韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は、2026年の年頭から中国、日本と相次いで首脳会談を行う「実利外交」を本格化させている。1月4日からの訪中では、韓国の主要財閥を伴い経済関係の修復を図る一方で、日米韓の結束を揺さぶろうとする中国側の牽制にも直面した。こうした中、1月13日からの訪日を前に、9日には日韓の政府・与党間で活発な事前接触が行われ、未来志向の関係構築に向けた調整が急ピッチで進んでいる。本稿では、地政学的な緊張の中で揺れ動く東アジア外交の現在地と、今後の動向を展望する。
訪中の背景と中国の思惑:進む「離間工作」
今回の訪中において、中共党首・習近平は「歴史の正しい側」に立つべきだと述べ、第二次世界大戦時における日本の歴史認識や過去の行動に対する、中韓共通のいわゆる「日本軍国主義」への反対姿勢を強調した。これは、日米韓の防衛協調から韓国を離脱させようとする「離間工作」の一環であると専門家は分析している。
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経済的レバレッジと技術流出の懸念
中国は2016年の韓国のTHAADミサイル配備以降、K-POPなどの「韓流」制限を継続しており、これを韓国をコントロールするための道具として利用している。また、今回の経済協力推進の裏で、中国が韓国の著名企業から人材を引き抜き、技術を吸収しようとするリスクが指摘されている。実際に、2024年の韓国からの技術流出のうち、74%が中国向けであった。
北朝鮮問題における限界
李氏は北朝鮮の核抑制への協力を中国に求めたが、北朝鮮がロシアへ急接近し、ミサイル技術等を得ている現状では、中国の北朝鮮核計画に対する影響力は減退しているとの見方がある。中国側も、北朝鮮の崩壊を避けることを優先しており、核放棄に向けた強い圧力をかける可能性は低い。
訪日前、1月9日に見られた日韓間の活発な動き
北京が日米韓の切り崩しを図る中、李大統領は1月13日から14日にかけて日本を訪問する予定だ。この訪日を前に、1月9日には日韓間で活発な外交接触が行われた。
高市総理と韓日議連の面会
高市早苗総理は、朱豪英(チュ・ホヨン)会長率いる韓日議員連盟一行の表敬を受けた。高市総理は「現下の戦略環境の下、日韓関係の重要性は増している」と述べ、来週の首脳会談への期待を表明した。
自民党幹部の動き
鈴木俊一幹事長は、李赫(イ・ヒョク)駐日大使と会談し、李大統領の実利重視の外交により「日韓関係が近年になく良い関係になっている」と評価した。また、小林鷹之政務調査会長ら党幹部が韓国を訪問し、金民錫(キム・ミンソク)国務総理ら政府要人と、北朝鮮対応や経済安全保障について意見交換を行った。
奈良での首脳会談
今回の訪日で、李大統領は奈良県を訪問する。これは昨年10月のAPECの際に大統領自身が希望したものであり、高市総理の地元でシャトル外交の一環として首脳会談や夕食会が行われる予定だ。
李大統領は、中国とのバランスを取りつつも「米韓同盟を軽視しない」というサインを送り続けている。高市政権下でも、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、日韓、そして日韓米の連携は一層強化される見通しである。
韓国は中国との経済関係修復を図る一方で、日本との間でも未来志向の協力関係を深める必要がある。しかし、対中依存度を高めることは、将来的に中国から経済的なレバレッジ(交渉材料)として利用されるリスクを孕んでいる。
中国による技術窃取や人材引き抜きの攻勢が強まる中、日韓両国は経済安全保障の観点から、サプライチェーンの強化や重要技術の保護において、より緊密な協力体制を構築することが求められるだろう。
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