大紀元時報

「日中友好」の名の下で 日本学術会議から派生した日中交流組織、核エネルギー開発に協力

2020年10月16日 22時00分
2020年1月、北京の地下鉄駅構内にある広告前に立つ警官(GettyImages)
2020年1月、北京の地下鉄駅構内にある広告前に立つ警官(GettyImages)

共産党体制の国家による核の技術利用は、常に不安視されている。日本は「日中友好」の名の下に、半世紀に渡って中国のさまざまな技術の開発に協力してきた。このなかには、核エネルギー開発も含まれている。

政府が日本学術会議の新会員候補6人を任命しなかった事案をめぐり、共産党機関紙・しんぶん赤旗を含む一部の日本マスメディアによる管政権に対する批判的な報道が続いている。同時に、学術会議のこれまでの言論や姿勢にもスポットがあてられている。

日本学術会議は創設以来、中国に傾斜している。「戦争科学に絶対に関わらない」とする最初の声明から5年後の1955年、中国科学院から訪日団を迎え入れ、翌56年には訪中団を派遣した。その訪中団の参加者の一人で、日本学術会議会長や東京大学総長を歴任した茅誠司氏は、日中友好協会とともに1977年、「日中科学技術交流協会」を設立した。

日中科学技術交流協会は「科学・技術者の交流を通じて日中友好親善に資する」ことを図ると設立の趣旨としている。また、科学・技術者の訪中訪日事業を行い、中国人留学生を迎えるなどして、「情報提供・紹介・推薦・斡旋などの支援」を行っている。

日中科学技術交流協会は1980年代には会員を400人以上、賛助企業は140社に上るも、近年は会員の高齢化と新規会員が増えないことで、2019年には役員13人、会員55人、賛助企業は2社にまで衰退した。しかし、役員は清華大学招聘教授や、中国科学院金属研究所(瀋陽)など中国学術機関に身を置く日本の知識層が名を連ねる。

「華龍1」核エネルギー開発に寄与する日中科学技術交流協会

 

日本と中国の原子力技術の協力の歴史は、80年代に始まっている。日本原子力協会が中心となって、核兵器国である中国に対して「国際協力を通じて核不拡散体制への理解を働きかけ」「平和利用分野における協力」のために、1985年、両国政府は日中原子力協力協定を締結している。

この日中原子力協力協定に基づき、日中科学技術交流協会は1994年から現在まで、核エネルギー、核分裂、核融合の研究協力をしている。このことは、2019年10月18日に発表した、日中技術者交流に関する講演資料で説明されている。

さらに、中国原発最大手・中国広核集団が「独自開発」したと主張する第3世代原子炉「華龍1」については、日中科学技術交流協会は原子力発電の技術発展に協力と明記している。日本側の協力について、中国側はほとんど伝えていない。大紀元は同会に問い合わせたが、記事発表までに回答は得られていない。

中国広核集団が建設した原子力発電所は22基におよび、生み出す発電容量は24.3GWと世界第3位である。現行の建設計画ベースならば、2030年ごろにも米国を抜き、世界一の原発大国となる見通しだ。

しかし、中国共産党体制により扱われる核エネルギー技術について、安全保障専門家からは問題視する声があがる。

日本の政策シンクタンク・日本国際問題研究所が2016年にまとめた『日本の資源外交とエネルギー協力』で、一橋大学の秋山信将氏は、「中国やロシアは国家主導型のビジネスを展開し、そこに彼らの安全保障的視点からの利害を絡めている。これらの国が、原子力安全や核セキュリティ、核不拡散という面で、受け入れ国側のキャパシティをどの程度考え、また、その育成に関与していくのか懸念が持たれる」と書いている。

米ワシントン拠点のシンクタンク、アメリカン・カウンシル・フォー・キャピタル・フォーメーションは2017年1月、『中国の民生用原子力計画の台頭と米国の国益への影響』と題した報告書を発表。このなかで、「中国は原子力技術移転に関する国際条約や協定に参加しているが、中国の企業や個人は、常に規則を遵守しているわけではない」とコンプライアンス問題を指摘している。

さらに、「原子力技術が非民間の秘密作戦に使用される可能性」もあるとし、「中国の核技術開発市場がグローバル化すれば、イラン、北朝鮮、パキスタンなどの懸念国に暗幕の元で技術が渡る恐れがある」と書いている。

シンガポール国立大学エネルギー研究所のフィリップ・アンドリューズ=スピード氏は、2020年3月、中国における原子力のガバナンスに関する論文で「中国の重工業の安全性の低さ、深刻な事故を防止するための能力に問題がある」と指摘している。具体的には、原子力エネルギーの安全とこれを管理する法律の一貫性のないこと、また、原子力損害賠償責任を管理するための明確な法的根拠がないことなどをあげている。

「軍民融合」を懸念 米トランプ政権は中国原発大手を禁輸リスト入り

こうした中国の原子力エネルギーの利用についての懸念に対応したのは、近年の米トランプ政権である。米国は2019年8月、「華龍1」を製造した中国広核集団とその関連会社を、実際的な禁輸リスト(エンティティリスト)に追加した。中国広核集団はすでに以前から、米エネルギー省により技術の窃盗容疑で訴追されている。

米国内メディアによると、禁輸リスト入りは、中国共産党の軍民融合政策への対応とみられている。また、原子力空母、小型のモジュール原子炉、南シナ海に配置可能な浮上式原子力発電所の建設などへの関与についての懸念を背景にしていると報じている。

日本原子力協会によれば、中国広核集団は、米国の禁輸リスト入りが決まる数カ月前の4月、視察団が訪日し、日本の技術者と直接交流を行なっている。

中国共産党は「科学の発展は生命線」と位置付けて、体制開始時から先進技術の開発に多く国力を注いできた。近年では、軍事強国を目指し、民間技術を軍事利用に取り込む「軍民融合」政策を2017年に発表。習近平主席が中央軍民融合発展委員会の主任として政策を主導している。

防衛省は、令和元年(2019年)防衛白書のなかで軍民融合について特記している。中国軍が入手した先進技術は「生産段階から徴用を念頭に置いた民生品の標準化を行うことで効果的な徴用が可能となる」として、軍民融合が中国軍の作戦遂行能力の向上につながると書いている。

中国共産党の軍事発展に詳しい、米海軍大学の吉原恒淑・助教授は、8月4日のオンラインセミナーで、海外に設置された中国「友好協会」のメンバーは、中国共産党の高官と定期的に接触していると述べた。また、協会は親中派の現地有力者を集めるためのプラットフォームになっているという。「友好協会は、統一戦線部から工作の指導を受けているとの証拠もある」と説明した。

中国共産党による大学、企業、研究所による民間技術の利用は、軍人と非軍人の境界を曖昧化させる新しい戦争スタイル「超限戦」のひとつでもある。超限戦理論を考案した空軍将校2人は、「軍服を着用しない多数の非軍人が超限戦のカギだ」と説いている。

日中科学技術交流協会が設立された1970年代当時、発展途上国である中国に対して、先進国の日本が技術協力することは両国から歓迎された。しかし、半世紀を経た今、米国と対峙するレベルに国力をつけた共産党体制の中国は、核エネルギーを含め、先進技術と軍事力を使い、日本を取り巻く安全保障環境を強引な手法で変化させようとしている。

じっさい、河野太郎防衛相(当時)は9月、米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)の9月のオンライン討論で、中国について「日本にとって安全保障上の脅威」と明言している。

英国や米国当局はすでに、国内の学術・技術組織が中国と協力協定を結ぶ場合、透明性への審査強化、ルール遵守の厳格な要求を図っている。日本当局も、在日の「友好団体」や中国の技術研究組織と関わる日本の学術機関に対して、安全保障上のリスクの観点から、関係を見直す必要があるのではないだろうか。

(文・佐渡道世)

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