット氏は、2021年3月に新疆のグルジャ県で遺体で見つかった消息不明だった13歳の男児は、臓器がすべて抜き取られていたというラジオ・フリー・アジアの報道内容を紹介した。報道によれば、この事件をSNSで紹介し、子どもの保護について注意喚起をした人々も逮捕されているという。「移植臓器の摘出は2、3人の個人でできるものではない。これらの状況から、中国では組織的な臓器収奪が考えられる」と付け加えた。

野村旗守氏「本当は日本が率先しなければならない」

 

SMGネットワークの事務局長を務めるジャーナリストの野村旗守氏は大紀元の取材に対し、世論が大きく変わってきたと話した。「臓器狩りの問題も、法輪功の問題も、マスコミが取り上げにくいという共通点がある。臓器狩りは中国にとって一番踏み込まれたくないところだ」「香港、チベット、ウイグル、モンゴルについて世界中が反応し始めた。状況はだいぶ変わってきた」

そして、「(法輪功迫害と臓器狩りは)一番大きく、一番凶悪な問題だ。順番としては一番最後になってしまった。世界中の人たち、特に日本の人たちに知ってほしい」と述べ、引き続き活動していくとした。

マグニツキー法の成立を求める動きについて、野村氏は「世界が動いてから日本が動くという、アクションの遅さ、情けなさがある」「先進国でマグニツキー法を導入していないのは日本だけ。導入することによって日本も人権後進国と呼ばれないようにしたい。本当は日本が先導してやってほしい」と語った。

(王文亮、佐渡道世)

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