イギリス政府は12日、外国人の長期滞在に関する要件を大幅に厳格化する方針を発表した。ケア・スターマー首相が同日の記者会見で明らかにしたもので、就労や家族、留学など全ての入国管理分野で規制を強化し、移民の流入抑制と国民の不満解消を目指す。背景には、近年の移民増加による社会的な懸念や、労働市場への影響がある。
今回の方針では、就労ビザをはじめとする各種ビザ申請者に対し、英語力の基準を従来よりも高いレベルに引き上げる。
さらに、永住権や市民権の申請に必要な滞在期間も、従来の5年から10年へと倍増される。例外的に、医療従事者やエンジニアなど、イギリス経済や社会に大きく貢献したと認められる人材には、早期申請が認められる場合がある。
スターマー首相は記者会見で、「この国で暮らすことは権利ではなく特権であり、移民制度を厳格化することで、国民の信頼を取り戻す」と強調した。「移民はイギリスの歴史の一部であり、貢献も大きいが、制度の乱用やコントロール喪失は許されない」と述べた。
一方で、外国人労働者への依存度が高い医療・介護分野などからは、労働力不足への懸念や、制度変更が現場に与える影響を懸念する声も上がっている。特に、海外からの介護職員の新規受け入れ停止や、技能労働者ビザの学位要件引き上げなどが、現場の人材確保に影響を及ぼす可能性が指摘されている。
今回の改革は、イギリス国内で高まる移民への不満や、右派政党による反移民世論の影響も背景にある。実際、2023年には純移民数が約90万人に達し、2024年も70万人超と高止まりしている。政府は「厳格化によって移民数は大幅に減少する」としているが、経済や社会への影響については今後も議論が続く見通しだ。
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