ソウルのハン川のほとりのベンチに座る男女、2021年7月撮影(Photo credit should read ED JONES/AFP via Getty Images)
【米国思想リーダー】

特権的な地位のはずが…米大学キャンパスに「恨み」はびこる=脱北者パク・ヨンミさんインタビュー(6/6)

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強い言論統制と連帯責任による労働所や処刑がまかり通る北朝鮮。93年の飢饉の時代に生まれたパク・ヨンミさんは凍てついた川を渡り中国へ渡った。さらにそこでも奴隷制度に直面し、宣教師の教えを元にゴビ砂漠を越え、韓国に到着することに成功した。米国留学を通じて、米国社会における共産主義にも衝撃を受けたという。

自由とは何か

過酷さを経験し尽くしたヨンミさんは、自由にどうやって気づいたのか。

15歳の時です。中国にいた時に自由について聞きました。脱北者の女性が、自由になれるから韓国に行こうと言いました。私は「自由って何だろう」と思いました。彼女は、韓国ではジーンズを履いてもいいし、韓流ドラマを見てもいいのよ、と教えてくれました。…ジーンズも履けるし、ドラマも見られるー。それならイチかバチか、やってみようと思ったのです。言論の自由とかそういうものではなく、ただ好きな服を着てもよいという自由が、私にとっての自由でした。

米国留学を経て、ヨンミさんは米国の大学における共産主義の浸透にショックを受けた。同時に、北朝鮮で苦痛のなかにある人々のために、その情報を発信していくことが彼らを救う方法につながると確信したという。

この偽りの時代において、真実を語ることは、唯一の勇気ある行動ではないでしょうか。私たちが生きている世界、そして今の米国は欺瞞に満ちています。あまりにも嘘が多いのです。真実を見つけるのはとても難しく、嘘がさらに困難にしています。多くの混沌が作り出され、人々は混乱しています。この時代、もし自分が真実を知っていると思うなら、それを伝えることが、世界をより良くできる唯一のことだと思います。単純なことですが、それに気づいたのは去年のことです。ですから、私はそのために人生を捧げているのです。

人類は幾多の歴史文明と文化を重ね今日がある。しかし、ヨンミさんによれば、北朝鮮には金日成以前の歴史がない。「アジア人」であると教えられず「金日成の民族」と教えられるのだという。つまり、歴史と現在とを断絶させている。ヨンミさんは、米国の教育で人種を超えた人類史や先人の哲学に触れた。

米国有数の教育機関である名門コロンビア大学に進学したヨンミさんだが、「価値ある授業はゼロ」と見做し、幻滅したという。これは、カナダの著名心理学者ジョーダン・ピーターソン氏によるインタビューのなかで明らかにした。北朝鮮から脱出した時、ヨンミさんは知識にも飢えていたという。北朝鮮は、飢えだけでなく人間性に触れることもシャットアウトされた世界だ。

米国に来て、ジェーン・オースティンや、シェイクスピアを読みました。米国に来て、人類の祖先との長い長い繋がりの中で、人間性を再発見できたことは、とても素晴らしいことでした。

いっぽう、コロンビア大学では、ジェーン・オースティンの教えは否定されていた。白人の植民地主義と、人種差別の時代に生きていたから、偏見があると大学教員はいう。「隠された抑圧を探す」として、授業では毎回、「米国の基盤は偏見」との結論が出されていたという。

憲法は偏見と人種差別、白人至上主義が根底にあると習います。そのためにできる唯一のことは、今あるものを全て破壊し、パラダイスを建設することだという、結論になります。この考えは、コロンビア大学に進学する全ての学生に植え付けられます。

進化論の授業でも同じです。ホモ・エレクトスとか、ホモ・ハビリスとかを授業で習いましたが、いずれにしろ最終的な結論は、「白人男性の攻撃性」でした。学術界がこのイデオロギーから離れられないのを見ると、心が痛みます。彼らの目的は真実を発見することではありません。「ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)」が重要なのです。これは西洋文明の自殺に等しいと思います。

金体制はイエスを模倣する

金体制はイエス・キリストを模倣しているといった指摘がある。実際、聖書のなかの言葉に似せた用語を使うことがあるという。

金氏は北朝鮮の人々に、自分たちが神であると、信じ込ませています。金日成と金正日は死んだが、彼らの精神は永遠に我々と共にあると。聖書を真似しています。イエス・キリストは亡くなりましたが、彼の命は永遠に我々と共にある、という教えです。金日成は我々を愛しているから息子をくれた、つまり金正日をくれたのだと言っています。そして金正日は死んだが、彼の精神はずっと我々のそばにいると。彼はあなたが何を考え、どれだけの髪があるかを、知っていると言われます。

嘘にまみれた閉鎖的な世界にいたヨンミさんは、嘘に敏感だ。人々に嘘を信じ込ませることは容易だという。集団的思考を維持して、個々の思考を抑制する。こうした統制はマルクス主義者らが用いてきたとヨンミさんは指摘する。「社会全体の利益のため」「共通の利益」の名目のもとに。

私たちは常に問い続け、批判的思考を持つことが重要です。集団思考から抜け出すのです。人間は合理的ではありません。もし人間が合理的ならば、なぜ毛沢東の政権下で、6千万人もの人々が殺されたのですか。人類は社会主義や共産主義と呼ばれる、この最も愚かなイデオロギーを多くの場所で何度も試してきました。試すたびに、多くの不幸をもたらしました。

ヨンミさんは、米国でも、この集団思考の台頭を目の当たりにしているという。考えに統一性を強要され、同意しなければ追放され、居場所を失うリスクがある。

特権的な地位のはずが…米国一流大学に恨みが流行

米国では批判的人種理論(クリティカル・レース・セオリー)と呼ばれる価値観が広がっている。これは、黒人法学者らにより、70年代に公民権運動のなかで生まれた。人種差別は人種を意識しなくなればなくなるとの考えをやめ、逆に人種意識を持つことで人種による階級差を超える、という理論という。これは、米国の法律や司法は白人至上主義に成り立っていると主張している。

かつては米国もアパルトヘイトなど隔離や差別、奴隷制度があり、黒人を差別していた。ヨンミさんは、これらは大変な過ちであるとしながらも、いまの白人が生まれながらにして罰せられる罪を負い償わなければいけない、という理論は非常に不公平だと指摘する。

例えば私の息子は、白人とのハーフです。彼は白人とのハーフであることを、望んだわけではありません。これは彼のせいでしょうか。「お前は特権を持っている」とか、「お前はこの血統だから罪人だ」など、人種だけを理由に糾弾されるなど最大の不公平です。人間の魂を破壊します。

ヨンミさんは、米国にこうした分断が進むことを危惧している。在学するコロンビア大学でもキャンパスは憎悪がよく見られるという。北朝鮮という世界で最も不遇な境地を知るヨンミさんにとって、米国という自由な世界にいる若者や教師が不満をいうことには違和感を覚えるという。

遠くからみていると、米国はやはり希望の国です。勇者の拠り所であり、長年に渡って正義を貫いてきました。この国には、自由と個人の自由に関して、並外れたモラルと勇気がありました。私は米国に感銘を受けましたが、実際に中身を見てみると、「こんなことが可能なのか」と困惑することもあります。米国にはとても慈悲深く、多くの恵みがあり、人々もそれを分かっていました。しかし今では苦しみと恨みがあふれています。

キャンパスは恨みで溢れています。彼らはマンハッタンの真ん中で、アイビーリーグの学校に通っているにも関わらず、恨み言が多いのです。ここで生きているということは、それだけで特権です。しかし彼らは、自分たちがいかに抑圧されているかと訴え、とても憤慨しています。私には理解できません。どうやって解決したらいいのか分からないほど、彼らは迷走しています。

(終わり)

(アメリカ思想リーダー「North Korean Defector Yeonmi Park on Communist Tyranny and ‘the Suicide of Western Civilization’」より)