学食の料理から「ネズミの頭」 当局は「アヒルの首」と主張、隠蔽するためか=中国 江西

2023/06/09
更新: 2023/06/09

【閲覧注意】本記事には、不快な映像や画像があります。ご注意ください。

今月1日、中国江西省南昌市のある職業大学の学生は「学生食堂(学食)の料理からネズミの頭によく似た異物が出てきた」として、その異物を映した動画をSNSに投稿した。

しかし、学校側および現地の市場監督管理局は「これは(食べられる)アヒルの首だ」と主張し、責任を認めようとしない。

箸でつまんだのは「ネズミの頭」

「同じことは、中国のどこででも起きる」ということを、誰もが知っているからだろうか、ぞっとするような「ネズミの頭」の関連話題は、いま中国のSNSで大炎上している。米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)6日付が報じた。

SNSに投稿されたのは、学食での現場映像だった。見つけた学生が、ごはんや他のおかずに混ざった何か「黒色の異物」を箸でつまんで見せた。その異物とは、毛に包まれた小動物の頭部のようだ。

髭もある。ネズミなどの「げっ歯類」がもつ、特徴的な前歯(門歯)もはっきりと確認できる。大きさから形状まで、どう見ても「ネズミの頭」にしか見えないのだ。

 

いっぽう「アヒルの首」は中国語では鸭脖(ヤーボー)といい、日本ではあまり馴染みのない食材だが、食感が良いため、中国では大人から子供まで、おつまみの一種として人気がある。

そこで再度、比較検証するが、学食のなかから出てきた「前歯つき部位」は、どう見ても、アヒルの首ではない。
 

中国では人気のおつまみ「アヒルの首」のイメージ画像。

 

げっ歯類専門家「これは、ネズミだろう」

中国メディア「上游新聞」は30年以上げっ歯類を研究してきたという専門家に取材したところ、この専門家まで「映像が本物なら、80%の確率でネズミの頭だ」と太鼓判を押したという。

対比図。左が「本物のアヒルの首」。右が「ネズミの頭」。(大紀元)

「これはアヒルの首だ」と強弁する当局の発表に対し、極めて不服なネットユーザーは、いろいろなバージョンの「ネズミの頭」と「(本物の)アヒルの首」の対比図を作り、反論している。

その対比図から、これはどう見ても、アヒルの首と「同一のモノ」とは思えない。今夜の夢にも出てくるほど「ネズミの頭」に酷似しているではないか。

対比図。左が本物のネズミの頭。右が「アヒルの首」とされる異物だが、やはり左の写真にそっくり。(RFA記事より)

 

現在、SNS上では、猫がネズミを捕まえて「いいか、お前は『アヒルの首』だ。文句あるか!」といった内容の、事件にちなんだ面白動画まで広く拡散されている。

関連話題はネット上で炎上し、中国SNSウェイボー(微博)のホットリサーチ1位にランクインしたほどの注目ぶりである。特に「これはアヒルの首だ」といった大学や管理当局の、白黒を逆転させた「言い逃れ」に対するネット民の反発は強烈だ。

「とばっちり」で迷惑を被った人もいる

しかし、そんな中で、奇妙なことが起きる。発見者つまり「はじめの被害を受けた学生」が、なぜか「私が間違えました。やはりアヒルの首でした」と自分の間違いを認める声明を出したのだ。

当該の学生が突然主張を一転させたことをめぐり、ネット上では再度憶測が飛んだ。

それらは「これ以上、アヒルの首ではない、と言い張れば(この学生は)卒業できるかどうか危うくなる。学校推薦の就職にも影響する」など、就職難で苦しむ学生への同情の声が多い。そのようなネット上の指摘も、あながち的外れではないだろう。

さらには、この「ネズミの頭」事件の影響で、何の非もなく、全く無関係であるのに深刻な被害を受けた企業があった。

当局の「これはアヒルの首だ」の主張に対して、民衆の不信感やマイナスイメージが一気に膨張したため、中国国内に7千ほどの加盟店を有する「アヒルの首」専門店「絶味鴨脖」の株価が6月5日、なんと3%以上、下落したのだ。とんだ、とばっちりである。

新語「ネズミを指して鴨と為す」

ところで、今回の事件では「指鼠為鴨(ネズミを指して鴨と為す)」という新語まで登場した。中国語の「鴨」は通常、家禽のアヒルを指す。

これは、もちろん「指鹿為馬(鹿を指して馬と為す)」にちなんだものである。紀元前の秦の時代、秦の始皇帝亡き後の権力を握った趙高(ちょうこう)が、群臣の服従心を試すため、わざとこう言った。群臣のなかで「いえ、鹿でございます」と正直に答えたものは、後日、全て処刑されたという。

そこで今回の「指鼠為鴨(ネズミを指して鴨と為す)」は、明らかに道理に合わないことを「権力を背景に、無理やり言いくるめる」の意味だという。

中国の元教師である賈敏さんはRFAの取材に対し、この事件の背景について、こう分析した。

「私の理解では、一般的に、学校の食堂と契約することができるのは学校の重役の親族、あるいはどこかの高官の親族だ。部外者では決して契約できない」

「そのため、もし当局が、この件について本気で調査していくと、いろいろ不都合な問題が明るみに出るのかもしれない。そこで調査を望まない一部の人たちが、こうやって見え見えのウソをつくのだろう」

6月6日時点で、当局は「アヒルの首」ならぬ「ネズミの頭部」の問題について、さらなる検査を実施しているが、検査を担当する実験室の職員は「上游新聞」に対し、「検査結果は、依頼した市場監督管理局以外に口外してはならないことになっている」と明かしている。

(下図のように、わずか数日でこんなオモチャも登場したとは、驚くばかり)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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