上海封鎖、日本企業は「中国国外に振り替え始めた」…総領事が副市長に書簡 

2022/04/17
更新: 2022/04/18
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中国・上海では、当局のロックダウン政策により企業が1か月以上正常な操業ができない状況が続いている。赤松秀一・上海総領事は上海副市長宛に書簡を送り、物流停止や事業計画が立てられないなど困難に直面する日本企業は、生産を「他地域や中国国外へと振り替え始めている」と指摘した。

赤松総領事の書簡は、上海日本商工クラブ役員企業等に行った事業面・生活面の把握のための緊急アンケート調査結果と共に15日、提出された。調査期間は9日から12日で、約70社を対象とし53社が回答した。

「悲痛な叫び声が私の耳にも届いている」と赤松氏は書簡に企業の窮状をしたためた。上海で暮らす在留邦人は約4万人。進出した日系企業は約1万1000社に上る。

先行き不透明、物流停止で深刻な影響

2019年9月1日、カリフォルニア州ロングビーチにあるロサンゼルス港で、中国海運のコンテナの横を通過するトラック(Mark Ralston/AFP via Getty Images)

アンケートの結果によると、上海市以外との物流が停止されているとの回答と、市内の物流が停止しているとの回答はいずれも半数を上回った。許可を得れば可能との回答もあったが、許可の取得そのものが容易ではない場合もあるという。国際物流が完全に停止したとの回答が3分の1に上り、商工クラブは貿易に甚大な影響を及ぼすと予想している。

物流の停止により、日本企業はサプライチェーンが分断された状況が続いていると赤松総領事は指摘した。製品の生産や納入ができないため同業他社に販路を奪われるなど「広範にわたって深刻な影響」が生じている。

都市封鎖が年度の変わり目に行われたことにより、人事異動にも影響が出ている。14社が帰任と赴任ができないと回答したほか、封鎖前に入管に預けたパスポートが返却されず帰国できない事例もあった。

日系企業のほとんどは在宅勤務を取り入れている。しかし、対応しきれない業務もあるため、一部では社員が泊まり込みで対応している。

都市封鎖、社員の生活にも打撃

3月29日、上海のスーパーマーケット、棚がほぼ空っぽ。(HECTOR RETAMAL/AFP via Getty Images)

上海市の都市封鎖は企業活動だけではなく、社員の日常生活にも大きな影響を及ぼしている。

アンケートでは、食料の調達に苦労していると回答した企業は14社だった。なかでも封鎖が速く始まり、告知が直前だった黄浦江の東側地域では準備ができず、備蓄が少ない世帯には厳しい状況となった。

上海では食料の配給が行われているが、複数人の家族でも量が十分でないケースや、地域ごとに配給される食料の差が激しいとの声があった。野菜や肉などが多く配給されるマンションがあるいっぽう、袋めんだけのところもあったという。

食料不足に対応するため、一部企業は会社で食料品を調達し従業員に配達している。生活補助金を配当した企業もあった。

長引く都市封鎖に、メンタル面を心配する声も日系企業から出ている。「出口の見えない心の不安や運動不足、睡眠障害等心身ともに疲弊している人」が増えていると長寧区の金属・機械会社は回答した。メンタルケアの必要性を訴えたほか、感染した際に親子が引き離される隔離に強く反対した。

2022年4月7日、中国上海で中共ウイルス(新型コロナ)の陽性判定を受けた患者のための仮設病院(STR/AFP via Getty Images)

中国共産党は感染者数を文字通り「ゼロ」にする高圧的な政策を敷いている。共同通信16日付によると、中国では45都市で何らかの都市封鎖が行われており、3億7000万人がその影響を受けている。

上海市政府は同日、事業および生産再開時の感染症防止ガイドラインを発表。リスク管理のために従業員が職場に寝泊まりして定期的なPCR検査を行う「クローズドループ(閉環)管理」を徹底するという。

中国共産党が堅持するゼロコロナ政策だが、変異型を抑え込むことはできず世界経済の混乱を引き起こすと、米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは年初の世界10大リスクとして首位に掲げた。

この予想をひきい合いにして、経済同友会の櫻田謙悟代表幹事は「打ち手とその効果は必ずしも想定どおりではない。ロックダウン政策に固執し続ける限り、経済への影響はさらに深刻になるだろう」と12日の会見で述べた。

「秋の共産党大会に向けて、中国当局の決断、判断が間違っていたとは認めにくいため、簡単にロックダウン解除は行えないのだろう」とし、厳しい封鎖政策は続くとの見通しを示した。

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