アングル:中国大手行、新型コロナで資産劣化も 中小行厳しく

2020/04/05
更新: 2020/04/05

[北京/上海 30日 ロイター] – 中国の大手国有銀行は、新型コロナウイルス対策として導入された移動制限により、融資先が返済に苦慮しており、資産が劣化する恐れがあるとの見方を示した。

ただ、大手国有銀行は事業規模が大きく、資産が劣化しても対処でできるとみられている。

国有大手4行が発表した昨年第4・四半期決算は、市場予想を上回る利益を計上した。ただ財務基盤が弱く、優良な国有企業の取引先も少ない中小銀行は厳しい経営を迫られそうだ。

国有大手の中国工商銀行<601398.SS><1398.HK>、中国建設銀行<601939.SS><0939.HK>、中国交通銀行<601328.SS><3328.HK>は、資産の質の改善などを背景に2019年通期の利益が4%以上増加した。

ただ、複数の銀行幹部は、新型コロナの感染が長期化すれば、こうした改善傾向が途切れる可能性があると指摘。不良債権が増加し、純金利マージン(NIM)が縮小することも考えられると指摘した。

中国銀行<601988.SS><3988.HK>の幹部は決算発表後の会見で「第1・四半期と上半期は延滞債権が増えるだろう」と予想。同行の別の幹部は、影響は一時的で対処可能だろうとの認識を示した。

中国工商銀行の幹部も「(新型コロナの感染拡大が)資産の質に一定の圧力をかける見通し」とした上で、事業全体には自信を示した。

こうした自信の背景には、大手行の不良債権引当カバー率が高いことがある。中国工商銀行は昨年12月末時点で212.53%と、3カ月前の198.09%から上昇。中国建設銀行も218.28%から227.56%に上昇している。

また大手国有銀行は、不良債権処理などで政府の優遇措置の恩恵を受けている。融資先には、リスクが低く、景気低迷期でも利益を上げられる大手国有企業が多い。

一方、中小銀行は相対的に厳しい状況にある。昨年5月には内モンゴル自治区の包商銀行[BAOTO.UL]が政府に救済されたほか、11月には地方銀行で取り付け騒ぎも起きている。

TFセキュリティーズのアナリストは「新型コロナの感染拡大の結果、最良のシナリオでも不良債権は総額2500億元(352億3000万ドル)に達する」との見方を示した。

最も影響を受けるのは財務基盤の弱い中小行とみられる。

ギャブカル・ドラゴノミクスはリポートで「引当金が少なく、不良債権と延滞債権が多いというパターンは、農村商業銀行が資本不足に陥っていることを示している」と指摘した。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスは30日、新型コロナの感染拡大で特に大きな打撃を受けている製造・貿易企業に融資しているとして、南京銀行<601009.SS>、寧波銀行<002142.SZ>など6行の格付け見通しを「ネガティブ」に変更した。

中国当局は銀行に対し利益を犠牲にして企業を支援するよう呼びかけており、銀行関係者やアナリストによると、銀行のNIMの縮小は続く公算が大きい。

昨年末のNIMは、大手行ではまちまちとなり、中国交通銀行が3カ月前からやや上昇したのに対し、中国工商銀行と中国建設銀行は低下、中国銀行は横ばいだった。

 

(Cheng Leng、Engen Tham記者)

Reuters
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