カナダ国立微生物研究所に所属していた中国出身の科学者2人は3月末、北京にエボラ出血熱の生きたウイルスを輸送していた。CBCが8月2日に報じた。研究所は5月、この2人の科学者を解雇した。
CBCによると、3月31日、エボラ出血熱およびヘニパ・ウイルスがエアカナダの一般旅客機で、北京へと輸送された。いずれも、人に致命的な疾患をもたらす最悪レベル4の病原体で、厳重な取り扱いが要求されるもの。
CBCは、複数の匿名の情報筋の話として、2つの病原体は「カナダの知的財産権の保護を証明する文書なしに、研究所の事務的な処理を避けて、北京の中国科学アカデミーに送られた可能性がある」と報じた。
5月24日、公衆衛生局は詳細の明かされない「行政問題」として、ウイルスの持ち出しについて警察に届け出た。その結果、7月5日、国立微生物研究所およびマニトバ大学は、中国出身の研究者で夫婦の邱香果氏と成克定氏、および複数の中国人留学生を解雇、除籍した。
カナダの捜査当局は、邱氏夫婦を逮捕・起訴していない。しかし、2人は秘密を取り扱う者としての適格性の証明資格「セキュリティ・クリアランス」を取り消された。
国立微生物研究所と公衆衛生局は、生きたウイルスを北京へ運搬したことについて、公共の安全は危険にさらされていないと繰り返し強調している。
邱香果氏は、カナダ国立微生物研究所(NML)の特別病原体プログラムの研究室で、ワクチン開発および抗ウイルス療法担当の責任者だった。また、エボラウイルスについて研究していた。
邱氏は、2014年の西アフリカでのエボラ出血熱発生時に使用されたワクチン「ZMapp」開発チームの一員。このワクチンを投与された患者7人のうち、5人は生存し、2人が死亡した。医学誌MDは当時、統計的にこのZMappの有効性を評価できないとしている。
CBC記者カレン・ポール氏は、最先端技術の研究者は、カナダの知的財産局が仲介する、物質移送の契約を交わさない限り、他の国の研究室に送ることはできないと指摘する。
国家安全保障専門家は、このたびのレベル4病原体の輸送について、「中国の科学者が法律のグレーゾーンを利用して、特許や契約を避け、潜在的に価値の高い病原体あるいは貴重な知的財産を入手した可能性がある」とコメントしている。
中国メディアの報道によると、邱氏は「カナダ国立微生物研究所を拠点に」、中国の危険ウィルス研究プロジェクトを積極的に支援していた。中国軍事科学院軍事医学研究院の陳薇研究員チームとも共同研究を行っていた。
同チームが開発した遺伝子組み換えエボラワクチン「rAd5-EBOV」が、アフリカのシエラレオネで患者500人を対象に臨床試験が実施された。人民日報海外版は2016年12月、「これは中国のワクチン研究で初の海外進出後の、歴史的な進展だ」と報じた。
2017年、中国食薬監総局はエボラワクチンrAd5-EBOVを承認した。「中国独自に研究開発した完全な知的所有権を持つ」エボラワクチンとして宣伝している。
(編集・佐渡道世)
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