経団連 2040年を見据えた国家戦略「科学技術立国戦略」 政府へ提言

2026/05/15
更新: 2026/05/15

一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)は2026年5月、2040年を見据えた中長期的な国家戦略として「科学技術立国戦略」の提言書を取りまとめた。本提言は、人口減少や少子高齢化、安全保障上の脅威といった構造的課題を克服し、持続的な成長を実現するための道筋として、研究開発投資を起点とした「科学技術立国」を掲げている。

■ 戦略を支える3つの基本的考え方

本戦略の根底には、以下の3つの基本的考え方がある。 第一に、「投資牽引型」へのマインドセットの転換である。従来のコストカット型から脱却し、成長の源泉である研究開発投資や設備投資、人的投資を国全体で積極的に行う体制への転換を目指す。 第二に、「科学技術」「産業・社会」「思想・哲学」の総合設計である。科学技術への投資だけでなく、成果を価値化する社会構造の変革や、AIなどの先端技術がもたらす人間への根源的な問いに向き合うための「思想・哲学」を総合的にデザインする必要性を説いている。 第三に、「科学研究」と「技術開発」の違いを産学官に浸透させることである。不確実性の高い科学研究と、目的志向型の技術開発とでマネジメント手法を変え、質的転換を図りつつ投資を拡大すべきだとしている。

提言を受け取る高市総理(出典:首相官邸ウェブサイト)

■ 日本政府への具体的な提言内容

経団連は、科学技術立国を実現するため、日本政府に対して多岐にわたる抜本的な改革を提言している。

1. 研究開発投資の世界トップ水準への拡大と「科学技術省」設立

官民合わせた研究開発投資を、世界トップ水準である対GDP比5%へと引き上げ、2040年には年間投資50兆円を目指す目標を掲げた。政府に対しては、呼び水として科研費の早期倍増など自由探索型の基礎研究への長期的投資を求めている。さらに、基礎研究から社会実装までを一体的・機動的に推進するため、英国の省庁などをモデルとした「科学技術省」の設立を検討するよう提言した。

2. 人材育成と大学改革

理系人材の不足を見据え、高等教育における理系学部への転換促進や、産学官連携による高度な「ナショナルトレーニングセンター(仮称)」の整備を求めた。大学改革においては、特定の大学を産業競争力強化に貢献する「研究大学」として指定する制度の構築や、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の成功要因(グローバル基準の人事制度やPI制度など)を国内他大学へ横展開することを促している。

3. ルール見直しと社会実装を担う法人の強化

国立研究開発法人(国研)の機能強化とともに、社会実装を担う中核的機関である新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)について、フュージョンエネルギーや次世代革新炉といった原子力技術の研究開発も支援できるよう、NEDO法の早期改正を提言した。また、グローバル競争下で日本企業が戦えるよう、技術や人材を機動的に結集するための独占禁止法の運用見直しも求めている。

4. 宇宙・防衛技術の社会実装と市場創出

安全保障と経済成長を両立させるため、防衛分野と民生分野の技術を循環させる「デュアルユース技術開発」の環境整備(機微情報取り扱い基準の明確化やセキュアな研究環境の構築など)を政府に要望した。宇宙分野については、研究開発中心から将来需要創出・社会実装へと政策の舵を切り、民間投資を呼び込むために宇宙航空研究開発機構(JAXA)の公社化も選択肢として検討すべきと指摘している。

提言を受け取る高市総理(出典:首相官邸ウェブサイト)

■ 政府の対応と今後の展望

13日、経団連から本提言書を受け取った高市総理は、経団連が目指す「投資牽引型経済」への転換に深い賛同を示した。政府としては、2026年度からの「第7期科学技術・イノベーション基本計画」において官民180兆円の研究開発投資目標を設定し、研究開発税制における「戦略技術領域型」の追加等で既に抜本強化を行っていると応じた。また、高い研究力を有する大学の認定制度創設や、産業技術総合研究所(産総研)の機能拡充などを成長戦略に位置づけ、官民連携で取り組む意向を表明している。

経団連は本提言を足がかりに、経済界自らが果敢に投資を行うとともに、政府・学界との連携を深め、世界から信頼される「価値多層社会」と「科学技術立国」の構築に向けた改革を推進していく構えである。

エポックタイムズの速報記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。