やめられないロックダウン 迷走する中国の行方は

2022/04/24
更新: 2022/05/01

冷戦が終結した頃、「歴史の終わり」という学説が注目を浴びた。ソ連崩壊によって、最良の政治体制は民主主義であることが証明されたという主張である。繁栄と発展を望む国は、必然的に自由経済と民主主義の両方を受け入れると考えられた。

東欧や多くの国がその方向へ進む中、世界は中国も追随することを期待した。

しかし、そうはならなかった。経済は自由化されたものの、中国共産党は強硬な支配を続けた。経済が目覚ましく発展したため、厳しい政治体制と経済的自由を合わせ持つ国が最も成功するという主張も出てきた。民主主義よりも、全体主義の方が効率的というわけだ。

しかし、今現在、パワフルなリーダーを擁するこの一党独裁国家は機能不全に陥っている。数年前には予想もつかなかった事態だ。中国共産党は当初、深刻な人権侵害を犯すことによって、ウイルスを解決できると信じていた。

現在、上海では厳しいロックダウンが続いている。無症状の人々が隔離され、物流が止まり、食料調達に支障が出ている。上海市民は高層マンションから助けを求め、当局との対立も起こっている。ネットには荒らされた店の映像が流れている。これら全ては、世界がようやく「エンデミック」(風土病)になると気づき始めたウイルスを、徹底的に根絶するための代償だ。

いずれにしろ、ロックダウンの発祥地は中国である。2020年初め、WHOのテドロス事務局長は武漢のロックダウンを賞賛し、「中国はアウトブレイク(感染爆発)対応の新しい基準を示した」とツイッターに投稿した。

インペリアル・カレッジの公衆衛生専門家ニール・ファーガソン教授は、共産党による一党独裁の中国でしかあり得ないロックダウンを、「我々(自由な欧米社会)でもできることに気づいた」とインタビューで述べ、中国のおかげだと語った。まず北イタリアがロックダウンをやってのけた。米国やイギリスを含む欧米諸国が模倣した。こうして中国が世界の手本となったのである。

中国の腕前を世界にアピールした習近平氏は、当時の栄光を忘れられないだろう。一方、ヤフーは感染拡大が止まらない上海の様子を次のように伝えている。

「習近平国家主席は、中国の『有効性が検証済み』のゼロコロナ政策を称賛した。国民の不満が高まる中、上海当局は患者用として約13万床のベッドを準備している」

2年前、ロックダウンは最良の対策に見えたかもしれない。中国ほど完璧ではなくとも、多くの国がそのやり方に従った。これが習近平氏と中国共産党に大きな誇りと自信を与えた。

そのため、彼らは誰もが知っているウイルスの常識を忘れてしまった。活発な社会と市場がある場所において、ウイルスの伝播は避けられない。カリフォルニア大学の疫学・生物統計学准教授ヴィネイ・プラサド氏が言うように、最終的には誰もが感染する。その過程を経て、我々はパンデミックから抜け出すのである。

つまり、中国での感染は止まらないということだ。14億人の大多数が感染するまで、すべての都市や町、地方に広がっていくだろう。そうすると、今後何年にもわたって計画的なロックダウンが続くかもしれない。これは経済的な大打撃であり、中国共産党の信頼性を揺るがす可能性がある。

問題は、中国が2年前の成果に固執していることだ。彼らがロックダウンを本気で信じている限り、また異なる見解を示す野党が存在しない限り、この状況は続くだろう。

中国には重大な誤りを正すためのメカニズムが存在しない。米国をロックダウンの呪いから救ったのは、多元的な政治体制と連邦制である。中国にはどちらも存在しない。ゆえに、国のリーダーの知的な誤りは、ひどく不道徳な結果を招くのである。

ロックダウンはウイルス感染の解決策にはならない。いかにパワフルで有能な国家であっても、それを凌駕する自然の力が存在することを、我々は思い知らされたのである。

執筆者プロフィール

ジェフリー・タッカー(Jeffrey Tucker)

ブラウンストーン・インスティテュートの創設者。著書に「右翼の集団主義」(Right-Wing Collectivism: The Other Threat to Liberty)がある。

オリジナル記事:英文大紀元「The China Model Unravels in Shanghai」より

(翻訳編集・郭丹丹)

 

ブラウンストーン・インスティテュートの創設者。著書に「右翼の集団主義」(Right-Wing Collectivism: The Other Threat to Liberty)がある。
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