大紀元時報

アングル:五輪開催の現実味、菅政権で強まる流れ 無観客案も

2020年10月09日 16時13分
10月8日 経済回復を重視する菅義偉政権の誕生以降、東京オリンピック・パラリンピックを巡る流れが開催の方向へと傾きつつある。写真は8月6日、東京・台場で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
10月8日 経済回復を重視する菅義偉政権の誕生以降、東京オリンピック・パラリンピックを巡る流れが開催の方向へと傾きつつある。写真は8月6日、東京・台場で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

竹本能文 梶本哲史

[東京 8日 ロイター] - 経済回復を重視する菅義偉政権の誕生以降、東京オリンピック・パラリンピックを巡る流れが開催の方向へと傾きつつある。大会はすでに簡素化することが決定しており、焦点は観客動員をどうするかに移る。新型コロナウイルスの世界的な感染状況は予断を許さない状況だが、どんな形であれ開催を目指す菅首相のもと、無観客での開催案も選択肢として浮上している。

   

    <「完全な形」からの解放>

    日本でコロナの感染が再び拡大し、安倍晋三政権が末期を迎えていた今年7月、五輪に対する国内の関心は大きく低下していた。NHKと共同通信が同月中旬に実施した世論調査では、いずれも6ー7割が再延期あるいは中止すべきと回答。来夏の五輪開催は困難との見方が大勢だった。

    それが9月中旬に菅氏が首相に就任してからというもの、潮目が変わったと、政府や自民党、大会組織委員会の関係者は指摘する。政府はコロナ感染を防ぐための制限を次々と緩和。経済活動の再開に向けた動きが加速し、五輪開催に向けた機運も急速に盛り上がっている。

   安倍前首相も五輪開催を目指してきたものの、「完全な形で実現する」と明言したことが日本の関係者の手足を縛ってきたきらいがある。首相が菅氏に変わったことでさまざまな選択肢を提示しやすくなったと、菅首相と頻繁に会う財務省幹部は話す。「大きいのは『完全な形』じゃないということ。その代わり、絶対やるぞという感じになっている」という。

    政府は感染のピークは越えたとし、観光支援策の「GoToキャンペーン」に東京を追加することを決定。プロ野球などイベント開催時の人数制限を緩和、さらには海外との往来を再開し始めた。

国内における感染が落ち着いてきたこと、国際オリンピック委員会(IOC)が開催の意思を明確に示し始めたことが、日本側の背中を押していると、自民党の関係者は指摘する。

日本では今もコロナの新規感染者が1日当たり600人程度確認されているが、ピークだった8月の4割弱まで減少した。一方、人口が3倍の米国はピーク時の6割まで減ってはいるものの、なお1日約4万5000人が感染している。

「ある程度の自信を持って、感染拡大を一定程度コントロールしながら経済を回していく。二律背反ではなく、両立できるという実績と自信の下に舵を切っている」と、安倍政権下で文部科学相を務めた自民党の柴山昌彦・自民党幹事長代理は言う。「その延長線上がオリンピック開催だと思う」と柴山氏は話す。

IOCと日本の大会組織委員会は9月下旬、大会の簡素化案をまとめた。延期に伴って膨らむ経費を削減するとともに、コロナ禍中の開催に備えるもので、約5万人とされる選手以外の関係者を最大15%減らすことなどで合意した。

   

    <テレビ放映の重要性>

    今後の焦点になるのが、観客の動員だ。大会のコロナ対策を議論する政府、東京都、組織委員会などによる会合はこれまでに2回開かれており、5回目で観客の感染対策をどうするか検討する。日本オリンピック委員会(JOC)の武藤敏郎事務局長はメディアのインタビューなどで、観客を絞る可能性を示唆している。

武藤氏は7日、IOC理事会後に開いた会見で「アスリート以外にいろいろな関係する方が東京に来ようということになるが、本当にそこまで大勢の人が来ないとできないものなのだろうか」と発言。「人数というのは、あらゆるところのコストに関係するので、そういう問題を(理事会で)提起した」と語った。IOC理事会で賛同を得たという。

一方、バッハ会長は理事会の中で、現状は日本国外から観客が来る前提で準備を進めていると説明。「ここ数週間、日本国内でいくつかのスポーツが多くの観客を動員していることはとても励みになる」と語った。

    五輪の準備に関わる政府関係者は、競技ごとにどこまで観客を減らすか、11月には議論することになると説明する。「テレビ放映できることが重要で、観客はゼロで問題ないと思う」と同関係者は語る。観客削減の場合、観客ゼロの場合ともに「チケットはとりあえず全額払い戻しになるだろう」という。

    菅首相が力を入れるインバウンドによる経済効果は薄れるが、開催することが最優先だと同関係者は話す。菅首相は9月26日の国連演説で、「来年の夏、人類が疫病に打ち勝った証しとして東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催する決意だ」と表明している。

    コロナは全世界が関わる問題であり、今も1日30万人のペースで感染者が増加している。日本国内の感染状況だけでは決められない。日本も経済活動の制限を緩めた結果が現れてくるのはこれからだ。

    それでも国連総会の場で約束したことは重いと、大会関係者は指摘する。「菅さんは国連で『必ずやる』と言ってしまった。それはつまり、やらざるを得ないということ」と五輪の準備に関わる前出の政府関係者は語る。

渡航制限がかかったままの国のアスリートは特例で来日を認める一方、観客の入国は認めないようにする案などがあるという。

    観客を減らしたとしても、「コロナ禍だからこそ、経済的に五輪を開催する意味がある」とこの関係者は話している。

(竹本能文、梶本哲史 編集:久保信博 山口貴也)

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