アメリカ連邦議会の共和党議員らが、ハーバード大学と中国共産党・イラン政権との不適切な協力関係を問題視し、内部文書提出や証言を求めて調査を要求した。学術機関の国際協力が国家安全保障上のリスクとなる可能性が注目されている。
議会教育労働委員会や対中国共産党(中共)特別委員会の主要メンバーが連名で、同大学のアラン・ガーバー学長に透明性のある説明を要求した。彼らは学術機関の国際協力が国家安全保障上のリスクに繋がる可能性に警鐘を鳴らしている。
3議員が連名で糾弾
公開書簡には、エリーズ・ステファニク下院共和党会議議長、アメリカと中国共産党の戦略的競争に関する選考委員会のジョン・ムーレナー委員長、ティム・ウォルバーグ教育労働委員会委員長が署名した。公開書簡ではハーバード大学が「中国共産党の影響力拡大を支援している」と批判しており、6月2日までに内部文書の提出と関係者の証言を求めている。
ムーレナー委員長は「特別委員会の調査が真相を明らかにし、ハーバードにアメリカ国民に説明責任を果たさせる」と表明。ステファニク議長は「学術交流を隠れ蓑に、中国共産党の軍事近代化やイランの技術野望を助長してはならない」と強く牽制した。
具体的な5つの疑念
議員らが指摘した問題点は以下の通り
1.臓器摘出問題との関連
中国共産党が信仰団体や少数民族から大規模な臓器摘出を行っている状況下で、ハーバードは敏感な医学研究協力における透明性と監視体制を欠いている。
2.新疆生産建設兵団との関係
ウイグル人迫害の中心的存在とされる同兵団のメンバーを訓練・受け入れ。同兵団は2020年にアメリカの制裁対象となった準軍事組織である。
3.イラン政府系資金の研究協力
イラン政府の代理人から資金提供を受けた研究を中国の研究者と共同実施。
4.国防総省資金の不適切使用
中国の清華大学や浙江大学など中共軍と関係が深い大学と、米国防総省の研究資金を用いて共同研究を推進。
5.軍事技術転用の懸念
中国共産党の国防関連産業と連携する個人との研究協力が、中共の軍事力強化に寄与する可能性。
「第二の中共党学校」と呼ばれる深い関係
元下院議長のニュート・ギングリッチ氏は過去に「中共が最も注視する米大学」としてハーバードを挙げていた。同大学ケネディ・スクールは過去20年間で1千人以上の中国共産党幹部や軍将軍を育成し、「中共の第二の党学校」と揶揄される実態が明らかになっている。
ハーバード大学は、議員たちからの公開書簡にまだ返答していない。
議員たちは、ハーバードに対して内部文書の提供を求めており、グローバルヘルス政策と経済学の教授であり、全校の中国健康パートナーシップのディレクターであるウィニー・イップ氏を含む官僚の証言を要求している。また、提出期限は6月2日と設定している。
ウォルバーグ委員長は「いかなる米大学も、中国共産党の影響力拡大や米国民抑圧、国家安全保障の侵害に加担すべきでない」と結論付けており、今後の議会調査の行方とハーバード大学の対応が注目される。
トランプ政権はハーバード大学に対する連邦資金の大部分を削減している。ハーバード大学の校刊『ハーバード・クリムゾン』によれば、最近、100人以上のハーバードの研究者が連邦資金による研究プロジェクトの終了通知を受け取り、ガーバー学長も象徴的に2026年度に25%の給与削減通知を受けた。
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