トランプ氏の貿易・製造業担当のピーター・ナバロ氏は4月30日、2025年1〜3月期のGDPが年率0.3%減となったことについて実際には好材料だと述べた。市場関係者に対して「本質を見極めるべきだ」と呼びかけた。
ナバロ氏は米経済専門チャンネルCNBCに出演し、「アメリカ国内での民間投資は22%増加している。もし在庫調整と関税に伴う輸入の急増を除けば、実質的には経済成長率は3%に達している」と語った。
その上で「今日発表されたこの数値は、私が見てきた中で最も良い『マイナス成長』だ。市場関係者はより深く分析する必要がある。22%という国内投資の増加は驚くべきことだ。関税を見越した輸入増と在庫の影響を取り除けば、我々の経済はしっかり成長している。我々は現在の状況に満足している」と強調した。
米商務省が同日に発表した統計によると、2025年1~3月期の実質GDP(季節調整済み)は0.3%減となり、2022年第一四半期以来初めてマイナス成長となった。
主因として、在庫投資の減少や輸入の急増が挙げられている。
また、GDPの約7割を占める個人消費支出は、前期比で1.8%増と、2023年半ば以来最も小幅な伸びにとどまった。連邦政府支出も減少し、政府効率化に伴う人員削減や契約件数の減少が背景にある。
発表を受け、ニューヨーク株式市場ではダウ工業株30種平均、S&P500種指数、ナスダック総合指数の3指数がいずれも下落した。
こうした株価の動きに対し、トランプ氏は自身のSNSアカウントで「これはバイデン氏の株式市場であって、私のものではない。私が政権を引き継いだのは1月20日だ」「我々はバイデン氏の『遺産』から脱却しなければならない」と投稿し、現状の責任はバイデン前政権にあると主張した。
一部の経済学者もナバロ氏と同様の見解を示している。
ベルギーの著名な経済学者であるポール・デ・グラウウェ氏は米誌『ニュースウィーク』に対し、「第1四半期のGDP減少は、関税導入を見越した一時的な輸入の急増によるものであり、長期的な傾向ではない」と指摘。「ただし、企業や消費者に悲観的な心理が続けば、今後の消費支出が減退するリスクがある」とも述べた。
同日発表された商務省の別の報告書によると、3月の個人消費支出は年初来で最も強い伸びを記録した。とくに自動車販売が好調だった。多くの家庭が、関税が正式に発動される前に自動車を購入しようとする動きが背景にあるとみられる。
また、経済全体の規模は縮小したものの、企業の設備投資にあたる商業用固定資産投資は前期比で9.8%増と大きく伸びた。これにより、生産性や雇用の向上など長期的な成長効果が期待される。
米銀大手ウェルズ・ファーゴのエコノミスト、シャノン・グリーン氏も、「見出しで強調された経済鈍化は誇張されている。多くは関税を見越した輸入の前倒しによるものだ。全体的には需要が底堅い」との分析を示した。
一方で、より慎重な見方を示す専門家もいる。米格付け会社ムーディーズのチーフエコノミストであるマーク・ザンディ氏は、今回のGDP速報値は確かに成長鈍化を過大評価している可能性がある。しかし、実際には経済は減速傾向にあると述べた。
また、個人消費の伸び悩みや政府支出の減少、4月に入っての消費者信頼感の低下などについて、「憂慮すべき兆候だ」と指摘した。
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