金総書記が訪露 天然ガス協議で朝露は中国けん制

2011/08/23
更新: 2011/08/23

【大紀元日本8月23日】北朝鮮金正日(キム・ジョンイル)総書記が9年ぶりに訪露している。今回の訪露では、ロシアから北朝鮮経由で韓国まで天然ガスパイプラインを延ばす計画が焦点の1つになるとみられている。ロシアの協力により、北朝鮮は中国への依存が軽減し、ロシアにとっても難航している中国との天然ガス協議に圧力をかけることが出来ると期待されており、朝露双方の歩み寄りで、中国をけん制する構図がうかがえる。

ロシアの有力経済紙コメルサントは22日、東シベリアのバイカル湖に近いウランウデのロシア軍基地内で行われる金総書記とメドベージェフ露大統領との首脳会談(23日)で、9月に開通予定のサハリンとウラジオストックを結ぶ天然ガスパイプラインの、韓国までの延長が協議されると報じている。

同パイプライン延長計画について、朝鮮中央通信は15日、メドベージェフ大統領は金総書記に送った電報の中で、北朝鮮との協力を拡大する用意があることを明言した、と報道した。

ロシア科学アカデミー極東研究所の朝鮮問題専門家コンスタンチン・アスモロフ氏は米VOAに対し、この天然ガスパイプライン計画はロシアと北朝鮮、韓国のいずれにとってもメリットがあると分析する。「韓国はロシアの天然ガスを獲得でき、ロシアもこの計画により市場の多元化をはかることができる。北朝鮮にとって、通過料という現金収入が期待できるほか、エネルギー危機の解消も望める」とアスモロフ氏は加えた。

さらにアスモロフ氏は、北朝鮮が現在直面している食糧危機をもたらした大きな要因の1つは、農業生産に必要なエネルギー供給が不足していることであるため、パイプライン計画は大きな意味をもつと指摘する。

一方、ロシアは現在、唯一の天然ガスの輸出先はヨーロッパとなっているが、ヨーロッパ市場はしばらくガスの値下げを要求している。そのため、ロシアはアジア市場の開拓でヨーロッパ市場への依存を軽減させようと試みるが、中国との協議は難航し、価格面での対立は長い間解決されていない。こうした中、韓国・北朝鮮との協力は、中国に圧力をかけ、さらに中露間協議でロシアが主導権を握る効果が期待されると、VOAはロシアメディアの分析を伝えた。

中国に圧力をかけたいとの思惑は北朝鮮も同じだ。北朝鮮がロシアと接近することによって、今まで中国が独占していた対北朝鮮関係が弱められると同時に、中国に対して、北への支援を強化するようプレッシャーもかけられる。22日付の韓国紙・中央日報は、「冷戦時代のように中国とロシアの間に対北朝鮮支援競争を引き起こそうとしている」と、今回の金総書記の訪露目的を分析した。

中国が最近行った北朝鮮への経済支援は、即効性のあるものよりも、東北部の羅先経済特区への投資に見られるような中長期的なものが多い。中央日報は、中国政府が、北朝鮮が延命できる程度の食糧とエネルギーを提供し、結果的に北朝鮮資源の開発にかかる独占権を確保しようとしていることに、金総書記は不満を抱いていると指摘した。

一方、ロシアは「即効性」のあるものとして、北朝鮮への食糧5万トンの無償提供を8日に決め、19日すでに咸鏡南道の興南港に到着したという。このほかにも、ロシア政府が世界食糧計画(WFP)を通じて500万ドル(約3億8000万円)相当の食糧を北朝鮮に提供しているとも伝えられている。

(翻訳編集・張凛音)

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