アングル:タイの抗議活動、企業ボイコットも 政府寄り広告に批判

2020/09/01
更新: 2020/09/01

[バンコク 26日 ロイター] – タイで政府への抗議活動が大きな広がりを見せる中、米バーガーキングのフランチャイズ経営権を持つ現地企業マイナー・フード・グループは26日、活動参加者のボイコットキャンペーンに屈した最新のタイ企業になった。政府寄りと見なされるテレビ局での企業広告が批判されたのだ。

抗議活動はプラユット首相の辞任や新しい選挙を求める。一部の抗議参加者は長くタブーだった王室についても改革を求めている。

1カ月以上続く集会やデモは学生主導だが、そうした活動への支持者たちがネット上で、マイナー・フードの親会社マイナー・インターナショナルやその他の企業のボイコットを呼び掛け始めた。いずれも同国の保守系メディア、ネーション・マルチメディア・グループでの広告展開が問題視された。

マイナー・フードの広報担当者はネーションから広告を引き揚げると話した。声明では「弊社は顧客の考え方を受け入れており、適切なメディアの活用についてただちに検討に入る」とした。

一方で、ネーション・マルチメディアのシャイン・ブンナーン会長はロイターの取材に応じ、ボイコットが「ネット空間のチンピラ集団による社会的いじめだ」と憤った。

<窮地に追い込まれる企業>

政府への抗議活動はタイの大学キャンパスから拡大し、ソーシャルメディア上でとりわけ若者層から強い支持を獲得。その結果、企業に政治的難題が浮上している形だ。

米フェイスブック<FB.O>も26日、タイ政府側でないことを明確に示す行動に出た。王室を頻繁にあざけるグループにアクセスを阻むように要求されたことで、法的手段に乗り出すと表明した。

企業の評判リスクや政治リスクについて助言するマーベリック・コンサルティング・グループのBen Kiatkwankul氏はタイの状況についてロイターに「社会の政治的分断が企業活動にも浸透しつつある。企業をかなりの窮地に追い込んでいる」と指摘した。「ここではだれをも喜ばせることはほぼ不可能だ」という。

香港でも似たような状況はあった。民主化運動の参加者らに敵対的と見なされた企業や商店は、政府支持派の「青色」系と呼ばれ、ボイコットされた。これに対し、民主化運動の支持側はシンボルカラーの「黄色」系として区別された。

タイ全土ではこの約1カ月に街頭行動が数十回も繰り広げられたが、最大規模は16日にバンコクで行われた1万人以上の集会。ところが、ソーシャルメディア上で展開される支持活動はもっと広範に及ぶ。一部での抗議のハッシュタグは、数百万ものアカウントが使ったり共有したりしているからだ。

<ハッシュタグの威力>

先週末、ネーション・マルチメディア傘下ネーションテレビへのボイコットをネット上で呼び掛けるタイ語のハッシュタグがトレンド化し始めた。きっかけは、同テレビの女性リポーターが会社名を明かさずに集会の参加者たちにインタビューしたことだった。

電子版英字紙も展開する同社は、リポーターがけん責処分になったと発表した。しかし、シャイン会長はロイターの電話取材に対し、そのリポーターは「暴徒におびえていた」と釈明し、その事態を非難した。「われわれは政府の声ではない。市民の側に立つメディアだ」と強調した上で、「われわれの行動規範は明白。国家、宗教、王室。あくまで王室だ」と言明した。

シャイン氏によれば、今回のリポーターの一件の間にネーションテレビの視聴率は最大20%上がり、一部のスポンサー企業は広告枠を増やしたという。同氏はネット上のボイコット運動を「卑劣で非民主的な社会的いじめ」と断罪し、「われわれはひるまない」とも言ってのけた。

一方で、ある学生活動家は、こうしたボイコットの狙いについて、ネーションの中立性を確実にすることだと説明した。この学生のボイコットハッシュタグが付いたツイートの一つは1000回以上リツイートされた。彼はロイターに「メディアに変化と改善を求める場合、われわれはそのスポンサー企業に圧力をかける必要がある」と語った。

今回のボイコット運動ではデリバリー・ヒーロー傘下の食事宅配会社フードパンダも標的になった。同社はネーションテレビでの広告を停止し、「マーケティングの方法を改善する」と発表した。「ビタミンウオーター」で知られる同国の清涼飲料会社も、広告停止と同様の釈明に至った。

(Chayut Setboonsarng記者、Panarat Thepgumpanat記者)

Reuters
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