大紀元時報
評論

米中貿易戦が再激化、「賭けに出た」中国当局

2019年05月11日 10時23分
2017年4月、中国の習近平国家主席が訪米し、トランプ米大統領と首脳会談を行った(JIM WATSON/AFP/Getty Images)
2017年4月、中国の習近平国家主席が訪米し、トランプ米大統領と首脳会談を行った(JIM WATSON/AFP/Getty Images)

トランプ米政権は10日、中国からの2000億ドル(約22兆円)分の輸入品に課す追加関税を、これまでの10%から25%に引き上げた。中国政府は直後に声明を出し、「必要な報復措置」を講じる構えを見せた。

一時、まもなく合意されるとの楽観的な観測が広がった米中貿易協議は、中国側が土壇場で翻意したため、今後の見通しが不透明になった。

ロイター通信8日付は、米政府関係者らの話として、中国当局は今までの交渉で知的財産権保護や技術の強制移転、為替などの事項に関して、国内法の改正を約束したにもかかわらず、今月3日に米政府に送った合意文書案で約束を撤回した。

中国当局が突如態度を変えた理由について憶測が飛び交っている。

「賭けに出た」中国当局

今年に入ってから、中国経済がやや回復の兆しが表れた。中国税関総省が発表した3月の貿易統計では、同月ドル建て輸出は、市場予想を大幅に上回り、前年同月比14.2%増加した。5カ月ぶりの高水準という。中国当局によるテコ入れ策で、3月の新規人民元建て融資や社会融資総量が予想外に急増し、投資の拡大が示された。中国当局は、景気が上向きになったことで、強気に出た可能性がある。

しかし、中国経済の好調が、約束を反故した主因ではない。中国当局の最高指導部が「政治的な賭けに出た」という見方は、最も説明が付く。

国際社会は、中国共産党政権が真に構造改革を行うと信じていない。構造改革を行い、市場を開放してインターネット封鎖を解除し、情報の自由を認めれば、虚言と圧政で維持された中国共産党政権の統治が、崩壊することを意味するからだ。

さらに、ここまで米の要求を受け入れると、党内から「弱腰外交」と習氏への批判が沸き立つ。

中国共産党の本質を見極め、強硬姿勢を示すトランプ政権は、貿易戦を通じて、中国当局に2つの究極の選択肢を突きつけた。中国経済を守るのか、それとも中国共産党政権を維持するのか。

約束の撤回は、中国当局からの返事だと見てもよい。「一強体制」を築いたように見える習近平国家主席は、政権維持に拘れば、難しい政権運営を強いられることになる。

江派の影

4月下旬、江沢民派の主要人物である曽慶紅氏が久しぶりに公の場に姿を見せた。習近平氏は近年、反腐敗キャンペーンで江派の高官を次々と失脚させ、江沢民派の勢力は衰退した。その一方で、江沢民氏、曽慶紅氏2人の摘発を放置した。専門家は、習近平氏は中国共産党体制の崩壊を避けるために、江沢民氏らに譲歩したとみてきた。

インターネット上に投稿された動画によると、4月20日、曽慶紅は江西省トップの劉奇氏とともに、故郷の同省吉安市を視察した。劉奇氏は、習近平氏が浙江省トップを務めた際の部下で、習氏の側近だ。曽と劉の両氏の組み合わせは、習派と江派が「仲良くやっている」というメッセージを送り、党内の団結をアピールしているように見える。しかし、習近平氏が政権維持に拘り、江沢民派に譲歩しても、団結は長く続かない。

トランプ大統領が5日のツイッターで対中追加関税の引き上げを発表したのを受け、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは6日、情報筋の話を引用し、貿易交渉で中国側が約束した内容の一部に対して習近平氏が認めず、交渉が失敗すれば「自分がすべての責任を負う」と述べたと報じた。

サウスチャイナ・モーニング・ポストは、2015年にアリババグループに買収され、親江沢民派メディアとして認識されている。

勝負の行方

劉鶴副首相は、9日と10日の米中通商協議に予定通り参加した。渡米前、劉氏は「圧力下での渡米」とメディアに語った。習近平氏の政敵は、今回の交渉を「米国の圧力に屈した侮辱的な交渉」と捉え、習氏への批判を強めるだろう。この交渉でどんな結果が生じても、敵対勢力に攻撃の口実を与えることになる。

劉副首相の訪米は、米国の圧力に屈したというよりも、親江沢民派メディアの報道への対応と言える。

実にトランプ米大統領の5日のツイッター投稿を受けて、中国人民銀行(中央銀行)は6日株式市場の取引開始前に、中小銀行を対象に預金準備率の引き下げを発表した。これによって、市場に2800億元(約4兆5174億円)の資金を供給するという。中国当局が、トランプ大統領の発言で、中国経済や株式市場が受ける影響を予測したことが読み取れる。

しかし、中国当局はサウスチャイナ・モーニング・ポストの報道を予測できなかった。

今後の見通しとして2通りの展開がある。一つは中国側が大幅に譲歩し、米側と合意する。しかし、こうなった場合、江沢民派が必ず、「主権を失い国を辱めた」として、習近平氏に反撃する。党内闘争が一段と激しくなり、政権の不安定さが高まる。

もう一つは、中国当局が引き続き意図的に貿易交渉を先延ばし、米中両国が物別れに終わることだ。これが起きれば、中国経済が壊滅的な打撃を受けることになる。

輸出、投資、個人消費の低迷が深刻化するほか、中国当局が最も不安視する債務危機もぼっ発する可能性が高い。これに伴う企業の倒産、労働者の失業が急増し、中国当局への社会不満が一気にに爆発する。

この中国当局が最も恐れる状況に、どう対処するのか。習近平氏が政治手腕を発揮し、反対派の攻撃を圧制することができたとしても、経済崩壊を迎えた中国共産党政権は末路をたどるしかない。

米中貿易戦、中国国内および共産党の現情勢を分析すれば、米中貿易交渉で勝負に出た中国当局は、初めから失敗に向かっていることが分かる。米中通商協議の結果がどうであれ、中国共産党体制の崩壊が加速化する。

10日、2日間の米中閣僚級協議を終え、トランプ大統領は同日、今後も交渉を続ける方針を表明した。ロイター通信は10日、情報筋の話として、劉副首相は国内法の改正を拒む立場を変えておらず、国務院令や行政命令で対応すると提案したと報じた。米側はこれに拒否したという。

前国家経済会議(NEC)副委員長のクリート・ウィレムス(Clete Willems)氏は米メディアに対して、トランプ氏は交渉チームに「満足できる内容でなければ、いつもで立ち去れ」と告げた、と話した。

(翻訳編集・張哲)

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