大紀元時報
評論

中国、米中貿易戦長期化で布石 対台湾統一戦線工作先鋭化

2019年05月16日 16時56分
5月13日、台湾台北市で一部の知識人と民間団体が集会し、政府に対して「外国代理人登録法」の改正を呼び掛け、親中国共産党の台湾メディアを外国代理人に認定するよう求めた(陳柏州/大紀元)
5月13日、台湾台北市で一部の知識人と民間団体が集会し、政府に対して「外国代理人登録法」の改正を呼び掛け、親中国共産党の台湾メディアを外国代理人に認定するよう求めた(陳柏州/大紀元)

中国北京市ではこのほど、ジャーナリストらが参加する第4回「中国・台湾媒体人北京サミット」が行われた。台湾メディアを抱き込もうとする中国当局の「サミット」はよく見られるが、今回は中国人民政治協商会議全国委員会主席である汪洋氏の発言に注目しなければならない。

汪氏はサミット開催中、中国共産党への対抗で米国の協力を望む台湾を頻繁にあざ笑い、サミットに参加した台湾各メディアの幹部に対して、「現在、(中国本土と台湾の)平和統一と、1国2制度を実現するには、メディア界の友人である皆さんの努力が必要だ」と呼び掛けた。

この呼び掛けは、中国当局が台湾メディアに対して指導的な立場にあることを示唆した。当局の高官はまるで台湾メディアの「総編集長」のように発言していた。

また、今回のサミットには、台湾各主要メディアの幹部だけでなく、台湾中南部にある草の根的なラジオ放送局の幹部、有名な新聞伝媒大学の学長も出席した。

中国当局が、台湾の報道機関、ジャーナリスト、ジャーナリズムを学ぶ学生に対する思想支配を深化し、台湾社会に対して世論戦と心理戦を拡大していく狙いは明らかだ。

2020年台湾総統選挙

中国当局は、助成金などの形で親中国共産党の台湾メディアに密かに資金を提供することができる。これらのメディアは、2020年の台湾総統選挙で、親中国共産党の候補者が次期中華民国の総統に当選できるように、台湾国民に対して、中国当局にとって有利な報道や宣伝活動を大々的に行い、世論を誘導するに違いない。

言い換えれば、中国当局は言論および経済の面で、反中国共産党メディアの解体を企む。同時に、中国当局は自由・民主社会の抜け穴をかいくぐって、台湾の内部からこの民主主義体制の崩壊を狙う。これが成功すれば、台湾国民の自由・法治・道徳に対する自信が強い打撃を受けるだろう。この時、中国当局の最終目的である「早期の台湾統一」が実現することが目に見える。

米中貿易戦の鍵を握る台湾

中国当局はなぜ、一日も早く台湾を吸収しようとするのか。これは現在激化している米中貿易戦と関係がある。

米中双方は昨年から5月上旬まで、11回の閣僚級通商協議を行った。合意を目前にして、中国当局が最近、突然貿易交渉で米側と交わした約束を覆した。トランプ米政権は、中国側の反故に怒り、中国製品への関税引き上げを実施した。

筆者が予想した通り、米中通商交渉において、中国当局は真の譲歩をしたくないし、合意するつもりもない。中国側は、長期間の交渉を利用して、時間稼ぎをしたいだけだ。つまり、中国側は来年末に行われる米大統領選まで先延ばししたい。中国当局は、米民主党候補者、特にバイデン米前副大統領の当選を期待している。トランプ大統領の再選が失敗に終われば、中国当局は貿易戦から生き延びられるとの考えだろう。

中国側の思惑に、トランプ米大統領は気付いている。13日、大統領はツイッターで、「中国(当局)は、寝ぼけたジョー・バイデンか他の候補者が2020年の大統領選で当選するのを夢見ている。中国(当局)はアメリカを搾取するのが大好きだ」と投稿した。

米中貿易戦が激化し、長期化になる可能性が高まった今、中国当局は速やかに台湾を吸収したいと考えている。

なぜなら、現在国際社会に厳しい目を向けられている中国当局は、国内産業を振興するのに必要な先端技術を、欧米企業から入手できなくなったからだ。しかし、台湾企業に対して利益の誘惑や脅迫の手段で、必要なハイテク技術を手に入れることができる。でなければ、世界市場における中国企業の競争優位性と影響力が直ちに消え、中国国内経済が最悪な状況に陥るのだ。

しかし、その一方で米政府も現在、中国当局に対抗して、台湾との協力関係を強化しようとしている。トランプ政権は、米ハイテク企業の米国内への生産移管、または台湾への進出を望んでいる。

米政府は、対中制裁関税を25%に引き上げた。中国に進出する台湾企業の中に、利益率が20%を下回る企業にとって大きな負担となっており、中国からの撤退を余儀なくされる。外資企業による大規模な中国撤退で、中国経済および雇用市場が壊滅的な打撃を受ける。

中国本土に進出する台湾企業から構成する組織、全国台湾同胞投資企業聯合会(台企聯)の謝智通・常務副会長によれば、米政府の25%の関税に対して、中国本土の台湾企業のうち、「30%から40%の企業が撤退するだろう」と話した。

台湾政府の統計では、今年初めから現在まで、中国本土の台湾企業による資金回流規模が約100億ドル(約1兆947億円)を上回った。すでに失速した中国経済と雇用市場にとって、さらなる痛手になるだろう。

さらに、米下院は5月7日、台湾との関係強化を目的とする「2019年台湾保証法案」を可決した。米政府は台湾との自由貿易協定の締結を推進する意向もある。これは、中国本土の台湾企業や外資企業にとって朗報であろう。

特に、ハイテク技術の人材、高度の情報セキュリティや知的財産権の保護を必要とする企業が魅力を感じるだろう。中国本土から撤退し、台湾に進出すれば、米台の自由貿易協定が合意する場合、関税がかからず、製品を米市場に輸出できる。企業にとって、大幅なコスト削減が実現できる。

このさまざまな要因をみて、貿易戦で強いプレッシャーを受けている中国当局が、台湾メディアへの支配を強めざるを得ないと推測する。

来年の台湾総統選に介入し、台湾を吸収することで、ハイテク技術を持つ台湾企業を手に握ろうとしている。こうすれば、中国当局が思い描く経済繁栄が続けられ、トランプ米政権に対して長期にわたり対抗しながら、共産党政権も延命できると、中国側は考えているのかもしれない。

台湾と米国の分断を図る台湾メディア

実際に、中国当局の台湾メディアへの統一戦線工作が功を奏しており、台湾社会における中国当局の影響力が拡大している。

台湾メディアの大半は中国国内の政府系メディアのように、毎日トランプ大統領と米政府に対する批判を繰り返している。

最近、米メディアは、バイデン前副大統領の息子の中国当局との密接な利益関係を報道した。台湾でこのニュースを報道したのは、反中国共産党のごく一部のメディアに限った。また、中国の軍事的脅威を念頭に、米国、日本、インドとフィリピン4カ国の海軍が今月初め、南シナ海で共同訓練を行ったことに関しても、一部の台湾メディアは中国政府系メディアの主張を引用し、偏向報道を行った。これは、台湾と米国との友好関係を裂くよう唆す意図があることがみえる。

中国共産党は政権を奪取してから、「台湾統一」の野心を抱いてきた。米中貿易戦の白熱化に伴い、政権崩壊の危機に直面している中国共産党当局は、台湾への統一戦線工作を加速させ、台湾統一で危機脱却を図ることに出た。

中国当局は、政権を維持し貿易戦で米国に対抗していくため、中国経済と十数億人の中国国民の幸せだけではなく、2300万人の台湾市民をも巻き込み、犠牲にしようとしている。邪悪な政権としか言いようがない。

また、各メディアとこの邪悪政権との距離が、はっきりと見え始めている。

(文・唐浩、翻訳編集・張哲)

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