高市早苗首相は2026年3月9日、首相官邸で国際通貨基金(IMF)のクリスタリーナ・ゲオルギエバ専務理事と約20分間にわたり会談した。両氏は2025年11月に南アフリカで開かれたG20首脳会合以来の再会となった。同サミットの際、専務理事は高市政権の総合経済対策について「財政上のリスクも手当てされており安心している」と評価していた。
高市首相自身のXへの投稿によると、今回の会談では現下の日本の経済政策のほか、中東情勢がエネルギー需給や金融市場、物価に与える影響など、世界経済について幅広く意見が交わされた。首相は「世界経済・金融の安定に向けて、日本は今後もIMFを支えていく」と伝えたうえで、IMFの専門的知見を活かした客観的な分析・発信への期待を示した。
さらに首相は、日本国内で検討している特例公債に頼らない2年限定の「消費税減税(飲食料品のみ対象)」について、給付付き税額控除導入までのつなぎとして実施する予定であることを説明し、日本の経済財政運営について一定の評価を得たと明かした。首相は今後も「責任ある積極財政」に基づき、政府債務残高対GDP比を安定的に引き下げて「財政の持続可能性」を実現し、市場からの信認を確保していく姿勢を強調している。ゲオルギエバ専務理事は日本政府の経済政策に対する支持を表明し、面会後には記者団に対して「建設的な議論だった」と振り返った。
「想定外への備え」提唱
同日、ゲオルギエバ専務理事は日本の財務省が主催したシンポジウム「流動化する国際経済・通貨秩序と世界経済の未来」に登壇し、「変容する世界経済の下でのIMFの役割と日本への期待」と題した基調講演を行った。専務理事は、世界経済がテクノロジーや人口動態、地政学、気候変動といった激しい変化に直面しており、中東での新たな紛争によるエネルギー問題などのショックが続いていると指摘した。その上で、各国の政策立案者に対して「想定外の事態を想定し、それに備える」よう呼びかけた。
流動的な世界を乗り越え繁栄していくための具体的な指針として、専務理事は以下の3点を強調した。
- 強固な制度と政策の枠組みへの投資:AIの活用や人口動態の変化によって労働市場が根本から再構築される中、成長を支えるための制度的基盤を整えること。
- 財政バッファー(余力)の確保と補充:経済的ショックを吸収するために政策余地を維持し、平時にそれを補充しておくこと。
- 機敏さ(アジリティ)の重視:アジアにおける地域統合の推進など、課題だけでなく機会を見出してデータに基づいた柔軟な政策対応を行うこと。
また、スピーチの中で専務理事は、自動化やAIによる生産性向上の最前線に立つ日本の姿勢や、日本銀行による機敏な政策判断などの「政策の洗練さ」を称賛した。最後に、IMFにおける第2位の出資国として、能力開発支援や低所得国への融資など、多岐にわたる日本の貢献に対して深い感謝の意を示した。
日銀副総裁とも会談
なお、ゲオルギエバ専務理事は同日、東京で日本銀行の氷見野副総裁とも会談を行っている。専務理事自身のXへの投稿によると、両氏は日本経済の強靱性(レジリエンス)について議論を交わした。さらに同会談のなかで、専務理事から日銀による適切な金融政策の運営に対して、直接評価の意を伝えたとしている。
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