2024年8月、大阪市の堂島取引所で、コメの価格に連動する指数先物「堂島コメ平均」の本格的な取引が始まった。政府は、この制度を、農家の収入安定や価格の透明性向上を目的として導入を認可した。しかし2025年春現在、米価は大幅な上昇傾向を示しており、中小の米穀店や飲食店の経営に悪影響が及び、一方で、一部の投資家や大手流通業者がこの状況を利益に変えているとの報道もあった。
農林水産省と経済産業省は、2024年6月、堂島取引所からの申請を認可し、同年8月13日から「堂島コメ平均」の取引が開始された。この指数先物は、農林水産省が毎月公表する相対取引契約の平均価格を基に算出されており、現物価格の指標としての役割も期待された。
農林水産省「米に関する統計」では、取引開始当初の2025年2月物は、60キロあたり1万8060円の終値で、取引上限価格に到達した。この価格水準は、農水省の2023年産コメの平均相対価格(約1万5千円/60キロ)を大きく上回っており、高値圏での推移が続いた。
農林水産省「令和6年産米の作況等に関する調査」によると、その後、2025年春にかけて米価はさらに上昇し、一部の取引では60キロあたり2万円を超える水準に達し、背景には2024年の猛暑や渇水、台風による作況の悪化に加え、生産資材費の高騰、円安による輸入米価格の上昇などが複合的に影響したと考えられている。また、2024年8月のFNNプライムオンライン の報道によると、指数先物取引の導入が市場心理に与えた影響について、複数の市場関係者は、「投資家による買いの動きが、価格形成に影響を及ぼした可能性があった」と指摘した。
実際、先物市場では、取引価格が複数日にわたり上限に達するなど、短期的な利益を狙ったとみられる動きも観測された。このような動きが「今後さらに値上がりするのでは」といった予測を呼び、2025年3月の帝国データバンク「米屋の経営実態調査」の結果によれば、卸売業者や投資家による在庫確保が原因で加速したとされた。仕入れ価格の上昇に対応しきれない中小の米穀店や飲食店では、価格転嫁が難しい状況に直面し、経営への影響が広がった。
帝国データバンクの調査(2025年3月発表)によると、米穀店の約2割が赤字となっており、廃業件数も2年連続で増加した。同調査では「販売価格への転嫁が追いつかず、仕入れコストの上昇が直接的な経営圧迫要因となった」と言う。
一方で、先物取引を活用し、価格変動リスクをある程度抑制できたとみられる大手流通業者や一部の投資家は、米価の上昇局面で利益を得たと言う。2025年3月のFNNプライムオンラインによれば楽天証券経済研究所の吉田哲・コモディティアナリストは「農家の収入の安定化だけでなく、外食産業が小売価格を値上げせずに済むなど、消費者にもメリットが期待される」と述べた。ただし、中小の事業者にとっては、こうした制度の恩恵を十分に享受できなかった現状があると言う。
政府は制度導入にあたり、先物取引による価格形成の透明性向上と、市場指標としての機能を重視していたが、取引開始初期の流動性の低さや、急激な価格変動に対する規制措置の不十分さが課題として浮上した。今後は、中小業者への支援策や市場監視体制の強化など、制度の持続的な改善が必要だと言う。
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