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アメリカ社会 検察は新たな令状を求めることができると判事が述べた

米連邦判事 米司法省へ「コミー元FBI長官側近の押収データ」返還命令 裁判所はコピー保持

2025/12/16
更新: 2025/12/16

アメリカ連邦判事は、アメリカ司法省(DOJ)に対し、2017年から2020年の間にジェームズ・コミー元FBI長官の長年の側近から押収・取得した全ての資料を返還するよう命じた。これは、自身が所持していた資料がコミー元長官を捜査するために誤用され、憲法上の権利が侵害されたと主張する側近である原告の訴えを認めたものである。

コロンビア特別区連邦地方裁判所のコリーン・コラー=コテリー判事は12月12日の決定で、司法省の行為は法学教授ダニエル・リッチマン氏の合衆国憲法修正第4条の権利を侵害したと裁定した。

司法省は2017年から2020年の間に、コミー元長官が解任後に機密資料を漏洩したかどうかの捜査を行った際、リッチマン氏の私用コンピューターやオンラインアカウントから特定のファイルをコピーして保持し、元の令状で許可されていないさらなる捜査にこれらのファイルを使用した。判事は、この司法省の行為が「不当な捜索および押収から免れる」とするリッチマン氏の権利を侵害したものだと判断した。

判事は、「この押収は不当である。なぜなら、今年初めに政府が令状なしに行ったファイルの捜索によって、政府が、それらのコピーが政府の管理下にある間、不法なアクセスから保護するための効果的な安全措置を実施していなかったことが明らかになったからだ」と記した。

コラー=コテリー判事は、リッチマン氏からコピーされた資料が原告の憲法上の権利に対して「冷淡な無視」をもって取り扱われていたと述べ、最近の令状なしの資料捜索を「甚だしい議定違反」と呼んだ。

コラー=コテリー判事は、政府の主張に説得力がないとした。

政府は、リッチマン氏の申立てを認め、資料を返還すると、コミー氏に対する捜査や訴追に悪影響(付随的影響)が出る可能性があるため、申立てを却下すべきだと主張していた。

しかし判事は、リッチマン氏には憲法上の権利侵害に対する救済として自身の財産(押収されたデータ)の返還を受ける権利があるため、政府が主張する「捜査への影響」を理由にこの申立てを否定することはできない、と記した。

しかし、判事はリッチマン氏の申立てを部分的にのみ認め、一時的差し止め命令の要求は無意味であると宣言した。

その代わりに、コラー=コテリー判事は、資料がリッチマン氏に返還される前に、政府は「これらの資料の完全な電子的コピーを1部作成し、封印の上、バージニア州東部地区連邦地方裁判所に預けることができる。同裁判所は、この資料へのアクセスに対する監督権限を持ち、将来的に合法的な捜索令状と司法命令に従ってアクセスすることを許可する」と裁定した。

これにより、リッチマン氏に対する侵害に対処するとともに、「政府が将来の捜査や訴追を行うことを妨げることはない」と判事は述べた。

「リッチマン氏は、政府が将来的に別の捜査や法的手続きで、押収されたデータを使用したり、それに依拠したりすることを完全に禁止する命令を受ける権利はない。ただし、政府がその資料を使用したり依拠したりするには、必ず有効な令状(捜索差押許可状)と司法命令を改めて取得する必要がある」というのが判事の判断である。

コラー=コテリー判事によると、検察はファイルへのアクセスを再度得るために新たな令状を求めることができる。

司法省は12月15日までにリッチマン氏に資料を返還しなければならない。今回の命令は、私用コンピューターのコピーに加えて、リッチマン氏のEメールまたはApple iCloudアカウント(コロンビア大学のEメールアカウントを含む)の画像にも関連する。

判事は先週、リッチマン氏の弁護士が提出した緊急申立てに対応し、裁判所の許可なしに司法省が資料にアクセスすることを一時的に阻止していた。

司法省、コミー氏を起訴

司法省は9月、コミー氏をバージニア州で起訴した。罪状は、2020年に議会に対して虚偽の陳述をしたこと、および機密情報が含まれているとされるメモの漏洩を承認したことを否定した際に議会を妨害したことである。コミー氏は当時、FBI職員が匿名でメディアに情報を提供したと証言したが、司法省はこれが2018年の議会での証言と矛盾すると主張した。

コミー氏は無罪を主張した。しかし、11月に判事が検察官リンジー・ハリガン氏の任命が違法であると裁定した後、起訴は棄却された。

コミー氏は2018年に、トランプ大統領にFBI長官を解雇されたが、その解雇は、彼がヒラリー・クリントン元国務長官の私用Eメールサーバー使用問題に対する訴追を拒否したことが原因であったとされる。

解雇後、コミー氏は自身の個人的なメモの一部をリッチマン氏に漏洩したと証言した。これらのメモは、トランプ大統領との会話の記録であり、そのうちの1通には機密情報が含まれていたとされる。

コミー氏は2018年に、メモはトランプ氏との会話の記録であるため「私的な文書」だと考えていたと述べた。また、文書を漏洩した意図は、ロシアによる選挙干渉疑惑の捜査を継続するための特別検察官の任命を促すことであったとし、ロバート・ミュラー特別検察官の任命によって成功したと述べている。

2019年、司法省監察官による捜査が行われた。その結果、コミー氏のメモの取り扱いに関して組織内部の規則に反する行為はあったものの、刑事告発には至らないとの判断が出た。これを受け、ウィリアム・バー司法長官下の司法省は、メモによって機密要素が公開されたとする疑惑を訴追しないことを決定した。

しかし、司法省は9月、以前リッチマン氏から取得した資料に依拠してコミー氏を起訴した。

このため、今回の訴訟において司法省はコラー=コテリー判事に対し、以下のように主張した。

「リッチマン氏の訴え(データ返還を求める)は、コミー氏の捜査と訴追に対する、不適切な攻撃に過ぎない。したがって、申立人リッチマン氏への財産返還は法的に認められる救済手段ではない」。

司法省が出していた一時的差し止め命令解除の申立ては、判事の最終的な裁定が出たため、こちらも無意味として却下された。

世界のニュースを取材・編集する記者。環境調査の経験あり。