米専門家、「中国のインフレはすでに警戒線を超えている」

2010/10/29
更新: 2010/10/29

【大紀元日本10月29日】27日に開かれた中国国務院常務会議(主要閣僚による会議)は、物価の安定化と不動産市場における安定した発展の促進を柱とする10~12月の経済運営の方針を決定した。特に物価安定化に関して、国務院は市場への監督管理を強化し、商品の大量買い込みや物価の急騰に便乗した大幅な値上げなどの行為を厳しく処罰するといった措置を今後強化すると発表し、物価急騰に対する警戒感を示した。また、国務院は各地方政府に対して、一部の都市での不動産価格上昇ペースの加速を抑制し、不動産への投機的な需要を抑えるため、徹底的に抑制政策を実行するよう求めた。


 同会議において、中国経済は順調に発展しつつあるとしながら、各種の経済問題のほか、外部からの圧力が顕著に強まったため、マクロコントロールは厳しい局面に立たされている、と中国政府当局は強調した。

インフレはすでに政府の警戒線を超えている

中国国家統計局は先週、9月の消費者物価指数(CPI)が前年比3.6%上昇と発表。3か月連続で中国政府が掲げた年間目標の3%を超えた。上昇率が8%に達した食品が含まれており、CPIを押し上げたという。

27日付の米国VOAによると、米国大西洋協議会(The Atlantic Council of the United States)のシニア・フェローで中国経済問題専門家のアルバート・ケイデル(Albert Keidel)氏は、金融投資商品の価格も考慮して、GDPデフレーター(※)で分析すれば、中国のインフレ圧力はすでに政府の警戒線を超えていると指摘。「CPIでは深刻さは窺えないが、未公開のGDPデフレーターで見ると、実際はもっと深刻な状況のはず」と言う。

10月22日付の中国国内の「財華網」に発表された、国内証券大手の国信証券による研究レポートによると、第3四半期(7~9月期)の中国実質GDP成長率は9.6%で、名目GDP成長率は15.4%に達した。しかし同期のGDPデフレーターは第1四半期の5.1%から5.8%に上昇したとし、今後国内のインフレ問題がさらに深刻化するとの見通しを示した。

米の量的緩和とは無関係

国務院は物価の安定を主要課題として取り組むことを表明しており、中国人民銀行(中央銀行)も上昇し続ける物価を警戒している。27日発表の中央銀行の報告書は、次のように指摘している。「主要経済体が相次ぎ量的緩和政策に踏み切ることによって、世界商品市場の価格が急激に上昇する恐れがあり、中国のインフレリスクを一層深刻化させる」

中国商務部の陳徳銘部長も、26日、米国のドル供給は「抑制がきかない」状態であり、中国にインフレの脅威をもたらしていると発言。同様の懸念を示した。

米連邦準備理事会(FRB)は、11月2日~3日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)で5000億~1兆2000億ドル規模の追加量的緩和を発表する見込み。

これについて、英ダラム大学の張志超経済学教授はBBCのインタビューで、中国のインフレは根本的に、過熱する投資および不動産バブルなど国内の要素を起因とするもので、アメリカの責任ではないとコメントした。


国家発展改革委員会官僚「中国国民は高水準のインフレ圧力に耐える覚悟が必要」

国内報道によると、中国国家発展改革委員会(発改会)の官僚はこのほど、匿名で「中央銀行が追加利上げをしても、現在物価急騰の勢いを有効に抑制できないため、国民は高水準のインフレ圧力に耐える覚悟が必要」と発言したという。また、14日付の「中新網」によると、同発改会のマクロ経済学会の王建事務総長も13日、「中国は更なる物価上昇率を忍ばなければならない。今利上げしても、インフレを抑制するのが難しくなるだけではなく、経済成長にもマイナス影響を与えるだろう」と述べた。

インフレの抑制がきかないことを認めた一連の政府官僚の異例な発言は、国内世論で大きな反響を呼んだ。ドイチェ・ヴェレによると、清華大学の呉強教授は、中国共産党第17期中央委員会第5回全体会議の開催時に政府関係官僚がこのような発言をしたのは、国民に従来共産党の思想である「安定はすべてを圧倒する。政治情勢の安定を保とう」という政治的なメッセージを送ることが目的であると語っている。呉氏はまた、政府関係者がこのような発言をした後、中央政府から国民生活に直接関わる物価問題について権威的な解釈を示すこともなく、さらに今までのように国民に対して物価問題に関する心情の安定を保つことを呼びかけていないことから、政府はインフレ圧力を国民全体に担ってもらうことを考えている、との見解を示した。

一方、在米経済評論家の簡天倫氏は「一回限りの利上げではインフレを抑制できないから、中国は今後さらに追加利上げを行わなければならない。しかし、このように何回も利上げをすれば、海外から巨額な投機資金が国内金融市場に流れることで、逆にインフレの圧力を高める恐れがある」と、中国政府がインフレ対策でジレンマに陥っていることを示した。

同じく在米の中国人経済学者・何清漣氏は、中国の経済構造は他国の市場経済構造と違い、金融調整政策は一種の行政的調整措置であるため、利上げの効果が薄いと指摘する。

また、ドイチェ・ヴェレによると、ドイツデュースブルク大学のマルクス・トーブ教授は、政府関係者の発言は、中国政府が国民にインフレの圧力を担ってもらうという目的のほかに、「地方政府の巨額な負債を除いても、国の負債総額が現在増え続けている中国中央政府にとって、政府が発行する確定利付債において、インフレを容認することで政府当局の財政上の圧力が軽減できるという政府が口に出せない理由がある」と分析する。

(翻訳編集・高遠)
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