抗議から1周年 民族関係は依然緊張=新疆ウイグル自治区

2010/07/01
更新: 2010/07/01

【大紀元日本7月1日】新疆ウイグル自治区で発生した大規模抗議は、7月5日で1周年を迎える。現地では一見、平静を取り戻したようだ。最高指導部は同自治区のトップ王楽泉・共産党書記を更迭した上、大量の投資で経済の建設に取り組み、漢民族とウイグル族の関係を融合させようとしている。その一方で、ウイグル族の間では、政府や漢民族への警戒感は依然根強く、将来に対する悲観的な見方が主流である。ドイツ国営メディア、ドイチェ・ヴェレがその様子をとらえた。

高まる民族間の不信感

ウルムチ市南部のある市場では、ウイグル人商人たちが所狭しと日常生活用品を売っている。ちょっと離れた場所には、漢族の商人たちが集まっている。新疆の北部地区出身で、玉の原石を売るウイグル人のダウテゥさんは記者に、両民族間の互いに信頼しない感情を語った。

「去年7月5日に発生したウイグル人の大規模抗議事件後、多くのウイグル人が当局に好き勝手に逮捕されたりしている。いまもなお、新疆は厳しい監視下に置かれている。大多数の人は恐怖のあまり本音を語ろうとせず、沈黙を保つしかない」

こう話すダウテゥさんの感情はかなり高ぶっていた。「国はウイグル人を潜在的な危険要素とみなしている」「だれが言ったか知らないが、ウイグル人が漢族に暴力を振るうなんて、嘘ばかりだ。あれはごく一部の悪人の行為に過ぎない」という。

抗議事件1周年を前に、ウルムチ市内のウイグル人居住地では、青い迷彩服姿で、手に棒を持つ男たちのパトロール隊をよく目にする。ダウテゥさんは、「中にはウイグル人もいる、とても寂しい気持ちだ」と語り、「いま、ウイグル人同士の間でも、互いに信用しなくなった」という。

また、市内では時々軍用車両を見かけるが、民族間の確固たる団結を訴える横断幕がよく掲げられている。例えば「祖国を守り、中国共産党を熱愛する」「経済の発展は人民の幸福の保障」などの内容である。ダウテゥさんとその友人らがこれらのパトロール隊と軍用車両を見つめる目線には、怒りが溢れ出している。

一方、漢族も、国の大量の経済投資で両民族間の溝を埋めることができるか、懐疑的な見方を持っている。

ウイグル人密集地のカシュガル地区でかつて9年間住んでいたという張さんは、新疆大学の現役大学生。両親は漢族であり、両民族の生活習慣を熟知しているという。張さんは率直に次のように語った。「コミュニケーションがまず必要でしょう。そうでなければ、互いに理解できないし、多くのことについて、我々もわからないでいる。それによって、誤解が生じてしまう。なぜかというと、生活習慣が違うし、宗教の信仰も異なるからだ」

ウイグル族、就職に劣勢的な立場

長期にわたって、中国政府が新疆で実行してきた政策の一つは、経済的な支援である。もう一つは、ウイグル族に漢族の言語を勉強させること。多くのウイグル族人はそれについて、強権で弱者を制する手段であり、ウイグル族の劣勢的な立場を表すと受け止めている。

マイマイティさんもこのような観点を持つ一人である。この40代後半のウイグル人男性はウルムチ市内の銀行で警備員として働いている。同市在住の大多数のウイグル人と同じく、その親族のほとんどは市の南部地区に住んでいる。その住宅は泥と草で建てられており、水道水の供給もない、数年前までは電気も通っていなかった。同地区には漢族が住んでいない。マイマイティさんの親戚は全員、定職につけていない。「求人に応募するとき、まず、漢族の言葉を話せるかと聞かされる。話せない人は採用される見込みがない」という。

漢族の言語である中国語が話せない場合、お金を稼ぐ唯一の方法は、市内の市場で細々と商売を行うことだという。しかし、それもまた、いくつもの統制管理を受けざるを得ない。「一部の管理者はよく商品を押収しにくる。市内で売ってはならないと追い出される。ちょっとしたことで罰金が科せられる」と話した。

マイマイティさんは中国語がかなり流暢なため、数ヶ月前にいまの仕事に就いた。しかし、仲介業者は毎月、給料の半分を仲介手数料として取るという。「私がウイグル人だからだ」と彼は怒りをあらわにした。

彼はまた、姪(めい)の実例を話してくれた。姪は旅行の専門学校を卒業したばかりで、流暢な中国語と英語を話せる。しかし、市内の多くのホテルから採用を拒否されている。理由はウイグル人を雇いたくないということ。25歳の彼女は今、飲食店の店員である。マイマイティさんは、政府が推進する新たな経済政策が現状を変えられるとは思えないと話した。

マイマイティさんの言葉には不満な感情が満ちていた。彼曰く、漢族は強い立場で、ウイグル族にいろいろなことを強制し、その上、ごく限られた範囲内でしかウイグル族の文化・伝統の伝承を許されない。ウイグル族の信仰も言葉も、プライベートの範囲内でしか用いることができない。両民族はともに新疆に住んでいるが、互いのコミュニケーションと理解が無さ過ぎる。このままでは、これからも新たな騒動が発生するに違いないという。

(翻訳編集・叶子)
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