<赤龍解体記>(4) 軍の新動向 「軍の肩持つ者の背後に立つ」

2011/02/20
更新: 2011/02/20

ムバラク大統領の退陣を促した諸要因の中で、民意や米国の態度の他、軍隊の強い意志と明確な立場が決定的な役割を果たした。

 中東・北アフリカの情勢が激変する今、中共の各勢力はみな注意深く見守りつつ、今後避けられぬ国民一揆に備える出方を考案している。その中で軍部は、当今のカラー革命から軍の決定力を改めて伺い知り、今こそより大きな権力を握る歴史的機会であり、この恵みを逃してはならない、とその意思を間接的に発信した。

 香港メディア・博訊によると、中共国防部(国防省)のある大佐が最近、私服で香港を訪れ、自らメディアに連絡し、意図的に軍の態度をもらしたという。

 ■有事の際、軍の肩を持つ者の背後に立つ

 この軍人の話によると、もし軍の中で誰かが軍事力で物を言うようになったら、胡錦濤や習近平は全く抵抗できないという。

 チュニジアのジャスミン革命が起きた後、軍部は急きょ中共政治局に諮問書を提出し、軍がより一層の政治化を図り、中共が軍隊を指揮する教育をより強化させ、そして軍の指導者が中共権力の中枢に多く入れるように、と提案している。

 通常、中共の政治局及び常務委員会が権力の中枢とされているが、この提案は権力の中枢で占めるべき軍人の人数や割合について言及していない。中共中央委員会や全国人民代表大会はかなりの軍人に席を占められているが、軍側はそれでも不十分とし、政治局以上の権力中枢に入るべく、より大きな実力を握ろうとしている。

 そのため、ある将軍は「軍の肩を持つ者の背後に立つ」という軍側のメッセージを発信し、各勢力をより一層けん制した。

 ■政治局の反応

 この諮問書に対し、政治局全体がもっぱら会議を開いて検討するまでには至っていないが、一部の政治局委員にはきわめて重要視されている。彼らは今後、チュニジアとエジプトのようなことが起こってはならないとし、軍部の管理を強め、さらに軍人により大きな権力を与えるべきだと主張している。

 しかし一方、ある政治局委員は、もし軍の権力が強大になれば、軍は有事の際に中共から離れて自己主張することになりかねない、と指摘する。もしチュニジアの大統領が軍隊と緊密な関係を持っていたならば、倒されたはずがないという。

 当面の重要な課題は、安定を守る道具である軍隊をうまく管理し、とりわけ党が軍隊を指揮する権力とその権威性を絶対失わせてはならず、さもなければチュニジアやエジプトと同じ轍を踏むことになるに違いない、とこの諮問書を読んだ指導者たちは考えている。

 ■中国の未来を左右する軍隊の動きが注目される

 毛沢東の絶対地位、_deng_小平の影響力、江沢民の政治手腕などのような図抜けた特性を欠く胡錦濤と習近平にとって、今後の道のりは決して平坦ではない。今後、如何にして軍隊と権力分配していくか、これはきわめて重大かつ緊急な課題である。

 この事で示唆されているように、今後、中国でいざ有事となれば、軍の権力が急に増強し、軍が政局を左右する決定的なキャラクターを扮する可能性はいよいよ現実的になりつつある。

 一点だけ断定できる。将来、中国でいざカラー革命が起きても、軍隊はふたたび天安門事件のように国民に発砲することはない。

 偶然かもしれないが、天安門事件で中共の発砲令に抗命した38軍の軍団長・徐勤先氏が22年ぶりにその声を出し、「当時の英断に後悔しない」と明言した。カラー革命が中国にも飛び火しそうな今、徐将軍の現前は、軍からのメッセージでないにしても、一種の喚起と暗示を与えかねない。

 (続く)
 

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