アングル:大統領選後の暴力騒動を警戒、「自警」する米国民

2020/10/13
更新: 2020/10/13

[9日 ロイター] – 一部の米国民は11月3日の大統領選後に暴力沙汰が起きることを懸念し、自分たちの地域社会で騒乱を監視するグループづくりに動いている。一方で、衝突の緩和を働き掛けようとする米国民もいる。銃を購入している人たちもいる。ロイターが有権者二十数人やオンライン上のグループやデータを調査したところ、こうした状況が浮かび上がった。

共通して懸念されているのは、トランプ大統領とバイデン前副大統領の両候補者の勝敗が決まらないままとなり、これが抗議活動につながり、社会騒乱や党派での衝突にエスカレートする可能性だ。

ミシガン州の8日のニュースはこうした懸念を強めることになった。州知事の拉致と州議事堂襲撃を企てたとして13人の逮捕が発表されたのだ。

ノースカロライナ州ローリーの金融アドバイザー、デービッド・ポウエルさん(64)のような米国民にとって、一番の心配は公民権や個人の財産、さらには生命をも守るために、いずれかの側に付かざるを得なくなるような事態だ。

「自分はどんなグループにも属さないし、属したいとも思わない。ニュースを見たりして心配している普通の市民だ」と語るポウエルさん。米国の保守派が左翼の反ファシスト活動を表現するときに用いる「アンティファ犯罪者ども」という言葉を使い、そうした動きに懸念を示す。必要な場合は自分の地元を「見張る」準備もしているという。

投票日の前後に海外での休暇を計画している人たちや、地方の静養地に避難するという人たちもいる。自衛用に銃を買った人々もいる。連邦捜査局(FBI)のデータによると、米国の銃火器販売は6月に390万件と、月間では過去最多になった。「AR-15」のようなライフルの弾丸はワシントン州やコロラド州などでは入荷待ちになっている。

コロラド州デンバーの弁護士は取材に対し、名前を出すならフルネームでなく「ユーイング」とだけにするよう要請した上で、「AK-47ライフルを買った」と話す。「この弾丸は値段が高くないし、まだ手に入れられる」と説明する。

自分たちの地元で銃火器を所有したり使う用意をしたりしている人たちが多いことを認識し、緊張を緩和しようとしている地域やグループもある。

オレゴン州ポートランドの左派活動家で、黒人の権利擁護グループを主宰するドレ・ミラーさん(37)は、右翼集団「プラウド・ボーイズ」の指導者らに連絡を取り、衝突を解決するための対話ツールの立ち上げを働き掛けた。「われわれは事態が手に負えなくなるときに休戦を呼び掛けられるようにしておく必要がある」と指摘。「私は一人の黒人として、身を引いていることはできない。立ち上がって待機する」と述べた。この言い回しは、トランプ大統領が大統領選候補者討論会で、「プラウド・ボーイズ」について語ったのをもじったものだ。

国土安全保障省の10月6日のリポートは、米国が直面している「テロリストの脅威」の最たるものは、不満を実行に移そうとする単独行動の攻撃者と、小さな国内の過激グループだと特定している。

シンクタンク「ニューアメリカ」の政治学者リー・ドラットマン氏らが今月、ポリティコで発表した10月の世論調査では、米国民の約3分の1が政治的な目標を進めるためなら暴力を正当化するとしていることが分かった。これは昨年12月の調査に比べると約2倍だ。ドラットマン氏は「最も起こり得るシナリオは、選挙での大規模な騒乱ではない。深刻だが低いレベルでの騒乱リスクがいつになく高まっている」と語る。

<フェイスブックで監視>

自警団をつくろうとする人々は組織化にフェイスブックなどのグループ機能を使っている。メンバーはそこで政治的な反対勢力による暴力沙汰や財産損壊の動画を共有する。そこには誤情報も含まれる。

フェイスブックは8月、暴力を賞賛する武装市民グループを排除するようルールを強化し、翌月にかけて6500のページとグループを削除した。ただ武装化がそれほどあからさまでない集団の数十万人はまだオンライン上に残っている。

ハーバード大学の誤情報の専門家、ジョアン・ドノバン氏はそうしたオンラインプラットフォームが「武装する集団や個人を刺激し、活動に突き動かす。全面的な社会変革のこの瞬間に自分たちには果たす役割があると考えさせるきっかけになる」と指摘する。

コロラドスプリングスの自営業、マイケル・モリンさん(51)は共和党支持で銃保有者。今回、自衛のための訓練コースを受けた。地元で互いの家を守り、左派の「ならず者連中」に、ここでは歓迎されていないとのメッセージを送るため、近所の保守的な住民と組織を作ろうとしている。「自衛するためにやることはたくさんある。銃のほかにも連中を押し返すためにやる事はある」と話した。

フロリダ州オーランドのステファニー・ポルタさん(41)は人々に、大統領選の結果は当日には出ない可能性が高いが、パニックにならないようにと説いている。彼女はもし衝突が起きる場合はこれを緩和するよう、投票所の担当者や投票監視人らに説明している。「われわれは人々が緊張緩和に動くよう指導している」と話すポルタさんは、社会活動グループ「オーガナイズ・フロリダ」の代表。自分を「反ファシスト」と位置付けている。

(Andrew Hay記者 Katie Paul記者)

10月9日、一部の米国民は11月3日の大統領選後に暴力沙汰が起きることを懸念し、自分たちの地域社会で騒乱を監視するグループづくりに動いている。写真は8g圧、米バージニア州で、期日前投票の会場に並ぶ人々(2020年 ロイター/Al Drago)
Reuters
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