中国・ネパール国境の土石流 専門家「大規模開発が被害拡大の一因」

2026/08/29
更新: 2026/08/29

8月26日、中国・ネパール国境で大規模な土石流が発生し、チベット自治区の吉隆国境検問所がわずか数分でのみ込まれ、甚大な被害が出た。当局は、土砂で川がせき止められてできた天然ダムが決壊し、二次災害を引き起こす恐れがあると警戒している。専門家は、今回の災害について、人為的な要因が被害を拡大させたと指摘している。

空撮映像には、異変に気付いた吉隆国境検問所の人々が必死に逃げる様子が映っている。その直後、検問所の建物は土石流にのみ込まれた。災害後、谷一帯は灰褐色の泥とがれきに覆われた。

8月28日時点で、ネパールでは少なくとも579人が死亡した。中国とネパールの被災地では、合わせて2400人以上がなお行方不明となっている。

米地質調査所(USGS)によると、災害は氷河の崩壊によって引き起こされた。崩壊による振動は、マグニチュード5.2の地震に相当する規模だった。複数の場所で地滑りも発生した。土砂などによって形成された天然ダムが決壊する恐れがあり、下流ではさらなる被害が懸念されている。

専門家は、人為的な要因も被害を拡大させたと指摘する。吉隆国境検問所が川の流路上に建設されており、本来の河がが流れるところを開発したことが被害を拡大させたと指摘する。

台湾国際法学会副事務総長の林廷輝氏は「吉隆の施設は、川の流路にあたる場所に建てられている。自然条件を無視した建設だ」と述べた。

河南地質局の専門家、楊坤氏は、建設費を抑えるために国境検問所が川の流路上に造られたと指摘した。

「この場所は比較的平坦だった。もし山の上に建設していれば、国境検問所を完成させるために、当初の予算の数倍もの費用が必要になっただろう」

林廷輝氏はさらに、中国共産党(中共)がダムや道路、トンネルの建設に伴って山を掘削し、地域の生態系を壊し、地盤を不安定にしてきたと指摘する。加えて氷河の融解が進み、融解水が不安定になった地盤に浸透し、そこに豪雨が重なれば、土石流が大規模化し、被害が拡大するという。

「植生や地盤がこれほど不安定になっていなければ、被害を軽減できた。大量の土砂が下流へ流れ、ネパール側では100キロ以上離れた村にまで達している。上流域の斜面や地盤が不安定だったことは明らかだ」

林廷輝氏によると、以前からこうした自然環境を無視した大規模工事を行うべきではないとの警告が出ていたが、中共側は重視しなかったという。

「今回の洪水では対応が間に合わず、多くの人が一夜にして命を失った。中国が進めてきた自然環境を無視した大規模工事も一因だ」

海外に亡命したチベット人作家の桑傑嘉氏は2018年、中共が長年にわたりチベットで大規模なダムや水力発電所を建設し、鉱山開発も集中的に進めているとして、こうした開発がチベット住民にとって「時限爆弾」になっていると警告していた。

林廷輝氏は、中共が長年チベットで大型開発を進める一方、環境影響評価や国境を越えた災害リスクの評価を軽視してきたと主張した。

「中共は情報を封鎖し、これまでの防災訓練でも形式的な対応に終始してきた。災害が発生すると、災害を自然災害として片付け、自らの責任を回避しようとしている。こうした姿勢こそ批判されるべきだ」と語った。

楊坤氏は、事前の警報にも問題があったと指摘している。

「今回の洪水では事前警報がなかった。アメリカでは7、8分前に異常を捉えていたが、現地では何の警報も出なかった。7、8分前に警報が出ていれば、十分に避難する時間はあり、これほど多くの死傷者は出なかったはずだ」

災害発生後、中共は被害の実態に関する情報を厳しく統制している。一方、習近平は異例に李強首相をチベットの被災地に派遣した。李強が現地入りしたのは、災害現場が中国とネパールの国境に位置し、ネパール側との調整を地方当局だけでは処理できないためだとの情報もある。

林廷輝氏は、中共が中国とインドの国境地帯でも軍事基地の建設を進め、山を掘削して戦闘機を格納する施設などを造っていると指摘する。こうした工事で山体が不安定になれば、豪雨や氷の融解をきっかけに、さらなる災害が起きる恐れがあるという。

同氏によると、吉隆国境検問所周辺は7~8世紀ごろから、唐の使節や僧侶がインドへ向かう際に利用した重要な交通路であり、チベット仏教にとっても重要なルートだった。長い歴史の中でこれほど深刻な災害はなかったとし、2023年と2025年にも現地で相次いで洪水が発生していたと指摘した。

「中共は神仏を信じず、『人間は天に勝てる』と考えている。しかし、私たちは畏敬の念を持たなければならない。天を畏れ敬う心を持たなければならない。自然を無視した開発を続ければ、いずれその反作用を受ける。中共は今後、そうした災害に直面する可能性がある」。