【名家コラム】国連はなぜ信頼を失ったのか UNRWAスキャンダルとガザで露呈した構造的問題

暴虐行為の防止を使命とする機関は、最終的に「自らは何を守っているのか」という問いに直面する。国連(UN)にとって、今年の投票動向、内部調査、そして意思決定の在り方は、もはや中立性という外観を支えるものではなくなっている。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA、1949年設立)に関して、ガザにある学校がハマスのトンネルや3つの対戦車拠点の上に位置していること、さらにその校長がこれらの組織に関与していたことが明らかになっている。この事実は国連ではなく、アメリカの調査官によって発見された。

こうした構図は過去にも繰り返されてきた。「石油・食料交換プログラム(オイル・フォー・フード)」スキャンダルでは、中堅の責任者がアメリカで起訴される一方、上層部は地位を維持した。国連の不祥事が発覚するたびに責任を負うのは現場職員であり、政策決定層にまで及ぶことはほとんどない。

イスラエル差別とされる国連決議の実態

外部から見れば、単純な数値比較だけでも、いわゆる「中立性」や「バランス」の虚構は明らかである。2025年、国連総会(UNGA)はイスラエルに対する決議を15件採択したのに対し、その他すべての加盟国に対する決議は合計11件にとどまった。対象には北朝鮮、イラン、ミャンマー、ロシア、アメリカなどが含まれる。

2015~24年にかけて、イスラエルに対する決議は計173件に達した一方、その他すべての加盟国を合わせても80件に過ぎない。2006年以降、国連人権理事会(HRC)でも同様の傾向が見られ、イスラエルに対する決議は112件、シリアは45件にとどまるが、シリア内戦ではすでに数十万人が死亡している。

2025年11月20日、国連総会第4委員会はイスラエルを非難する6件の決議を採択した一方、スーダン情勢については決議を行わなかった。スーダンでは紛争により15万人以上が死亡し、1200万人が避難を余儀なくされている。国連総会で多数を形成するブロックがこうした優先順位を決定しており、人道危機の規模とは必ずしも一致していない。

UNRWAスキャンダルで何が問題になったのか

最も象徴的な事例がUNRWAである。2023年10月7日以降、同機関の内部調査は最大9人の職員がハマスの攻撃に関与した可能性を示したが、その後、アメリカの調査により問題の規模ははるかに大きいことが明らかになった。

アメリカ国際開発庁(USAID)によれば、「USAID監察総監室は、法的に独立した執行・監督機関として、UNRWAの現職または元職員101人の氏名を資格停止または取消の審査のため提出した。これらの人物は、2023年10月7日のイスラエルへのテロ攻撃への関与、あるいはハマスの軍事部門カッサム旅団との関係が疑われている。対象は学校長、教師、警備員、サービス職員、カウンセラー、医療スタッフが含まれる。

その具体例として、以下のような事案を報告している。

・カッサム旅団アイン・ガルート第5大隊の副中隊長を務める副校長  
・ハーン・ユニス旅団第2大隊の班長を務める副校長  
・爆発装置の設置・追跡を担うハマス情報部門の班長を兼ねる教師  
・中央旅団アル・クッズ第2大隊の小隊長を務める教師  
・カッサム旅団の情報部門と関係を持つ数学・コンピューター教師  
・狙撃技能を有する教師  
・ハマス戦闘員として対戦車ミサイルの運搬任務に関与した教師  
・ヌセイラト大隊の小隊長で通信任務を担った副校長  
・軍事製造部門の化学部門に所属する学校長(当該施設下にはトンネル縦坑が存在)

報告対象の一人であるハフェズ・ムーサ・ムハンマド・ムーサは、2023年10月7日の攻撃当日、UNRWAの学校を管理しながら行動の調整に関与していた。彼はテロ活動を理由に、アメリカ政府から国連関連活動への関与を禁じられた最初の事例となった。

圧力が高まる中、UNRWAは問題が公表される数週間前に、武装組織と関係を持つ職員70人を解雇した。しかしこの措置は内部調査の結果ではなく、外部から証拠を提示した後に取られたものである。監視団体によれば、浸透の規模はさらに大きく、最大で1500人近い職員が関係しているとされている。

7月1日、UNRWAは重大な転換点を迎えた。ガザ戦後の統治を担う「平和委員会(Board of Peace)」は、UNRWAについて「新たなガザにおいて存在すべきではない」とし、同機関への依存は復興の障害であると指摘した。

アメリカの国連大使ジェフ・バートス氏は、UNRWA年次拠出会議において、資金提供国は長年にわたり改革ではなく扇動と停滞を選択してきたと批判し、その責任は歴史に記録されると警告した。これに対し、パレスチナ自治政府およびアラブ連盟は発言を退け、UNRWAの役割は一方的に否定できるものではないと主張した。

この対立の帰結がどうであれ、長年不可欠としてきた機関が、現地の統治主体によって見直されつつある現実は重い。

過去の不祥事に見る国連の組織的課題

同様の問題は国連の歴史において繰り返されてきた。「オイル・フォー・フード」スキャンダルでは、サダム・フセイン政権が2千社以上の企業の関与のもと、1996年以降約18億ドル(約2700億円)規模の不正資金を得ていた。調査では、国連の監督不全と安全保障理事会の機能不全が要因と結論づけられたが、多くの高官は責任を問われなかった。

国連平和維持活動でも同様である。ある調達作業部会は6億3千万ドル(約945億円)以上の不正契約と24件の腐敗事例を確認したが、任務は2008年に打ち切られた。性的搾取問題についても、12年間で約2千件の告発があったにもかかわらず、実際に服役した者はごく一部にとどまる。

歴史的事例はさらに深刻である。1994年のルワンダでは、80万人以上が虐殺される中、増援要請を拒否した。翌年のスレブレニツァでは、安全地帯に指定していたにもかかわらず支援が行われず、約8千人が殺害された。ハイチでは平和維持部隊がコレラ流行の発生源となり、約1万人が死亡した後にようやく責任を認めた。

これらに共通するのは、組織的な慣性である。問題は調査され、下層の職員が処分される一方、政策決定層はそのまま残る。

2023年10月7日の攻撃後、国連事務総長グテーレスは、事態は「孤立したものではない」と述べた。その後も同様の表現が繰り返され、組織の責任は明確に示されなかった。

国連は本来、暴虐を抑止するために設立した。しかし現実には、加害者が内部または加盟国の中枢にいる場合、その代償を内部で処理してしまう構造が生じている。

現在、ガザの暫定統治を担う主体でさえ、国連の中核機関の存在を疑問視している。この結論は外部ではなく、現地の統治構造から導かれたものである。事実は明白である。問題は、世界がこの構造をいつまで容認し続けるのかという点にある。

本稿は、米国のシンクタンク、ゲートストーン研究所のウェブサイトに掲載された内容を基にしたものである。

Pierre Rehovは、パリ第2大学アサス校(Paris-Assas)で法学の学位を取得したフランス人ジャーナリスト、小説家、ドキュメンタリー監督である。『Beyond Red Lines』『The Third Testament』『Red Eden』など6作の小説を著している。2023年10月7日のハマス虐殺の影響を扱った最新作『7 octobre – La riposte』はフランスでベストセラーとなった。

映画監督としては17本のドキュメンタリーを制作・監督し、その多くは中東の戦闘地域で命の危険を冒しての撮影となった。テロリズム、メディアの偏向、キリスト教徒への迫害に焦点を当てている。最新作『Pogrom(s)』では、イスラム文明に根深く存在する反ユダヤ主義が10月7日の虐殺の主因であると強調している。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。