焦点:台湾総統選、どちらが勝っても米国の対中戦略に課題

2024/01/10
更新: 2024/01/11

[ワシントン 5日 ロイター] – 13日に実施される台湾の総統選挙は、どの候補が勝った場合でも米政府に課題を突きつけそうだ。与党が勝利すれば対中関係が一段と緊迫化するのは確実とみられる一方、野党が勝てば台湾の防衛政策を巡って難しい問題が生じるかもしれない。

13日の総統選と立法委員(国会議員)選は、対中関係の安定を目指すバイデン政権にとって今年最初のワイルドカードとなる。

米政府高官らは、台湾の選挙に干渉するように見えないよう慎重を期している。

ニコラス・バーンズ駐中国大使は12月、「われわれが強く望むのは、選挙に脅迫や強制、あらゆる方面からの干渉が無いことだ。米国はこの選挙に関与していないし、今後も関与するつもりはない」と述べた。

米国はこのような「無関心」姿勢について過去に苦い経験がある。オバマ政権は2012年の台湾総統選の前、総統候補だった蔡英文氏が安定した対中関係を維持できないのではないか、との疑念を口にした米政府高官に眉をひそめた。

民主進歩党(民進党)の蔡氏はその年には敗れたが、2016年の総統選に勝って20年にも再選を果たし、実際に中国との緊張が高まった。

蔡総統は任期制限により再出馬できないが、中国は今回の民進党候補である頼清徳副総統に分離主義者のレッテルを貼っており、頼氏が勝てば軍事圧力を強めるだろうとアナリストは予想している。

民進党と最大野党の国民党はともに、平和を守ることができるのは自分たちだけだと主張し、台湾の防衛強化を約束している。両党とも、台湾の将来を決められるのは2300万人の市民だけだとしているが、国民党は台湾独立に強く反対している。

米政府も独立を支持しない姿勢だが、国民党の侯友宜・新北市長が勝利すれば、台湾の軍事的抑止力を強化する米国の努力が損なわれるのではないかとの懸念も政権内にはある。国民党は伝統的に対中融和路線を採りつつも、親中派であることは否定している。

過去に米国在台湾協会台北事務所(非公式の台湾大使)を務めたダグラス・パール氏は「(米)政府高官らは口では中立的だと言うが、中国に関する政策声明全般に現れている本心は、よく分からない国民党ではなく、自分たちが知っている民進党を支持しているというものだ」と解説した。

パール氏によれば、台湾は防衛投資拡大を巡って揺れており、国民党は軍事支出よりも良い平和維持の方法を模索している。軍事支出を増やしても、増税を伴うだけで中国の軍事力に対抗できる見込みはないと考えているからだ。

「ガザやウクライナで戦争が起き、米国の能力は限界に達し、米国内では将来の方向性が議論されている。こうした状況下では、多くの政権関係者にとって(台湾の)現状維持の方が望ましく見える」という。

バージニア州を拠点に米国と台湾の非公式な関係を取り扱う米在台湾協会のローラ・ローゼンバーガー会長は、昨年訪米した頼氏と侯氏の両方に会った。

米国務省報道官は「どの政党が政権を取っても米国の台湾政策は変わらない。われわれは、台湾の有権者が選んだ人物と共に働くことを楽しみにしている」と述べた。

一部の米政府関係者は、だれが勝っても中国は台湾に対して軍事的、経済的、外交的に圧力を強めてくると警戒している。

ある米政府高官は「外交、明確な対話チャネル、そして平和と安定、現状維持の重要性を再確認することが必要な時期が訪れるだろう」と語った。

<侯氏勝利なら防衛の時間稼ぎも>

米国の政策に詳しいある人物は、米高官らは台湾の各候補者と「深い関係を築いてきた」と説明。「重要な政策分野での継続性の重要性」を強調してきたと述べた。

米政府は長年にわたり、台湾自らが自衛に真剣に取り組むべきだと強調し、費用対効果が高く、機動的で破壊されにくい軍事資産に投資することで、中国の軍事行動に対抗し得る「ヤマアラシ」となる戦略を採るよう強く働きかけてきた。

米議会は台湾を強く支持しているが、この支持が損なわれる可能性があるとすれば、裕福な台湾が自衛能力を向上させるための公約を一時停止したり撤回したりした場合だろう、とアナリストは言う。

選挙で台湾の新政権と議会にねじれ現象が生じ、防衛政策が麻痺するようなことがあれば、米政府は当惑しそうだ。

国民党は民進党ほど防衛改革、支出に積極的ではないと懸念する見方がある一方、国民党が勝利すれば台湾海峡の緊張がある程度緩和する可能性もある。中国と台湾との緊張は、米中関係を巡る最も危険な問題だと中国は指摘している。

スタンフォード大学フーバー研究所のカリス・テンプルマン氏は、国民党の防衛協力への覚悟を巡る疑問はもっともだが、果たしてどの候補者が米国の利益にとってベストなのか、米政府内でもはっきり意見は分かれていると説明。「侯総統になれば中国との関係はある程度安定し、目先の脅威レベルが下がり、台湾が防衛改革を実施するための時間稼ぎができるかもしれない」と語った。

Reuters
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