張又俠と劉振立の拘束を巡り、中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」は、両者が軍の最高指導体制に重大な打撃を与え、中央軍事委員会の結束を揺るがしたとして、異例の強い調子で非難した。
分析では、こうした位置付けは事実上、政変に等しく、汚職問題をはるかに上回る重さを持つとされる。外部からは、張又俠事件は習近平党主と軍上層部の深層的な対立を映し出しており、中国共産党(中共)政権の存続そのものに関わる危機を示しているとの見方が出ている。
中央軍事委員会副主席の張又俠と、中央軍事委員会聯合参謀部参謀長の劉振立は1月24日に拘束された。中共系の軍機関紙は直ちに社説を掲載し、五つの「重大」を明示した。
この中には「軍事委員会主席責任制を重大に踏みにじり破壊した」「中国共産党による軍への絶対的指導を重大に助長・影響させた」との規定が含まれている。
複数の情報筋によると、張又俠と劉振立は「中央軍事委員会を分裂させた」疑いを指摘されている。この『中央指導部を分裂させた』との告発は、中国共産党内部でもきわめて異例で、しかも最高レベルの政治的規定とされ、通常は最高権力構造に実質的脅威を与える人物にのみ適用されるという。
台湾・南華大学国際事務・企業学系の孫国祥教授は、「『中央軍事委員会の分裂』という規定は、中国共産党の最高レベルの政治的告発を意味し、事実上、軍事クーデター、さらには反乱に等しい。習近平国家主席の軍事委員会主席責任制に直接挑戦するもので、2018年に党規約で明確化された体制に反し、張又俠と劉振立が習近平の最高指揮権を空洞化し、党の絶対的指導を破壊しようとしたことを示す。一般的な汚職よりもはるかに重大で、政権の基盤を危うくするレベルに属し、公開処刑や終身刑すら予告するものだ」と述べた。
大紀元時報のコラムニスト、王赫は「今回の粛清はすでに政治的な次元に引き上げられており、極めて厳格で強硬なものだ。ほとんど『路線闘争』と呼んでも差し支えない」と指摘した。
北京の消息筋によると、張又俠と劉振立は現在、それぞれ北京市昌平区の厳重警備下にある拘禁施設に収容され、外部との接触を完全に遮断されている。中国人民解放軍の各戦区および各軍種内部では、「中央軍事委員会」関連の文書精神を集中的に伝達しており、全将兵に対し、政治的立場と行動の両面で「中央軍事委員会と高度に一致する」ことを求め、いかなる逸脱も許さない姿勢を示している。
王赫は「張又俠と劉振立の失脚は、軍にとっても、政権全体にとっても非常に大きな衝撃だ。この局面で習近平は説明を示し、情勢を掌握し、軍心を安定させなければならない。他者に軽々しく議論させないためでもある。これは中国共産党が長年続けてきたやり方であり、極権的で専制的な体制の下、正統性を欠く政権が、極端な権力と高圧によってのみ維持されている」と述べた。
分析では、「先に政治的規定を行い、その後に処理する」という手法は中共の典型的なやり方であり、迅速に政治的結論を下し、服従の境界線を引くことで、軍内部での議論の余地を圧縮するとされる。張又俠がなぜ排除されたのかについては様々な憶測が飛び交っているが、複数の軍関係者の証言によれば、張又俠と習近平の間に激しい対立があったことは確かで、その主要な争点の一つが台湾侵攻の是非だったという。
王赫は「習近平が三期目、四期目、さらには終身にわたる政権維持を目指すのであれば、台湾を中国の支配下に置くことが、最大の政治的実績になる。しかし張又俠は軍の最高指導者として、軍事の現実、中米・中台・アジア太平洋地域における軍事力の比較を熟知しており、安易な冒険はできないと考えていた。そのため、台湾作戦という中共の将来の命運を左右する重大問題をめぐり、政策レベルで両者は対立した。さらに、双方がそれぞれの派閥人事を粛清したことで、政策対立と派閥粛清が絡み合った」と説明した。
「解放軍報」の社説では、軍の反腐敗運動を初めて「攻略戦・持久戦・総体戦」と並列して位置付けており、今回の軍内部の反腐敗・粛清が、極めて高いレベルで、長期にわたり、広範囲に及ぶことを示唆していると外部では受け止められている。
孫国祥は、「しかし社説のトーンは対症療法にすぎず、腐敗の根源、すなわち中国共産党自身の権力の極度な集中を除去できない。その結果、恐怖と派閥対立をかえって激化させ、威嚇効果は限定的で、軍内部ではすでに誰もが身の危険を感じている」と述べた。
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