大紀元時報

アングル:戦争か外交か、司令官殺害でイランが取り得る選択肢

2020年01月08日 11時58分
1月6日、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官が米国に殺害され、イラン指導部は報復を言明している。イラン政府の取り得る選択肢は次の通り。写真はテヘランで行われた司令官の葬儀に参列する市民(2020年 ロイター/Nazanin Tabatabaee/WANA)
1月6日、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官が米国に殺害され、イラン指導部は報復を言明している。イラン政府の取り得る選択肢は次の通り。写真はテヘランで行われた司令官の葬儀に参列する市民(2020年 ロイター/Nazanin Tabatabaee/WANA)

[ドバイ 6日 ロイター] - イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官が米国に殺害され、イラン指導部は報復を言明している。イラン政府の取り得る選択肢は次の通り。

<軍事力>

イランの最高指導者ハメネイ師とトランプ米大統領はいずれも強硬発言をしているが、双方とも全面戦争への関心を示しているわけではない。とはいえ、軍事衝突の可能性は排除できない。

ハメネイ師が自制を呼び掛ければ、国内や周辺国の親イラン組織から弱腰と受け止められかねない。このため同氏は小規模な報復を選ぶかもしれない。

カーネギー国際平和財団のシニアフェロー、カリム・サジャドプール氏は、ハメネイ師は対応を慎重に検討しなければならないと指摘する。「弱腰では面目を失うリスクがあり、過剰反応は自分の首が飛ぶリスクがある」という。

米国防総省情報局は昨年12月の報告書で、イランの主要な軍事力として(1)弾道ミサイル計画(2)産油国地域であるペルシャ湾全域の船舶航行を脅かし得る海軍(3)シリアやイラク、レバノンなど周辺国の親イラン民兵組織──を挙げた。

イランによれば、ペルシャ湾岸の米軍基地をたたくことができ、仇敵イスラエルに到達できる精密誘導ミサイルや巡航ミサイル、ドローン兵器がある。

イランないし親イラン組織がペルシャ湾や紅海の石油タンカーを攻撃する可能性もある。こうした地域は石油の輸送ルートであり、スエズ運河を経由してインド洋と地中海を結ぶ交易のルートでもある。

<ホルムズ海峡封鎖>

軍事衝突ないし情勢緊迫化により、ホルムズ海峡を通る船舶の運航に支障を来す恐れがある。同海峡は世界で生産される石油の約2割が通過する。海峡を巡るいかなる混乱も石油価格の急騰につながりかねない。

ホルムズ海峡は一部がオマーン領海のため、法的にはイランは一方的な封鎖はできない。しかし船舶はイラン領海を通過するし、ここはイスラム革命防衛隊の海軍の管轄下にある。

イランは米国とその同盟国との対決にミサイルやドローンや機雷、高速船を使うこともできる。米軍当局者は、ホルムズ海峡が封鎖されれば「レッドライン(越えてはならない一線)」を越えたことになり、米国は封鎖解除のため行動に移ることになるとしている。

<非対称戦術と親イラン組織>

中東に駐留している米軍は危険にさらされる可能性がある。イランは自分たちより高性能な米国の兵器に対抗するため、いわゆる非対称的な戦術と親イラン組織に主に依存している。

イランは親イラン国家に兵器や専門技術を提供してきた。イエメンのフーシ派はサウジアラビアの空港爆破にイラン製のミサイルとドローンを使用した。

米国とサウジは昨年、ホルムズ海峡近くで石油タンカーを攻撃したのはイランだと非難するとともに、サウジの石油施設攻撃も背後にイランの存在があったと主張している。イランは否定している。

イラクの親イラン武装組織は米軍が駐留する基地を攻撃してきた。昨年6月には米軍の無人偵察機がイランの地対空ミサイルに撃墜され、あわや直接交戦の瀬戸際となった。

<タイミング>

アラブ湾岸諸国研究所(ワシントン)のシニアフェロー、アリ・アルフォネ氏は、イランが行動を急ぐとは考えにくいと指摘。「司令官が殺害された以上、反撃し報復する以外に選択肢はないが、イランは忍耐強い国だし、攻撃のタイミングと内容はわれわれにはまだ分からない」と話した。

<中東以外での影響力行使>

イランと親イラン国家が中東以外の地域で影響力を行使する可能性もある。

1994年にはレバノンを拠点とするシーア派過激組織ヒズボラ(神の党)のメンバーがアルゼンチン・ブエノスアイレスのユダヤ系協会本部ビルを爆破し、85人が死亡した。アルゼンチンはイランとヒズボラの攻撃だと非難したが、両者とも責任を否定した。

アルゼンチンでは92年にもブエノスアイレスのイスラエル大使館が攻撃され29人が死亡、アルゼンチンはヒズボラによる犯行と主張している。

カーネギー国際平和財団のサジャドプール氏は「よりありそうなのは、米国の権益と同盟国が地域的、世界的に親イラン組織からの攻撃対象になり続ける事態だ。イランには欧州やアフリカ、アジア、中南米でそうした攻撃を仕掛けてきた長い歴史がある。ただ、結果の成否はまちまちだった」と語った。

<外交的解決>

イラン指導部はこれまで、経済が米国による制裁で圧迫された局面などでは外交的解決の門戸を開いてきた。

中東の外交筋は「イランと米国は過去にアフガニスタンやイラクなどで協力してきた。共通の利益と共通の敵がある。軍事衝突は両国に高くつくが、外交は多くの問題を解決し得るし、それは一つの選択肢だ」と述べた。

米国は2018年に15年核合意から離脱した。イランは、米国がこの核合意に復帰し、全ての対イラン制裁を解除しなければ、いかなる対米交渉もあり得ないとしている。

一方ポンペオ米国務長官はソレイマニ司令官殺害後、米政府は緊張緩和に取り組んでいると述べた。

サジャドプール氏は「多くの人が第3次世界大戦を予言しているが、イランの過去40年の歴史は、同国に最重要なのは国家の存続だということが映し出されている。イラン政府は厄介な経済制裁や国内の騒乱に直面しながら米国と全面戦争する余裕はない。ソレイマニ司令官亡き今となってはなおさらだ」と話した。

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