党員の半数が脱党か 中国に新たな1ページを開く「三退」運動

2011/08/16
更新: 2011/08/16

【大紀元日本8月16日】高速鉄道の追突事故をはじめ、一連の重大事故や大規模群衆事件で、7月末から中国の社会情勢が大きく揺れ動いている。そうした中、8月7日、中国を巡ってある数字が現れた。「100,005,934」と「36,602,172」

「1億5934」と「3660万2172」。GDPの統計や保有する米国債などとは関係しないが、中国の現在そして未来の情勢を表す数字だ。

共産党員の半数が脱党を表明

1億のほうは、中国共産党およびその関連組織である中国共産主義青年団(共青団)と中国少年先鋒隊(少先隊)の3つの組織からの離脱(いわゆる「三退」)を表明した人数であり、3600万のほうは、そのうち、共産党からの脱党を宣言した人の数だ。つまり、中国民衆を支配する中国共産党政権のコアとなる8千万人の共産党員のほぼ半数が、共産党から離脱する意向を表明していることを意味する。

「退党(Tuidang)運動」―日本語では適切な定義がまだないほど、日本人には馴染みのないこの言葉は、中国国内の水面下や海外の華人社会では6年前から徐々に広まってきた。中国当局に弾圧され、海外の主流社会から無視されてきたこの草の根運動だが、今年7月14日ついに、米国上院議会の与野党議員が共同で提出した232号決議案の中で、「中国人の退党運動を支持する」と言及された。

232号決議案が提出された翌日、米首都ワシントンで開かれた「退党運動を支援する」集会で、著名な中国民主運動活動家で中国民主運動海外連盟会議の主席・魏京生氏が、次のようにコメントした。

「数年前、この活動が始まった際、多くの人が否定的だった。こんな運動には誰も参加しないだろうと。しかし現在、大きな成果が出ている。それに参加し、支持する人がますます増えている」「私たちはみな、中国の情勢が大きな変化に向かっていると分かっている。今この変化はますます近づいている。民衆の心を躍動させる私たちのこの運動は、中国の将来のトレンドを作り出している」

232号決議案が出された3週間後、「三退」を表明した人の数が1億人を突破した。

省長に脱党を勧めた梅宮さん

1億人。人口13億の中国で、13人に1人が共産党からの支配を心から否定することを意味する。

その歴史的な出来事を支援するイベントがここ1週間、世界各地で開かれている。

8月14日、日曜日。山梨県の梅宮さん(67)は、朝8時、東京に向かう電車に乗った。東京新宿で開かれる「1億人の中国人脱退者を支援する」パレードに参加するため。

中国東北地区から帰国した残留孤児である梅宮さんは、2009年中国人の友人の勧めで、中国人に対して電話で脱退を勧める活動に関わり始めた。

「10人に電話をかけたら、だいたい4人が脱退に同意する。こんなに簡単に成功するとは思わなかった。電話をかければかけるほど癖になるね。今1年半経ったが、今年6月までは1か月平均150人が脱退に応じてくれた。7月からは、パソコンを使って中国に電話をかけるようになったので、電話代を気にせず気軽にかけられるようになったから、1か月で250人が脱退に同意した」

梅宮さんによると、共産党からの脱党に同意した人の中に、ある省の副省長もいたという。「偶然なのか縁なのか、彼の奥さんが私が中国にいたときの地元の県長さんだったから、話がずいぶん上手く進んだ。3回目の電話で、彼は自分が副省長であることを私に洩らした。そこで、私は彼に、その省に監禁されている法輪功学習者を釈放するようお願いした。彼はそこまでできないと言ったが、家族6人全員が脱退すると言ってくれた。共産党はすでに駄目だと言っていた」

中国に電話をかけて脱党を勧めるほか、梅宮さんは普段でも出会った中国人に「三退」を勧めることを心がけている。「今日東京に来る電車の中でも二人の中国人に脱退を勧めた」と、微笑ながら話した。

梅宮さんのような、中国に電話をかけて「三退」を勧めるボランティアは、日本各地にたくさんいるようだ。

世界脱党センターの責任者・李大勇博士によると、海外華人が集まっているところにはほとんど、脱党センターが置かれている。海外各地だけでも脱党支援センターは数百ある。そこのボランティアはほとんどが法輪功学習者だが、中国の民主運動に関心を示す人もいるという。

彼らは、電話やインターネットを通じて、中国国内の一般市民から各政府組織にまで電話をかけている。

そのほか、世界各地の観光名所のほぼすべてのところにも、中国人観光客に「三退」を勧めるボランティアがいるという。「例えば、香港では、一日ツアーのスタート地点から終了地点まで、すべての観光スポットに、中国人観光客に三退を勧めるボランティアがいる」

カナダ在住の中国人・毛鳳英さんは、毎晩必ず、中国に電話をかけて脱退を勧める。「毎日、夜中の1時から5時まで電話をかけて、それから仕事に行く」。肝臓の病気で病院から見放されたが、法輪功を学んで健康を取り戻したという毛さんは、この数年間で、中国国内のほぼすべての地区に電話をかけたという。

「私は法輪功に恩を感じる。その分、共産党から被害を受けている中国人にお返ししなければならないと思っている」

2年間で1万1千人に勧めた流浪者

李大勇博士によると、海外に多くのボランティアがいるものの、三退を勧めるボランティアの核となるのは、中国国内の法輪功学習者だという。

法輪功学習者の交流サイト「明慧ネット」の2007年11月のある投稿記事によると、山東省の70歳の法輪功学習者は、当局からの迫害を避けるため、2005年から全国各地を流浪する生活を余儀なくされた。流浪生活の中で、出会った人たちに脱退を勧めている。彼の勧めで脱退した人は2年間で1万1千人もおり、その中には、法輪功を迫害していた警察や共産党幹部もたくさんいたという。そのため、警察に指名手配され、4回も逮捕され、2回監禁されたという。

河北省の法輪功学習者・林暁明さんは、仕事以外の時間は、自転車に乗って、自分が住む都市と付近の町の隅から隅まで、人々に脱退を勧めて回っている。7年間1日も休んだことはなく、2008年までに彼の勧めに応じて脱退した人はおよそ1万人に上るという。

脱退に同意したこれらの人々の名前は、安全のためその多くが匿名であり、それをボランティアたちが世界脱党支援センターに送り、大紀元サイトの脱退表明専用ページで集計・発表される。

大紀元サイトのボランティアによると、中国国内ではネット封鎖が行われており、多くの民衆が脱退表明サイトにアクセスできないため、脱退声明を公の場所に貼ったり、人民元札に書いたりしているという。

2005年5月24日、ハルビン市内のある場所に貼られた脱党声明(明慧ネットより)

北京市で発見された10元札に、脱党声明が書かれている(明慧ネットより)

民主活動家「最後の共産党帝国よ、さらば」

六四天安門事件の参加者で、フランス在住の著名中国民主運動活動家・張健氏は、「三退運動」について次のようにコメントしている。

「ヨーロッパには、温州から来た中国人がたくさんいる。中国国内でビジネスに成功した人が非常に多く、海外でも上手くビジネスをこなしている。中国の改革開放政策の受益者と言える。しかし、最近温州で起きた高速鉄道の衝突事故の死傷者は、多くが温州出身の人。中国当局の世界を驚かせた対応から、国内外にいる多くの温州出身の人は怒りを覚えている。特に海外にいる温州の人たちはこれまで、共産党政権を支持していた。今回は彼らでさえ怒っている。共産党の支配のままでは、我が国の将来は危機に直面している。『三退運動』は中国とその民衆を救う過程である」

オーストラリア在住の中国人民主運動活動家・袁紅氷氏は、シドニーで開かれた脱党支援集会で、脱党運動について次のようにコメントしている。「脱党運動は中国人の精神を蘇らせる運動。数年経った現在、中国共産党独裁政権は脱党運動に大きく怯えている。数日前、胡錦濤主席は一部の幹部に対するスピーチの中で、脱党運動の共産党への影響力に気を付けろと話したようだ。共産党政権を崩壊させる国民の蜂起が間もなく到来すると言ってもいいだろう」

米国在住の民主運動活動家で、六四天安門事件の学生リーダー・唐柏橋氏は、次のように指摘している。

「1989年から2005年の間、中共の国内および国際社会での影響力と地位は、基本的に上昇していた。しかし、脱党運動が始まった2005年から、偶然かもしれないが、落ち目になっている。特に2008年以降、脱党運動や、法輪功による真相伝え運動、それに加えて『九評共産党』の広まりによって、中国共産党の影響力は直線的に落ちている」

「2005年までにも民主運動や人権運動、さらには米国の制裁があったが、中共の影響力はどうして上昇し続けたのか。2005年以降、中国経済は特にそれまでに比べて落ち目になったわけでもないし、ほかに深刻な問題があったわけでもない。2005年までと比べて唯一の大きな違いは、脱党運動と『九評共産党』の発表だ。この二つのことが中国民衆の心を動かしていると私は思っている」

フランス在住の中国人ベテランジャーナリスト・吴葆璋氏は、共産党関連組織からの脱退運動について、「最後の共産党帝国よ、さらば」とコメントした。

加速する脱党ブーム

世界脱党支援センターの主席・易蓉女史によると、ここ1年、脱退する人数は以前より加速する傾向を見せているという。その理由について、多くの中国人が、共産党の本質を暴露する大紀元のシリーズ社説「九評共産党」の広まりで真実に触れたからだという。

「現在、共産党を恐れる中国人は少なくなっている。以前はそうではなく、多くの中国人が迫害を恐れ、共産党に対して怯えていた。現在は、脱退を表明する人の中に、匿名ではなくて実名で出した人も増えている。脱党ブームはすでに、軍部と警察など共産党体制内部を含めて、中国の各階層に浸透している」

特に7月は、共産党政権設立90周年の記念月だったが、激しいインフレや、一連の群衆事件や重大事故により、中国の政治、経済及び社会の危機が爆発寸前となった。

香港で発行される中国の政治情勢誌「開放」の評論によると、7月23日に東南部の都市・温州で起きた高速鉄道追突事故は、中国共産党政権の基礎を揺るがしているという。また、香港紙「リンゴ日報」の評論記事は、「独裁が崩壊する曙光が見えている」とコメントしている。

7月28日、中国共産党の設立に当たって重要な拠点として知られる湖北省黄岡市のタバコ業界のリストラされた労働者が、集団で共産党関連組織から脱退する声明を発表した。中共は民衆から見捨てられており、全国のすべてのタバコ業界のリストラされた労働者にも脱退するよう呼びかけている。

最近の脱党ブームについて、世界脱党支援センターの李大勇博士は、「中国人に脱党を勧めるのは例年よりやりやすくなっている」と話している。「最近中国国内では群衆事件が増えている。脱党支援センターのボランティアが電話をかけたら、数十人や百人単位で相次いで脱退を表明したケースがしばしばある。最近、ニューヨークのブルックリン中華街で行われた脱党応援パレードの参加者の3分の1は、法輪功学習者ではなかった。警察が彼らにどうしてパレードに参加したのかと聞いたところ、脱党を表明しにきたのだと答えた。脱党声明の証明をもらうためだという(米国で中国人が難民申請する際、この証明が有力な資料になっているようだ)

米国在住の中国政情専門家・横河氏によると、「中国国内では、あるウェブサイトの経営者が自分のサイトのアクセス数を稼ぐために、『九評共産党』のリンクを張っている。もちろん、その後当局に見つかり、逮捕されたが、『九評共産党』が中国国内でどれほど受けているかを物語っている。もう一つの例は、中国国内軍部の機関紙『解放軍報』で報道されたことだが、ある軍部の幹部が市場で買い物をしていた際、人々に囲まれて脱党しろと説得されたという」

(趙莫迦 Zhao Mojia)
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