政府の圧力で言論統制『ツイッターファイル』の重要な啓示

2023/02/17
更新: 2023/02/17

ツイッター社の新しい所有者であるテクノロジー界の億万長者イーロン・マスク氏。同氏によって明らかにされた文書『ツイッターファイル』は、巨大ソーシャルメディア企業が官民連携の検閲機構と密接な関係にあったことを示している。

ツイッター社は、2020年の大統領選挙における不正行為、郵送投票の問題、新型コロナパンデミックの様々な側面などのテーマに関するコンテンツを抑制し、削除した。

同社はそのようなコンテンツと情報提供者のアカウントをプラットフォームから排除するよう政府から圧力を受けていたが、ほとんどの場合、検閲の要求に積極的に協力していたことが文書に示されている。

『ツイッターファイル』インフォグラフィック (エポックタイムズ作成)
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億万長者のイーロン・マスク氏は2022年10月にツイッター社を買収し、CEOに就任すると、同社の透明性を高めると宣言した。「ツイッターファイル」と呼ばれる内部文書の公開に踏み切り、さらに検閲を主体的に進めてきた複数の幹部と、半数近い従業員と多くの幹部を解雇し、一連の経営改革を宣言した。

マスク氏の許可を受けた複数名のフリージャーナリストはTwitter社の内部文書の検索要請を提出し、それらをもとにTwitterスタッフが会社の内部文書を検索した。情報公開は最初にツイッター上で行わなければならないとの条件が付く場合もあった。

「ツイッターファイル」の公開を担当する主なジャーナリストは、『ローリング・ストーン』誌の元寄稿編集者マット・タイービ氏と、『ニューヨーク・タイムズ』『ウォール・ストリート・ジャーナル』の両誌でかつて編集者を務めたバリー・ワイス氏の2人。両者とも進歩主義と新自由主義の極端な潮流に「幻滅」を表明しているリベラル派である。

このほか、フリージャーナリストのリー・ファン氏とデイヴィッド・ツワイク氏、元『ニューヨーク・タイムズ』記者のアレックス・ベレンソン氏、作家で環境保護家のマイケル・シェレンバーガー氏もいる。

ジャーナリストらは閲覧した社内文書のほんの一部しか公開していない。また、一部上級幹部を除き、関係職員の名前の公開は差し控えている。

公開された社内文書によると、FBIをはじめ連邦政府、州・地方政府の機関は、米国人の政治的発言を大規模に審査し、オンライン上の合法的な発言を検閲・削除させようとしているという。保守派論客や伝統的なリベラル派論客の多くは、それらの手法を憲法修正第1条違反と考えている。

多くの政治的発言が集うツイッターは、長らく検閲の主要なターゲットだった。近年、多くの報道がツイッターに流れ、数々の政治的議論がツイッター上で行われている。著名人から匿名ユーザーに至るまで、ツイッターでは様々なユーザー同士が直接言葉を交わす場となった。

ツイッターは一部の検閲要請を拒否したが、原則的には受け入れていた。経営陣はときに、検閲を正当化しうるポリシーを見つけられないでいた。社内文書によると、ツイッターの幹部らはジャック・ドーシー元CEOに対し、より徹底的な検閲ができるようポリシーの更なる拡充を迫っていた。

ワイス氏により公開された2021年の社内メッセージの中で、コンテンツポリシーを統括するトラスト&セーフティー(信頼・安全)部門の責任者ヨエル・ロス氏(当時)は次のように述べた。「我々の行動の多くは、『デマなどの投稿によって直接被害が生じるならば、そのような投稿を減らすための修正を行うべきであり、コンテンツの拡散/バイラル性を制限するのがそのための有効な方法である』という仮説に基づいている」。

「短期的には市民の健全性のためにそれらの制限を導入するようドーシー氏を説得したが、特に他のポリシー分野において、それをポリシー改善のレパートリーに加えるには、より堅牢な弁証をする必要が出てくる」。

幹部らがツイッターの元CEOジャック・ドーシー氏に圧力をかけることもあった(Marco Bello/AFP via Getty Images)

多くの場合、ツイッター幹部は政府による批判者への検閲を事実上認めていた。

検閲要請の多くが命令的な態度であり、バイデン政権からの要請はそのようなものが多かった。当時、米下院情報特別委員会の委員長を勤めていたアダム・シフ議員からも要請が届いた。

2020年11月頃、シフ氏の事務所はツイッター社に一連の要請リストを送信した。委員会メンバーに関する「あらゆるコンテンツ」の削除と、メディア「リアル・クリア・インベスティゲーション」のジャーナリストであるポール・スペリー氏のアカウントなど「多くのアカウント」の凍結を求めるものだった。

シフ氏の事務所はスペリー氏について、「虚偽のQアノン陰謀論」を拡散していると非難した。

スペリー氏は否定したうえで、シフ氏に論拠を示すよう求め、法的措置を検討していると発表した。

シフ氏の要請は、ドナルド・トランプ前大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の間で「交換条件」が存在すると主張したホワイトハウス内部告発者の身元を推測したスペリー氏の記事に対する反応だったようだ。

スペリー氏は匿名の情報源に基づき、オバマ政権からの残留スタッフであるショーン・ミスコ氏とホワイトハウスで話しているところを盗み聞きされた元CIAアナリストのエリック・キアラメラ氏が内部告発者だと推測したと伝えた。後にミスコ氏はシフ議員の委員会に加わった。

ツイッターはシフ氏の要請を拒否したが、スペリー氏のアカウントの活動を「再び」調査すると約束した。数か月後、スペリー氏のアカウントは凍結された。タイービ氏は、凍結の理由は不明だとしている。

ツイッターへの圧力

ツイッターがFBIを介して受けた多くの検閲要請は、単なる注意喚起の体裁を取っており、対処方法はツイッター側に一任されていた。しかし社内文書が示すところでは、社内ポリシーで検閲要請を正当化できない場合でも、ツイッターの経営陣は要請に対応しなければならないと感じていたという。

政府による圧力の形態はさまざまだ。FBIは実際に削除されたかを確認するための追跡調査をしていたため、ツイッターは検閲要請を拒否する場合、FBIに理由を釈明する必要があった。ある問題に対するツイッターの立場が政府の意向に沿わない場合、ツイッター幹部は質問を受け、当局、さらにはより広範な諜報機関が不満に思っていることを知らされる。そうなると経営陣はすっかり取り乱し、各方面との関係修復を急ぐことになる。

米連邦捜査局(FBI)のロゴマーク(YURI GRIPAS/AFP via Getty Images)

報道機関も政治的圧力に加勢している。ツイッターが指定された時間内に要請に従わない場合、プラットフォーム上で外国の影響力工作が行われていることなど、最重要課題を放置していると報道で批判されることとなる。

例えば、ロシア諜報機関が運営しているとされるアカウントが検閲対象となっているものの、ツイッターには何ら証拠が提示されないこともある。

ジャーナリストのタイービ氏によると、以前CIAに勤務していた人物はこのような場合、「当方に技術的な証拠が不足しているため、私は通常、さらなる証拠が出るまでそのような要請を放置する」と語っていた。

「政府パートナーは情報源とその通報により一層熱心になっているので、我々の持ち時間は減りつつある」。

ツイッターの社内メールは、ロシアの情報機関が運営していると政府が公言したアカウントについて、(ツイッターが政府の要請を拒否すれば)メディアが(批判的な)報道をするため、それを懸念するツイッターは政府の要求にあえて拒否できないことを示唆していた。

米国議会はおそらくツイッターの頭上に吊るされた「ダモクレスの剣」だった。議員らは否定的に報道するよう報道機関に働きかけるにとどまらず、公聴会や調査などでツイッターを吊し上げたり、費用負担の大きい新制度を制定したりすることができた。

米CIA本部の床にあるCIAのシンボルマーク。2004年7月9日、バージニア州ラングレーのCIA本部にて撮影(Photo by Mark Wilson/Getty Images)

一例として、マーク・ワーナー上院議員(民主党)は2017年、ロシアの影響力工作に関してより多くの証拠を提出するようツイッターに圧力をかけていた。当時、ワーナー氏はエイミー・クロブチャー上院議員(民主党)やジョン・マケイン上院議員(共和党)とともに、オンライン政治広告の広範な開示を求める法案を提出した。

ツイッターの幹部らは、ロシアと関係のあるアカウントやその疑いがあるアカウントに対して厳しい措置を取ることで議員らに歩み寄る姿勢を示したにもかかわらず、議員らがツイッターから提供された情報をリークし、ツイッターに否定的な報道記事を書かせていると確信していた。

FBIからは悪意ある外国勢力の言動に関する警告がツイッターに送られたが、検閲要請の多くは、悪意ある外国勢力との関連性についてほとんど、あるいはまったく証明できないアカウントのリストに過ぎなかった。ツイッターは時おり、自社では証拠が見つからないとして、より多くの情報提供を求めようとしたが、多くの場合ただ要請に従った。ツイッターが各要請について事細かに検証することは不可能だった。タイービ氏はその理由として、要請の数が多すぎることを挙げた。

タイービ氏が公開した一つの検閲要請には「添付された電子メールアカウントは影響力行使、ソーシャルメディア上での情報収集、あるいはソーシャルエンジニアリングに使用する目的で作成された可能性がある」とだけ書かれていた。「それ以上の説明がないまま、エクセルのファイルがツイッターに転送されたのだろう」とタイービ氏は述べた。

検閲要請の対象は政治的な右派に偏っていた。研究者のなかには、右派は左派よりもデマの拡散に関与している度合いが高いのではないかと指摘する者もいるが、ツイッターファイルが示すところでは、検閲は右派・左派の問題よりも、親体制派と反体制派の問題だ。左派的なアカウントでさえ、政府の見解から大きく離れていると検閲対象となる。

さらに、右派はもとより検閲要請を出すことに関心を示さないようだった。トランプ氏の選挙活動陣営やトランプ前政権、または共和党員からも検閲要請があったとされているが、タイービ氏はそのような要請を確認することができなかった。

一方で、全般的に言えることだが、政権側から流される誤情報を対象にしようという意欲も見られなかった。

ハンター・バイデンがノートパソコンを修理のために持ち込んだが、受け取りに来ることはなかったとされる「マックショップ」の外観。2020年10月21日、デラウェア州ウィルミントン。(Photo by Angela Weiss / AFP) (Photo by ANGELA WEISS/AFP via Getty Images)

ハンター・バイデン氏、疑惑のノートパソコン

2020年、バイデン氏の息子ハンター・バイデン氏所有のノートパソコンに関する『ニューヨーク・ポスト』の暴露記事をツイッターが検閲したことについては、公開された社内文書の中で事細かに記述されている。

一部のツイッター幹部、特にトラスト&セーフティー部門の前責任者ロス氏は、FBIや他の諜報機関との会合に頻繁に出席し、外国政府のインターネット上における活動についてブリーフィングを受けていた。ロス氏は2020年大統領選の数か月前から、ハンター氏にまつわるデータを漏洩させるロシアの「ハッキング&リーク」作戦に備えるよう仕向けていた。

FBIは、ハンター・バイデン氏のウクライナでの取引に関連するロシアの影響力工作の証拠があると主張した。しかし、ハンター氏が大量の機微情報が入っているノートパソコンをデラウェア州のパソコン修理店に残したことや、パソコン内の情報がトランプ前大統領の弁護士を務めるルディ・ジュリアーニ氏の手に渡ったことも、FBIは把握していた。FBIは2019年12月にノートパソコンを修理店から引き取り、修理業者が情報を渡した2020年8月にはジュリアーニ氏を監視下に置いた。FBIも承知していたことだが、ノートパソコンの情報はハッキングされておらず、ロシアの陰謀の産物でもなかった。

『ニューヨーク・ポスト』紙でハンター氏の記事が報道されたとき、ツイッターの幹部らは、まさにFBIが警告していたことが起こったのだと確信した。

ロス氏は社内メールの中で、「これは、やや微妙なリーク作戦のように感じる」と述べた。ロス氏自身も、ノートパソコンの「出どころが疑わしい」点を除けば、そのような主張に証拠はないことを認めている。

写真は2021年1月20日、ジョー・バイデン氏の就任式に出席するために、米国議会議事堂の西門に到着したハンター・バイデン氏(Win McNamee/Getty Images)

ロス氏自身、新聞記事がツイッターのポリシーに違反していないことを認めていた。しかし、ハッキングされた証拠がないにもかかわらず、ツイッターは記事について「安全でない」と警告し、ハッキングに関するポリシーを適用して検閲を行った。

ツイッターの前副法務顧問ジェームズ・ベイカー氏は、ハンター氏の情報がハッキングによって入手されたものだと「仮定」するのは「合理的」であると述べ、検閲を支持した。

ベイカー氏は2018年5月までFBIの弁護士を務め、2020年6月にツイッターに入社した。ベイカー氏はFBI在籍中、「ロシアゲート」の調査に密接に関わっていた。ロシアゲートとは、トランプ氏と大統領の座を争ったヒラリー・クリントン氏の陣営が提供する偽情報をもとにFBIが捜査を展開し、トランプ陣営を違法に盗聴したスキャンダルを指す。

実際のところ、FBIは2020年大統領選以前に「ハッキング&リーク」作戦が行われることを示唆する情報を認識していなかった。管轄区域内に本社を有するツイッターやその他のテック企業との調整役で、FBIサンフランシスコ支部のサイバー支部長であるエルビス・チャン氏が、2022年11月にそのように証言している。

シェレンバーガー氏はツイッターの社内通信を引用し、ツイッター自身が2020年大統領選の前にロシア関連の活動をほとんど感知していなかったとしている。

シャドウバン」の実態

ツイッターは、ユーザーに通知することなくアカウントを表示されにくくする「シャドウバン」の実施を繰り返し否定してきた。しかし、否定する中で、シャドウバンは特定のユーザーのコンテンツを他のユーザーに表示させないことだと定義された。ユーザーの不満は、ツイッターがコンテンツを完全に非表示にするのではなく、コンテンツを閲覧できるユーザー数を抑制していると思われることだ。内部資料によると、ツイッターは実際にシャドウバンを数多く実施している。

ツイッターのあるエンジニアはワイス氏に次のように語った。「私たちはコンテンツの表示度合いをかなり操作している。そしてコンテンツの拡散についてもかなり操作している。一般人は私たちがどの程度操作しているかを知らない」。

シャドウバンの対象となったアカウントの中には、パンデミックの早い時期からロックダウン政策を批判したスタンフォード大学医学部教授、ジェイ・バッタチャリヤ氏が含まれている。

このほか、保守的なポッドキャスターで元シークレットサービスのエージェントであるダン・ボンジーノ氏や、米保守系学生団体「ターニングポイントUSA」創設者のチャーリー・カーク氏らがシャドウバンの対象となった。

新型コロナウイルスとワクチン接種

ツイッターでは、新型コロナウイルスのパンデミックに関する情報が広く検閲されている。ウイルスの起源、治療法、開発されたワクチン、感染拡大を防ぐための公共政策については、米疾病予防管理センター(CDC)が公表する連邦政府の公的な見解と一致している必要があった。

ツヴァイク氏は「CDCの指針から逸脱したり、体制側の見解と異なったりしているというだけの理由で投稿に『誤解を招く』とのフラグが立てられたり、削除されたりするケースが無数にあったほか、時にはアカウント凍結に追い込まれることもある」と述べた。

ファクトチェッカーと自認するツイッターユーザー@KelleyKgaは、新型コロナウイルスが子供の病死の主な原因であるという間違ったツイートに対し、自説にとって都合の良いデータだけをピックアップしていると批判した。しかし、@KelleyKgaはCDCのデータを引用していたにもかかわらず、その批判は「誤解を招く」ものとされ、検閲対象となった。いっぽう、間違ったツイートは検閲されなかった。

エウセビウシュ・ヤムロジーク医師はコロナワクチンの副反応に関する研究結果の概要をツイッターに投稿しただけだったが、「誤解を招く」と表示され、検閲された。

ときに、ツイッターは自社の独断で情報を検閲していると考えられているが、新型コロナウイルス関連の検閲の多くは政府から来ており、中にはホワイトハウスからの要請もある。

ホワイトハウスのデジタル部門ディレクターを務めるロブ・フラハティ氏は一通の電子メールの中で、ツイッターがフラハティ氏の検閲要請に抵抗するため「全力を尽くしている」と批判し、「完全なカルビンボール(ルールが変化し続けるゲーム)」と呼んだ。この電子メールはツイッターファイルには含まれていなかったが、ミズーリ州とルイジアナ州の検事総長がバイデン政権に対して起こした訴訟の中で明らかになった。

もう一人のホワイトハウススタッフはツイッターに対し、長年ワクチン接種に批判的だったロバート・ケネディ・ジュニア氏のツイートを検閲するよう要求した。同スタッフは、ツイッターが「そのツイートをできるだけ早急に削除するプロセスを進めてくれないだろうか」と考えていた。2021年1月23日のメールでは「同じジャンルに分類されるツイートにも目を光らせることができればなんと素晴らしいことか」と述べた。

行政府はそのようなコンテンツを一掃しようとしていたわけではない。社内文書によると、ワクチンに対し「ためらい」を示しただけのユーザーについては、その投稿が他のユーザーの目に止まらないように操作されただけだという。

バイデン政権にとって、ワクチンの普及は最も注目された課題の1つであったため、大きな危機感を覚えていた。利害関係者は他にも存在していた。

ワシントンのホワイトハウスで新型コロナウイルスへの対応とワクチン接種プログラムについて発言するジョー・バイデン大統領(Photo by Anna Moneymaker/Getty Images)

米製薬大手ファイザーの取締役で、社内の規制コンプライアンス委員会の責任者であるスコット・ゴットリーブ氏からも複数の検閲要請が寄せられた。同社は、現在最も広く使用されている新型コロナワクチンを開発し、2年間で数百億ドルの収益を上げた。

ゴットリーブ氏はツイッターに少なくとも3件の要請を送った。1件目は、「予防接種よりも自然免疫の方が良い」とツイートした医師に対するものだ。医師の発言が正しかったにもかかわらず、ツイッターはその投稿を検閲した。

2件目は、子供の感染による死亡は非常にまれであるとし、学校の休校に反対した作家ジャスティン・ハート氏に対するものだ。ゴットリーブ氏が検閲の要請を送ったのは、当局がファイザー社の小児用ワクチンを承認する直前だった。しかし、ツイッターはこの要請に応じなかった。

3件目は、『ニューヨーク・タイムズ』の元記者ベレンソン氏に対するものだ。ゴットリーブ氏は、バイデン政権の首席医療顧問アンソニー・ファウチ氏に対するベレンソン氏の批判が、ファウチ氏に対する身体的暴力の脅威を引き起こしていると主張。その後、ツイッターはベレンソン氏のアカウントを凍結した。

なお、ゴットリーブ氏の検閲要請を受け取っていたツイッター幹部は、ホワイトハウスとの連絡役をも務めており、政権からの検閲要請の受け入れ窓口となっていた。

トランプ氏の永久凍結

トランプ氏はツイッターと特に相性が良かった。数十年にわたりニューヨークの報道機関と接する中で磨かれたキャッチーな言葉遣いは、簡潔さを要するツイッター上で効果的だった。大統領として9000万人以上のフォロワーを獲得し、メディアのフィルターを介さずに瞬時に全米から注目を集めることができた。しかし、ツイッターを活用するトランプ氏の統治手法は連邦政府内部で、特に外交上の機微に慣れ親しんだ外交政策担当者の間で軽蔑の対象となった。

社内文書によれば、2021年1月6日の連邦議会議事堂乱入事件から数日後、ツイッターがトランプ氏のアカウントを永久凍結したのは、ツイッター幹部が自身で検閲に踏み切った一つの例だったとされる。コンテンツポリシーに背いて、現職の米大統領の声を封じたのだ。

2021年1月8日、凍結されたドナルド・トランプのツイッターアカウントがノートパソコン画面に表示されている。 (Justin Sullivan/Getty Images)

ツイッターは2021年1月8日、トランプ氏が以下の2件の投稿を行った後にそのアカウントを永久凍結した。

1件目は「私に投票してくれた7500万人の偉大な米国の愛国者や、『米国ファースト』、『米国を再び偉大に』というスローガンは今後も長く巨大な声となるだろう。彼らはいかなる方法、形式であれ、軽蔑されたり、不当に扱われたりはしない!」というツイート。

もう1件は「私に訊いてくれたすべての人へ告げる。私は1月20日の大統領就任式には行かない」だった。

Twitterのモデレーターとその上席管理職らは、この2件のツイートがいかなるコンテンツポリシーにも違反していないと認めていた。

「これを扇動だと言うのは難しいと思う」とある職員は書いている。「『米国の愛国者』とは彼に投票した人のことであり、水曜日のテロリスト(そう呼んでも差し支えないのではないだろうか)のことではないのは明白だ」。

大勢の反トランプ従業員からの圧力を受けた上級幹部らはこのような結論を受け入れようとせず、トランプ氏の投稿を悪意あるものと解釈した。

ソーシャルメディアの規制に関連する大統領令に署名する前に、大統領執務室で話すドナルド・トランプ氏。2020年5月28日、ワシントンにて。 (Photo by Doug Mills-Pool/Getty Images)

法務・ポリシーなどを担当していたヴィジャヤ・ガッデ前最高法務責任者(CLO)は「最大の問題は、今朝のトランプ氏のツイートのように、表面的にはポリシー違反ではないものの、さらなる暴力を引き起こす暗号化された扇動メッセージとして使われていることだ」と社内メッセージの中で書いている。

別のツイッターモデレーションチームはすぐにガッデ氏の主張に呼応し、トランプ氏は「暴力的な過激派グループのリーダーとして、グループとその最近の行動を称賛している」と結論付けた。

「ヌネス・メモ」への批判

2018年1月、共和党のデビン・ヌネス下院議員(当時)が、トランプ氏とロシアの関係を捜査する際のFBIの監視権限濫用について、詳細に記載したメモを提出した。このメモは後に司法省監察官マイケル・ホロウィッツ氏が確認したところ、実質的にほとんどの点で内容が正確であった。

このメモは報道機関によって「物笑いの種」とはねつけられたが、ソーシャルメディア上では大きな求心力を得た。その後、レガシーメディアと複数の議員が、このメモはロシアの影響力工作に関連するアカウントによって拡散されているものと主張するようになった。

しかし、ツイッターはハッシュタグ「#ReleaseTheMemo(メモを開示せよ)」の背後にロシアの影響力があるとの証拠を見つけられなかった。

2019年11月19日に行われた公聴会で発言するデビン・ヌネス下院議員(Photo by SHAWN THEW / POOL / AFP) (Photo by SHAWN THEW/POOL/AFP via Getty Images)

これらの主張はすべて、米国やドイツ、スウェーデン政府が出資しているシンクタンク・ジャーマンマーシャル基金の下で2017年に設立された「民主主義を守るための同盟」(ASD)に基づいている。

ASDは、米国の外交政策や安全保障体制と密接に関連している。当時の責任者は、元クリントン陣営の選挙顧問で、国家安全保障会議(NSC)や国務省の役職も歴任したローラ・ローゼンバーガー氏である。ASDの顧問には、クリントン氏の選対責任者を務めたジョン・ポデスタ氏や元CIA長官マイケル・モレル氏、元国土安全保障省長官マイケル・チャートフ氏がいる。

 

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ツイッター職員はASDがどのように結論に達したかわからず困惑したという。

「調査したところ、ツイートに対するエンゲージメントは非常に自然的であり、強力なVIT(Very Important Tweeters/非常に重要なツイーター)(ウィキリークス、ドナルド・トランプ・ジュニア、スティーブ・キング下院議員など)のエンゲージメントによって推進されていることが判明した」と、ロス氏は社内メッセージの中で書いている。

実際、ASDのロシアの影響力を追跡する上での情報源「ハミルトン68ダッシュボード」は、すでにツイッターにより分析されていた。このことはロス氏がメディアには明かしたがらなかった。

ツイッターはそのような詳細を明らかにすることなく、水面下でやり取りしようとしたが、徒労だった。当初、記者らはツイッターに連絡さえせずに主張を掲載したと、ロス氏は書いている。

シフ氏や、上院司法委員会の民主党トップのダイアン・ファインスタイン議員からのこの問題に関する最初の書簡も、ツイッターが回答する機会を得ないうちに公開されたと、社内のメッセージに書かれている。

ツイッターは、リチャード・ブルメンタール上院議員(共和党)が書簡を発表するのを阻止しようとしたが、またしても失敗した。

「ブルメンタール氏は必ずしも、現実的で微妙な解決策を求めているわけではない。彼は、我々にさらに圧力をかけることで、賞賛を得たいと考えている。そのため彼は、報道機関が動いたときにだけ動くかもしれない」と、ツイッターの元公共政策担当ディレクターのカルロス・モンジェ氏が社内メッセージで述べている。元運輸省職員のモンジェ氏は、バイデン政権下で運輸省に復帰した。

結局、ツイッターはロシアに関する主張に公的に異議を唱えることはなかった。

米国防総省の本庁舎「ペンタゴン」(Photo by STAFF/AFP via Getty Images)

国防総省の心理戦

2017年、国防総省の職員は中東向けの情報発信で使用していたアカウントを「ホワイトリスト」に追加するようツイッターに要請した。ツイッターはこれを受諾し、認証済みアカウントと同様の特権を与えた。

しかし、後に国防総省はそれらのアカウントについて政府アカウントに適用されるマークを消去し、事実上秘密裡で操作していた。それらのアカウントは本来であれば、ツイッターの不正アクティビティに関するポリシーに基づき削除されるはずだが、ツイッターは数年間放置していたと、独立系ジャーナリストのファン氏が明かしている。

連邦「おへそ」捜査局(FBI)

ジャーナリストのタイービ氏によると、FBIは、他の政府機関がツイッターに情報を報告・要請をするための「おへそ」として連絡役を務めていた。

FBIのサイバー担当責任者チャン氏が、FBIは米国の諜報機関(USIC)の通信をツイッターに送るが、他の選挙関連の通信は米国土安全保障省(DHS)の米サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(CISA)から伝達されると説明するやりとりが残されたいた。

「我々は、FBIやUSICの諸機関で見ているすべてのものを提供できる」とチャン氏は語った。「そうすればCISAは各州で何が起こっているかを知ることができる」。

チャン氏はその後ツイッターに対し、CISAと個別に連絡するか、「FBIをおへそ(連結部)として(米国政府に)頼るのか」尋ねた。

ツイッター社の幹部は、FBIが専任の捜査官を配置し、ツイッターを検索してポリシー違反のコンテンツにフラグを付けていることを知って驚いたという。
ツイッターは2017年以降、少なくとも15人の元FBI捜査官を雇い、FBIとのさらなる関係強化を図った。ツイッター社内で、元捜査官のための社内ディスカッショングループができるほどだった。

FBIはツイッターファイルの公開について「陰謀論者などが…機関の信用を落とそうとすることだけを目的として」広めた「誤った情報」だとする声明を発表した。

国土「検閲」省

国土「検閲」省とは、検閲に参加する国土安全保障省(DHS)を文字った言い回しだ。国土安全保障省は重要インフラを保護する目的で、言論警察のような任務を担ってきた。オバマ元大統領はホワイトハウスを去る直前の2017年1月、国土安全保障省の任務対象である「重要インフラ」に選挙を追加した。DHS傘下のCISAは、ハッカーから選挙を守るだけでなく、「誤った情報」や「虚偽情報」への対策も任務とされた。

米国国土安全保障省(DHS)のマーク。2015年2月25日撮影(Photo by SAUL LOEB/AFP via Getty Images)

2020年7月、CISAは「選挙への脅威」について研究し対策を練るため、複数の民間調査機関と提携した。エレクション・インテグリティー・パートナーシップ(EIP)というグループを立ち上げ、スタンフォード・インターネット観測所、ワシントン大学情報公開センター、アトランティック・カウンシルのデジタル・フォレンジック・リサーチラボ、そしてSNS解析企業グラフィカの4つの組織が参画した。

アトランティック・カウンシルは、準公式のNATOシンクタンクとして活動しており、政府、特に外交政策関係者や諜報機関と緊密な関係を築いている。約200人強の理事会には、7人の元CIA長官とその他の国家安全保障の高官が多数参加している。

EIPは実務として、「選挙に対する脅威とみなされるもの」をソーシャルメディアで調査している。2020年大統領選挙の結果やプロセスに疑問を呈し「誤解を招く」とされたコンテンツも調査対象だ。EIPは脅威とされるコンテンツをソーシャルメディア企業に報告し、削除または検閲を要請する。

EIPの責任者アレックス・スタモス氏は組織設立の趣旨として、政府が選挙関連の「虚偽情報」に対処する権限を付与されていないことの「ギャップを埋める」ためだと説明した。

なお、米国人の合法的な言論は憲法修正第1条で保護されており、政府は干渉できない。

2020年大統領選後に発表された最終報告書で、EIPは結果として(ソーシャルメディア上の)2200万件のオンラインコンテンツと数十個の「ストーリー」全体の削除や検閲を推進したことを手柄とした。

また、EIPに参画している機関は、新型コロナウイルスや2022年中間選挙に関する情報の検閲にも関与している。

CISAは、EIPの検閲の役割から距離を置こうとし、「誤った情報」である可能性がある事例をEIPに送ったことはないと主張した。

CISA報道官はエポックタイムズに対し「CISAは決して言論を検閲しない。CISAの使命は、選挙インフラを含む重要インフラを脅かす偽情報や、外国の悪意ある影響力工作に対する耐性を構築することだ」とメールで記した。

「我々は党派によらない立場から、州や地方の選挙関係者と協力し、選挙の実施と安全性に関する正確な情報を米国国民に提供しようと努めている。プラットフォームの運営者は今まで通り、プラットフォーム上のコンテンツについて独自の決断を下している」。

あるCISA関係者はエポックタイムズに対し、ソーシャルメディアにコンテンツ削除要請を送ることはないと言明した。

この主張は、他の機関で公開されている情報と齟齬があるように思える。
国土安全保障省(DHS)が出資している選挙インフラ情報共有分析センター(EI-ISAC)は、地方の選挙関係者に「誤った情報」や「虚偽情報」を同センターに報告するように促している。EI-ISACの関係書類によると、報告された情報はCISAに転送され、審査のためCISAが該当するソーシャルメディアに情報を報告していたという。

この齟齬について質問したところ、CISA関係者は、2018年と2020年の選挙期間では、地方の選挙関係者が選挙の安全保障に関連し得る「虚偽情報」として特定した情報を、CISAがソーシャルメディアに報告していたが、2022年の選挙期間ではそのような報告は行っていないと明らかにした。

 

優先順位の変化

トランプ政権でサイバー・セキュリティ・ポートフォリオを担当した元国務省職員のマイク・ベンツ氏は、官民連携の検閲機関を外交政策・政権交代インフラまで追跡した。

Epoch Times Photo
エポックタイムズの取材に応じる元国務省職員のマイク・ベンツ氏(The Epoch Times)

ソーシャルメディアはデモや暴動の増幅において大きな効果を有することから、米国の権力者は2000年代におけるソーシャルメディアの成長を好ましいものと捉えてきた。米国には、無法国家や独裁政権に対する地元の抵抗勢力を支持してきた長い歴史があり、「アラブの春」の蜂起で証明されたように、ソーシャルメディアの存在によりそのようなグループが大規模な抗議活動を迅速に組織できるようになったとベンツ氏は主張した。

このため、米国の外交政策関係者はインターネット上での表現の自由を支持するようになった。

しかし、2016年の英国EU離脱騒動とトランプ氏の当選を経て、権力者側は言論の自由を快く思わなくなった。双方の話題ともNATOを弱体化させるものと捉えられ、ソーシャルメディアにおける外国の影響、特にロシアの影響力工作の産物として非難された。そこで米英両政府は、オンライン上のロシアの影響力工作を特定・抑制するための官民連携機関を立ち上げる必要があるとの認識に至った。

しかし、トランプ氏のロシア疑惑に関する捜査が不発に終わったため、政府側もポピュリスト的なメッセージを推進しているのは主として国内の勢力であることを認めざるを得なくなったとベンツ氏は述べている。

この点から、外国の影響力に対処する機関は、国内における言論に注意するようになった。

しかし、憲法により米国人の政治的発言に対する政府の介入は禁じられているため、政府は合法的な国内の発言を公然と標的にすることはできない。このような法の壁があるにもかかわらず、政府は国内の検閲環境を間接的に支援する方法を見つけたとベンツ氏は指摘する。

ベンツ氏が見つけた方法の1つは、学術機関に「誤った情報」や「虚偽情報」に対する調査および対応措置の研究を行わせるために助成金を提供することだ。

医学分野を除く幅広い科学・工学分野の研究に対して研究資金を提供している米国立科学財団(NSF)はバイデン政権発足以来、「誤った情報」や「虚偽情報」への対策として、米国の42もの大学に4千万ドル近い資金を提供してきたことをベンツ氏は発見した。

EIP参画の機関のワシントン大学インフォームド・パブリックセンターおよびスタンフォード大学インターネット観測所には、助成金300万ドルが提供された。

また、米国内およびその他の数か国の政治家による「ポピュリスト的」メッセージに特に対抗するため、ジョージワシントン大学に助成金30万ドルが提供された。

基本的権利を侵害する大規模な検閲行為に不安を覚えたベンツ氏は、インターネット上での表現の自由を復活させるべく「オンライン自由基金」を設立した。

そして、検閲行為の暴露による効果が徐々に現れ始めている。

バイデン政権は昨年、国土安全保障省(DHS)が設置を計画していた「偽情報ガバナンス委員会」の設置中止を余儀なくされた。新たに指名されたばかりの委員長ニーナ・ヤンコヴィッチ氏は辞任した。

「今、私がもっぱらサポートを求めていることは、このことに非常な熱意を持って、仲間になって欲しいということだ」と、ベンツ氏は昨年12月のEpochTVの番組『OVER THE TARGET』で述べた。

「夕食の席で両親や妻、子供たち、そして友人に話してみよう。卓球の試合の合間に休みがあるなら、これらのYouTube動画を再生しよう。個人レベルで始めることができるのだ」。

「それらのコンテンツは見るだけで理解できる。今や多くの人々に知れ渡るだろう。一度見たものは、今後至る所で目にすることだろう。暗号の鍵が記された秘密の指輪のように、日々検閲された空間で見るニュースにわかりやすく切り込むことができる」。

ベンツ氏は最後にこう語った。「(ツイッターファイルは)この検閲という名のタイタニック号を沈める1つの破れた穴となるだろう」。

 

Petr Svab
ニューヨーク担当記者。以前は政治、経済、教育、法執行機関など国内のトピックを担当。
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