ファーウェイに同族会社の名残、一族が関連会社経営

2019/10/15
更新: 2019/10/15

[深セン(中国) 11日 ロイター] – 中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]は18万人超の社員を抱えて170カ国余りで事業を展開し、中国最大のグローバル企業の1つだろう。年間売上高は1000億ドルを超える。

しかし多くが通信と無縁の関連事業では、創業者である任正非・最高経営責任者(CEO)の親族が経営を牛耳り、同族会社の名残をとどめている。こうした事業はホテル経営から食品販売まで多岐にわたり、ファーウェイの社員と顧客が主な取引先だ。

任正非氏(74)はファーウェイの持ち株比率が1.14%にすぎない。ところが、社内関係者によるとその権限は絶大だ。拒否権を持ち、発言は常に全社員に回覧される。

ファーウェイの経営に任正非氏の親族が関与している事例としては、対イラン経済制裁に違反した容疑で昨年カナダで身柄を拘束された、任正非氏の娘の孟晩舟氏が有名だ。一方、孟氏ほど目立たないが、任正非の兄弟や息子、妻もファーウェイの関連会社で役職に就いている。

任正非氏の弟でファーウェイの監視委員会のメンバーである任樹録氏(63)は最高ロジスティックス管理責任者(CLO)として、ファーウェイに関連する建設、ケータリング、福利厚生などの業務を管轄している。広東省・東莞の松山湖での新拠点建設の仕上げや、2023年までに建設予定の深セン本社近くの社員向け集合住宅も任樹録氏の監督業務だ。

シドニー工科大学の准教授で中国企業の企業統治が専門のコリン・ハウズ氏によると、中国では国有企業でも民間企業でも、社宅などの施設建設や顧客獲得のための接待業務の提供などを企業が自前で手掛けるのは珍しいことではない。

ファーウェイの子会社で、任正非氏の息子の任平氏(44)がトップを務める深セン慧通商務は中国国内のほかタイ、サウジアラビア、南アフリカなどでホテル経営や集合住宅の供給を手掛けている。同社の経営するホテルは主にファーウェイの社員や同社の顧客を対象にしているが、一部のホテルは誰でもインターネット経由で予約できる。

ファーウェイは任樹録氏や任平氏、慧通商務の幹部などへのインタビューを拒否した。

中国の企業登記データからは、任平氏はファーウェイの別の子会社、上海莫塞爾貿易でも社長を務め、任正非氏の妻もこの会社に籍があることが分かる。ウェブサイトによると同社は世界中から輸入した食品を販売。ファーウェイのロゴ入りのワイン、高級牛肉、高級なコメなどを取りそろえ、部外者も購入できる。

ロイターが取材した一部社員は、上海莫塞爾貿易の商品は値段が高すぎるとの指摘したものの、品質は良く、ファーウェイのロゴが入っているので法人向けギフトにぴったりだと評価する声も聞かれた。

一方、上海莫塞爾貿易傘下の旅行会社、慧通愛旅は米政府によるファーウェイ締め付けのあおりを受けた模様で、8月に事業を停止した。

シドニー工科大のハウズ氏はファーウェイが創業者の親族のつながりを保っていることについて、中国の民間企業では一般的だと説明。「トップがだれを信頼できるかという面と、親族の1人の成功をみんなで分け合うという儒教的な考えもある」と付け加えた。

任正非氏は事あるごとに孟氏を含め親族の誰かがファーウェイのトップの座を継ぐことはないと強調してきた。

取材では十数人近くの社員に話を聞いたが、任一族が経営を握っていることに反発はみられなかった。ある社員は「報酬と配当が支払われている限り、トップの一族が何をしようが気にしない」と述べた。

(Sijia Jiang記者)

Reuters
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