「無症状感染」という亡霊に怯えた2年間

2022/05/01
更新: 2022/05/01
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「無症状者も感染させる」という概念が広まった経緯を説明しよう。

パンデミックが始まった2020年1月、複数の医師が連名で、無症状感染の可能性を示唆するレターを著名な医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に投稿した。レターは、上海から来た中国人女性とビジネス会議に出席した後、新型コロナに感染したドイツ人男性のケースを紹介した。女性は中国への帰国便で体調を崩し、後に陽性と診断されたという。彼女はドイツ滞在中ずっと無症状だったため、「無症状感染」という説がここから生まれた。

しかし、この報告には誤りがあった。レターを投稿した医師らは、誰もこの無症状とされた女性に直接話を聞かなかったのである。後にドイツの公衆衛生機関であるロベルト・コッホ研究所(RKI)が女性に改めて連絡したところ、彼女はドイツ滞在中に症状があったことを打ち明けた。彼女は倦怠感や筋肉痛があったため、鎮痛剤を服用していたのである。彼女は無症状ではなく、医学誌のレターは誤報に過ぎないことが分かった。

2020年6月8日、WHOの新型コロナ感染症担当マリア・バン・ケルコフ氏は、無症状者からの感染は「非常にまれ」と発言した。しかし一部の科学者から反発を招いたため、彼女は自身の発言を撤回した。彼女は記者会見で、「数少ない研究について」言及したに過ぎないと釈明した。

現在、無症状感染がパンデミックの要因ではないとする、彼女の見解は正しいことが分かっている。歴史上、呼吸器系のウイルスが無症状感染で広がったことはない。従って、この結論には誰も驚かないはずである。

しかし、誤報によるダメージは大きかった。メディアは「無症状感染」というストーリーを流し続けた。科学的根拠のない「無症状者の脅威」という説が信じられ、周りの人全てが自分を脅かす存在となったのである。

今回のパンデミックによって、私たちの健康と病気に対する考え方が、完全に覆されてしまった。かつて、人は病気と証明されるまでは、健康であると考えられていた。長期的な病欠を取る場合は、医師の診断書が求められた。一方、新型コロナにおいては、その基準が逆転した。人は健康と証明されるまで、病気とみなされるようになった。陰性証明書がなければ、仕事に復帰することもできないのである。

社会構造を破壊し、市民を分断するのに、これほど効果的な方法はないだろう。「無症状者も感染させる」というストーリーと、健康な人々の隔離という組み合わせである。長期に渡るロックダウンの中、テレビ画面を見つめて怯える人々をコントロールするのは、比較的容易である。

「社会的距離」(ソーシャル・ディスタンス)という概念は、実は反社会的である。2年間、私たちは必要不可欠なものを失ってきた。友人、家族との休日、老人や死の間際にいる人を見舞うこと、仕事、神への崇拝、葬式。「無症状感染」という亡霊に怯えながら、私たちは多くのものを犠牲にしてきたのである。

 

執筆者プロフィール:

アーロン・ケリアティー(Aaron Kheriaty)

医師で「Ethics and Public Policy Center」のフェロー。「The Unity Project」の倫理担当チーフを務める。

オリジナル記事:英文大紀元「The Specter of Asymptomatic Spread」より

(翻訳編集・郭丹丹)