中国・ネパール国境で土石流 情報公開めぐり両国の対応に差

2026/08/28
更新: 2026/08/28

中国とネパールの国境地帯で、大規模な鉄砲水と土石流が発生した。一方、被害状況の公表や情報発信では、両国当局の対応に大きな違いが出た。専門家は、災害後の対応で両政府の優先事項の違いが表れたと分析している。

大量の土砂を含んだ濁流が押し寄せ、吉隆口岸(国際的な出入境地点)の合同検査庁舎を瞬く間にのみ込んだ。人々は慌てて避難し、濁流はバスや建物を押し流した。

8月26日午前、中国チベット自治区シガツェ市ギロン県とネパールのラスワ県の国境付近で鉄砲水と土石流が発生し、吉隆口岸を直撃した。現地では道路が寸断され、通信や電力も途絶えた。中国とネパールの国境に架かるラスワ橋も流された。

ネパール警察は災害発生から数時間にわたり、死者・行方不明者数を随時更新した。26日夜までに157人の遺体が見つかり、観光当局によると約403人が行方不明となった。27日も情報を更新し、午後5時時点で死者は270人、行方不明者は826人に増えた。

一方、中国共産党(中共)当局は同日、具体的な死傷者数の公表が遅れ、「ネパール側で発生した土石流災害」により「多数の死傷者や行方不明者が出た」と発表するにとどまった。

中共中央テレビは同日午後8時、3人が死亡し、265人が行方不明になったと報じた。27日午前には行方不明者を558人に修正し、このうち260人が外国人だとしたが、詳しい状況は明らかにしなかった。

台湾国防安全研究院の鍾志東・若手研究員は、災害情報の公表速度の違いには、中共による情報統制の問題が表れていると指摘した。

鍾氏は「ネパールとしては、できる限り情報を公開し、メディアや国際社会、家族が一刻も早く状況を把握できるようにしようとする。これは民主国家で一般的にみられる災害対応だ。一方、中国のような全体主義国家では、まず情報を統制し、発表内容を一本化する。家族やメディア、まして国際社会のことは考慮していない」と述べた。

ネパールの外交・戦略問題を専門とする記者、パルシュラム・カフレ氏はXに投稿し、中共側が事前に警報を出さなかったと批判した。

カフレ氏は、ネパールがこれまで中共の要求に対応してきたとしたうえで、「なぜネパールだけが、この一方的な『片思い』の代償を払わなければならないのか」と問いかけた。

鍾氏は「中国のメディア統制は、中国の国際的なイメージにも影響する。自国本位で、隣国に負担を押しつけているとの印象を与えかねない。ネパールはこれまで、安全保障上の問題で中国側の要求に長く協力してきた。それにもかかわらず、ネパール国民の生命に関わる場面で必要な情報は提供しなかった。ネパール側は、中国に過度に依存してきたことの弊害を改めて考えることになるだろう」と指摘した。

アメリカ在住の時事評論家、邢天行氏は、災害後の対応で両国政府が何を重視したかには明確な違いがあると指摘した。

「中共では、社会の安定維持を優先する仕組みがはっきり表れている。災害が起きると、災害対応まで政治的安定の問題として扱われるため、政治的な安定の確保が前面に出る。数字の変動によって社会の疑念を招くことを避けようとするため、発表するデータは曖昧で透明性に欠ける。一方、ネパールではメディアや地方政府が当初から比較的オープンに情報を公開し、国際社会に支援を求める動きも公にしている」

災害発生後、ネパール警察や市民はSNSに現地の映像を投稿し、被害状況への注目を呼びかけた。

これに対し、中国本土のネットユーザーからは、WeChat、Douyin、RED、知乎、ウェイボーなど主要なSNSで、災害に関する動画や画像が相次いで削除、または閲覧制限されていると指摘が出た。

ウェイボーでは、土石流に関する情報と写真を投稿したユーザーの投稿を規制し、「自分にしか見えない」状態になった例もあった。

別のユーザーは「動画が投稿できないから画像にしたが、その画像も一瞬で消えた」と書き込んだ。

ネット上では、

「これは純粋な自然災害ではないのか。なぜ動画を削除するのか。何をそんなに隠したいのか」

「被害者数を推測されるのが嫌なのか」

「一番納得できないのは、ニュースで使っている映像までネパール側のものだということだ。中国国内でも被害が出ているのに、本当におかしい」といった声が上がった。

現在、中国本土のネット上では、中央テレビが公開した映像のみ転載できる状態となっている。

邢氏は「国民の知る権利をどこまで認めるかという点で、両国は大きく異なる。中共側では責任を問われることを恐れるため、問題が起きると地方当局もメディアも、中共中央が統一した発表方針を示すのを待つ。その結果、地方側は情報発信を控える。一方、ネパール側には、意図的に情報を隠そうとする姿勢は見られない」と述べた。

災害の原因について、アメリカ地質調査所(USGS)は27日、当初はマグニチュード4.4の地震によって引き起こされたと報告していたが、その後の詳しい分析で地震ではなかったことが分かったと発表した。

USGSによると、地震とみられていた振動は、実際には氷河の崩壊とそれに伴う土石流によるもので、その土石流が下流域に壊滅的な被害をもたらした。USGSは「地震は発生していなかった」と説明した。