自民総裁選3候補が所信演説、菅氏「デジタル庁新設・縦割り排す」

2020/09/08
更新: 2020/09/08

[東京 8日 ロイター] – 安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選が8日午前に告示され、立候補を届け出た石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長が所見発表演説会を開き、新型コロナウイルス対策や経済政策などを訴えた。菅氏は安倍首相の継承を明言するとともに、デジタル庁新設など行政の縦割り廃止を強調した。石破氏は政治の信頼回復が急務と強調。岸田氏はアベノミクスに代わる持続可能な新しい資本主義を提唱した。

<縦割り打破「全身全霊」─菅氏>

菅氏は「安倍首相の取り組みを継承し前に進めたい」と述べ、現政権の継承者である点を強調しつつ、「行政の縦割りを排し、既得権益や前例主義を排し、規制改革に全身全霊で取り組む」と述べた。アベノミクスで不十分とされてきた「第3の矢」、規制改革・成長戦略への言及が多かった。「デジタル庁を新設し、複数の省にまたがる政策を強力する進める」と述べ、「脱炭素社会を実現し、エネルギーの安定供給にも取り組む」と強調した。

新型コロナ対策では「来年前半までに全国民に配付できるようワクチンを確保」するほか、「観光でダメージ受けた人への支援は、今後も躊躇なく対策を講じる」と指摘。過度の中国依存の課題が明らかになったサプライチェーンについても「改革など必要な投資行い、再び力強い経済成長実現する」と述べた。

憲法改正に関しては「与野党の枠を超え、しっかり議論し挑戦していきたい」と語った。

また、出産希望者支援のために不妊治療に保険を適用する方針を示した。

<自民党の政策はあらゆる人に公平である必要─石破氏>

これに対して石破氏は、アベノミクスによる株高を念頭に「企業は株主のものだけでない、新しい里山資本主義を世界に発信する必要がある」と訴えた。

頻発する自然災害への対応としては「防災省を設置し、全国24時間365日同じ防災対応を可能とする体制が必要」と強調した。

加えて石破氏は、戦前斉藤隆夫議員が行った反軍演説などを引き合いに「有権者に正しい情報が与えられないと民主主義は機能しない」と強調し、安倍政権下の政治とメディアの在り方に再考を促した。「自民党の政策はあらゆる人に公平でなければならない」と述べ、森友学園・加計学園に関する疑惑など、行政私物化懸念に警鐘を鳴らした。

<財政・金融以外のエンジンで持続性確保─岸田氏>

岸田氏は、安倍政権の外交・経済実績を高く評価しつつアベノミクスの課題を強調した。新型コロナによる経済低迷を背景に「金利をなかなか上げることできない現状では、必要なら思い切った財政措置も必要」としつつも、「財政・金融以外の成長戦略のエンジンをふかさないと持続可能性を維持できない」と指摘。「世界的にも持続可能な開発目標(SDGs)、環境・社会に配慮したESGなどが注目されている」と述べた。

足元の日経平均株価は2万3000円台を維持しているが、新型コロナの影響で8─9割の所得を失った人がいるという例を取り上げ、「政治は格差問題に真剣に向き合う必要がある」と強調。経済活動再開のためのPCR検査拡充や、官民挙げてのデジタル化や「データ庁」設立などにも言及した。外交では日米・日中関係がともに重要としつつ、自由と民主主義共有する国々とのマルチ外交が重要と述べた。

3氏は午後3時から共同会見に臨んでいる。9日も党主催討論会、12日には日本記者クラブ主催公開討論会が開かれる。投開票は14日。16日には臨時国会が召集され首班指名選挙が実施される。

(竹本能文 久保信博 編集:田中志保)

Reuters
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