法人税の国際最低税率、15%下限を米が提案 当初案21%から譲歩

2021/05/21
更新: 2021/05/21

[ワシントン 20日 ロイター] – 米財務省は20日、法人税の国際的な最低税率について、経済協力開発機構(OECD)の会合で15%を下限とすることを提案したと発表した。当初呼び掛けていた21%から水準を引き下げた。

発表によると、財務省は税源浸食と利益移転に関するOECD税制運営グループの会合で「国際的な最低税率を低くても15%とする」ことを提案した上で、「15%は下限であり、野心的な議論を通じてこの水準を引き上げていくべきだと強調」したという。

同グループは、多国籍企業や米アルファベット、フェイスブックなどIT(情報技術)大手への課税規則の見直しで、今夏の大筋合意を目指している。

イエレン財務長官は4月、バイデン大統領による2兆2000億ドル規模のインフラ投資計画の一環として、21%の国際最低法人税率を提案した。同インフラ計画は、米法人税率の21%から28%への引き上げを財源の柱としている。

トランプ前政権は2017年に法人税率を35%から21%に引き下げるとともに、租税回避地(タックスヘイブン)への税収の流出を回避するため、米企業のオフショア子会社にミニマム税を導入。この「米国外軽課税無形資産所得(GILTI)合算課税」の税率は10.5%となっている。

バイデン政権はこれを21%に引き上げることを目指しており、OECDではこの目標水準が協議の出発点になるとみられていた。フランスやドイツなどは21%の国際最低税率を目指す米国の提案に支持を表明していたが、他国からは高過ぎるとの意見が出ていた。

最低税率に関するOECDの過去の議論では、アイルランドの法人税率と同水準の12.5%を中心に話し合われてきた。

財務省の当局者は、バイデン政権は引き続き15%を下限とし、可能な限り高い水準の国際最低税率を支持していくとし、今回の提案は米ミニマム税率を21%にする案を変更するものではないと述べた。

また現在、国際最低税率が存在しないことから、15%であっても米国との税率の差は大幅に縮小するとの見解を示した。

KPMGの米国税関連責任者で、元財務省当局者のマナル・コーウィン氏は「15%の税率は、他国の状況を踏まえると確かにより現実的だ」と指摘。

「重要なのは米国がGILTIに関して、提案している税率よりもかなり低い国際最低税率の受け入れに前向きな姿勢を示していることだ。これはOECDで合意に達するために重要とみられる」と語った。

Reuters
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