米、アフガン退去に固い決意 タリバンは国外脱出求める市民阻止

2021/08/23
更新: 2021/08/23

[カブール/ワシントン 22日 ロイター] – バイデン米大統領は22日、イスラム主義組織タリバンが掌握したアフガニスタンからの米国人などの国外退去に「揺るぎない決意」で臨んでいると表明した。首都カブールの空港周辺ではタリバンの戦闘員が国外脱出を求める市民の動きを制するなど混乱が収まっていない。

バイデン氏は、アフガンの治安状況は激変しており、過激派組織「イスラム国」のアフガン部隊(ISIS─K)がもたらす脅威も米政権は明確に認識していると述べた。

現地の目撃者によると、カブールの空港周辺ではタリバンが空に向けて発砲したり、警棒を用いて強制的に人々を整列させた。英国防省は、国外脱出を求め多数の人が殺到している空港周辺の衝突で21日にアフガン人7人が死亡したと明らかにした。英スカイニュースは、兵士らが衝突の現場から負傷者の救出を試み、脱水を防ぐために人々に向かって放水している映像を報じた。

北大西洋条約機構(NATO)の当局者によると、過去7日間に空港の中と周辺で少なくとも20人が死亡。目撃者によると、人々が押し寄せる中で死亡した人や、射殺された犠牲者も含まれる。

バイデン氏は「カブールから何千人も退避させるのは困難で痛みを伴うだろう」と述べ、国外退去をいつ開始したとしてもそうなるのが必然だったと続けた。「まだ長い道のりが待ち受けており、多くのことが誤った方向に進む可能性はなおある」と語った。

その上で、「改めて言うが、帰国を望む米国人全員を帰国させる」と強調した。また、西側諸国に協力したアフガン人のほか、女性の活動家やジャーナリストといった弱い立場の人々も支援すると述べた。

22日も空港では武装集団が国外脱出のために群がる市民を押し戻そうとしたが、目撃者によると、目立った負傷者は出ていない。バイデン氏は、カブール空港周辺の防御線を広げたとし、タリバンもこの取り組みに協力していると明らかにした。

バイデン氏は、米国人などの退避のために8月31日の米軍撤退期限を延長する可能性について問われると、その必要がないことを望んでいるが、進捗状況について協議が行われるだろうと述べた。

<民間空港機も活用>

一方、米国防総省は22日、アフガニスタンから退避した人々の輸送を支援するため民間航空機を活用する考えを示した。ユナイテッド航空、アメリカン航空、デルタ航空などの18機を活用する。

主要7カ国(G7)の議長国を務める英国のジョンソン首相は22日、アフガン情勢を巡り24日にオンライン形式で首脳会議を開催すると表明した。ツイッターで「安全な退避を確保するとともに、人道危機を回避し、アフガンの人々が過去20年間の前進を維持できるよう国際社会が協力することが不可欠だ」と訴えた。

関係筋によると、英国はG7首脳会議で、タリバンに対する新たな制裁の検討を求める見通し。

タリバンの指導部はカブール制圧以降、融和姿勢を演出しており、政府発足に向けた協議を開始した。

反タリバン勢力の指導者で、2001年に過激派組織アルカイダによって暗殺されたアフガンの国民的英雄マスード司令官の息子、アフマド・マスード氏は22日、タリバンと平和的に交渉することを望んでいるが、自身が率いる勢力は戦闘の用意もあると述べた。

一方、タリバンの幹部は「外国軍部隊の出口戦略について完全な説明を求めている」と述べた。

タリバン政治局のナイーム広報官はサウジアラビアのテレビ局に対し、米国やその他の国々と協議が進められていると述べるとともに、アルカイダはアフガニスタンで活動しておらず、タリバンと関係はないと語った。

Reuters
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