高市早苗首相は16日の参院予算委員会で、中東情勢の緊迫化を受けたホルムズ海峡の安全確保を巡り、「護衛艦の派遣はまだ一切決めていない」と述べ、自衛隊の派遣について現時点で具体的な決定はないとの認識を示した。政府は情報収集と情勢分析を進めている段階であり、各国の動向を見極めながら対応を検討する姿勢である。
首相はまた、ドナルド・トランプ米大統領が同海峡の航路安全確保を巡り関係国の協力に言及していることについて、現時点で具体的な対応を決めた事実はないと説明した。トランプ氏のSNSでの発信から一夜明けた15日、首相は公邸に秘書官を呼び、中東情勢について約2時間にわたり情報収集と協議を行った。
小泉進次郎防衛相も同日の参院予算委員会で「現時点で自衛隊の派遣は考えていない」と答弁し、直ちに部隊を派遣する考えはないとの認識を示した。政府内では情勢の推移を踏まえながら、法的枠組みや国際情勢を総合的に検討する必要があるとの見方が強い。
世界の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡では、イラン情勢を巡る軍事的緊張が続いており、海上交通路の安全確保が国際社会の大きな課題となっている。
こうした中、トランプ米大統領は3月15日、ホルムズ海峡の安全確保について、海峡を利用する国々が協力して責任を分担すべきだとの考えを示した。トランプ氏は、海峡の恩恵を受けている国々が航路の安全確保に関与するのは自然なことだと述べ、主要なエネルギー輸入国の関与の必要性に言及した。
また、トランプ氏は中国共産党の習近平との首脳会談を延期する可能性にも触れ、中国にも海峡の航行安全維持への協力を期待していると述べている。主要な石油輸入国である中国を含め、航路の安定確保を巡る国際的な役割分担を模索する動きとみられる。
日本政府内では、仮に自衛隊を派遣する場合の法的枠組みについても検討が始まっている。ただし、その実現には複数の課題がある。
集団的自衛権の行使に関わる「存立危機事態」の適用については、厳格な要件があり、政府内では現時点で可能性は低いとの見方が多い。安倍晋三元首相は過去にホルムズ海峡での機雷掃海を例示したが、実際の適用には日本の存立に関わる明確な危機が必要とされる。
また「重要影響事態」や「国際平和共同対処事態」などの枠組みも検討対象となり得るが、日本への直接的な影響の認定や国連決議の有無などが判断の前提となる。防衛省設置法に基づく調査・研究目的の派遣についても、戦闘が続く状況では政治的判断が難しいとの指摘がある。
さらに、日本政府は米国によるイラン攻撃の法的評価について明確な立場を示していない。政府は過去の国会答弁で「違法な先制攻撃を行った国を支援することはない」と説明しており、高市首相も3月9日の衆院予算委員会でこの考えに変わりはないと述べている。このため、米国の行動の法的位置づけによっては、日本の関与の範囲にも影響が及ぶ可能性がある。
高市首相は18日から就任後初めて米国を訪問する予定で、会談では中東情勢や海上交通路の安全確保を巡る協力のあり方が議題となる
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