北朝鮮による恫喝 ひとつの交渉テクニック=アナリスト

2021/10/04
更新: 2021/10/04

北朝鮮の金正恩最高指導者は過去1ヶ月間恫喝を繰り返していたが、その行動は彼の交渉テクニックの最新の方策過ぎない可能性が高いとアナリスト達は主張している。

金最高指導者は国際的な経済制裁からの救済と核兵器の保持を一番に求めており、それらが交渉のための切り札であると思っているだろうとアナリストらは述べている。 

報道機関及び安全保障機関の報告によると、金最高指導者の最新の恫喝には核爆弾用の兵器級プルトニウムの生産の再開、9月11日と12日に実行された1500キロメートルを飛行した新型長距離巡航ミサイルの実験、そして9月16日に実行された列車から発射された原爆弾頭を搭載できるミサイルの実験など含まれる。

 NBCニュースによると、最も懸念される恫喝は2021年9月15日に発生した北朝鮮による日本海への2発の短距離弾道ミサイルの発射である。 

日本の菅義偉首相はミサイル発射を「言語道断」と非難し、地域の「平和と安全を脅かすもの」であると述べた。CNBCによると、「国連安保理決議にも違反しており、厳重に抗議するとともに強く非難します。米国や韓国を始め、関係国と緊密に連携し、国民の皆さんの命と平和な暮らし、断固として守り抜いていきます」と菅首相は述べた。 

米インド太平洋軍(USINDOPACOM)は北朝鮮の行動は地域内外にとって危険であるとし、同盟国や提携国と協力して状況を継続的に監視することを約束した。 9月15日の弾道ミサイル実験まで、北朝鮮は3年以上にわたって自ら課した核爆弾および長距離ミサイルの実験の中止を守ってきた。金最高指導者は2019年初頭に開催されたドナルド・トランプ米大統領(当時)との首脳会談で朝鮮半島の非核化に向けて協力することで合意したが、同年にベトナムのハノイで開催された第2回首脳会談が突然終了して以来、交渉は進展していないとロイター通信は報じている。

ここ数ヵ月、北朝鮮と韓国の外交交渉も停滞している。 韓国ソウルにある梨花女子大学国際学部のレイフ=エリック・イーズリー(Leif-Eric Easley)准教授は、金最高指導者の最新の実験活動は主に「軍事力の開発を目的としているが、国内の団結を強化する試みでもある」とAP通信社に語った。

「北朝鮮政府は自身の弱点を隠して外部からの譲歩を引き出そうとするために絶望的な経済的必要性に直面している場合でも挑発を開始する可能性があります。」 ラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、人々が飢えている時にミサイル実験やパレードなどの国防力誇示に予算を費やすことで国内の不満を買っている。 

北朝鮮の咸鏡(Hamhung)の住民は、「この経済危機のせいで我々の多くが餓死していることを知らないかのように当局がこのようなことをするので国民は反感を抱いている」とRFAに述べている。さらに、軍が兵士に食料を供給できなければミサイルは何の役にも立たないとも述べている。 

金最高指導者は援助確保のためにミサイル発射や恫喝を利用しているのかもしれない。 

2021年2月に発表されたブルッキングス研究所(Brookings Institution)の「北朝鮮の経済危機:非核化の最後のチャンス?(North Korea’s economic crisis: Last chance for denuclearization?)」と題された報告書によると、「金正恩自身も認めているように、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック、自ら課した隔離とロックダウン、作物の不作、制裁などにより経済は窮地に陥った。国家計画のメカニズムが崩壊し、外国為替の保有量が減少し、国家の収益が縮小し、外国貿易の量が減少し、成長が下落している」と述べている。 

これらの試験は東京およびソウルで行われた中国、日本、韓国および米国のさまざまな組み合わせの当局者たちによる北朝鮮に関する一連の会議から数週間以内に行われた。

韓国の聯合ニュースが報じたところによると、米国の北朝鮮担当特別代表であるソン・キム氏は日本と韓国の当局者との協議の後、米国は「非核化の進展に関わらず」人道的懸念について北朝鮮政府と協力する意思があると述べた。 

梨花女子大学(Ewha Womans University)で北朝鮮を研究している朴元坤(Park Won-gon)教授は、「事態の進展をさらに注視しているが、(北朝鮮の)瀬戸際外交の新しい段階に近づいている可能性がある」とAP通信に述べた。 

その間も米国および同盟・提携諸国は軍事的な優位性で北朝鮮に対峙する準備を整えている。USINDOPACOMは北朝鮮の長距離ミサイル実験後の声明で、「米国の韓国と日本の防衛に対するコミットメントは依然として盤石である」と述べている。

米軍は韓国と日本の全域で約8万人の兵力を保持している。 聯合ニュースによると、北朝鮮の弾道ミサイル実験から数時間後に韓国は独自の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射実験を成功させ、この技術を作り上げた7番目の国となった。これは北朝鮮が保有していることを主張しているが、アナリスト等によると実現していないであろう能力である。

  韓国の文在寅(Moon Jae-in)大統領は、「SLBMを保有することはあらゆる方面からの脅威に対する抑止力を確保するという点で非常に有意義であり、今後の自立的な国防と朝鮮半島の平和の確立に大きな役割を果たすことが期待されている」と述べている。

   大統領府によると、韓国国防総省は戦闘機用の兵器として不可欠な空中ミサイル発射技術の開発と実験にも成功した。  

 一方、オーストラリアは米英との新たなパートナーシップ協定の一環として原子力潜水艦を購入することで同地域における抑止力を強化する。   

(Indo-Pacific Defence Forum)

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