【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

アルゼンチンWHO脱退と米国医療協力 ミレイ政権の狙いと今後

2025/05/29
更新: 2025/05/29

アルゼンチン政府は5月26日、世界保健機関(WHO)からの正式な脱退を発表した。これに伴い、同国はアメリカとの医療分野での協力深化を改めて強調した。現在、アメリカのロバート・F・ケネディ・ジュニア保健長官がアルゼンチンを訪問中であり、両国の連携強化が進められている。

ハビエル・ミレイ大統領は声明を発表し、WHO脱退の理由を説明した。声明によれば「WHOは新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック時の指令において、科学的根拠ではなく政治的利益に基づいて対応し、誤りを反省しない官僚主義に支配されていた」と指摘。アルゼンチン政府は以前から、WHOがパンデミック時に推奨した隔離政策について「壊滅的だった」と批判してきた。

ミレイ政権は今年2月、WHO脱退の意向を初めて表明し、1月に同様の決定を下したアメリカのトランプ大統領に追随する姿勢を示していた。

今回の正式発表と同時期に、アメリカのケネディ保健長官がアルゼンチンを訪問。現地ではマリオ・ルゴネス保健相と会談し、両国の医療システムの透明性と信頼性向上を目指す共同作業計画で合意した。今後は、予防医療、食品安全、衛生支出の効率化などを重点分野として協力を進めていく。

ケネディ長官は先週のWHO年次総会で事前収録したビデオメッセージを公開し、各国政府に対しWHOからの脱退と新たな機関設立を呼びかけた。彼は演説で「WHOはCOVID-19対応で北京に妥協し、職責を果たさなかった」と厳しく批判。「WHOは官僚主義、硬直した運営、利益相反、国際的な強権政治に深く絡め取られている」と述べ、アメリカの脱退を他国への警鐘と位置付けた。さらに「志を同じくする国々と連携を進めており、他国にも参加を呼びかけている」と明かした。

ケネディ長官のアルゼンチン訪問は、地域連携と衛生政策の調整を目的とした国際的な活動の一環である。

財政面では、アルゼンチンのWHO脱退による経済的影響は限定的と見られる。2024~25年の間、アルゼンチンのWHOへの拠出金は800万ドルにとどまる。一方、アメリカはWHO最大の資金提供国であり、過去2年間で約10億ドルを拠出。そのうち約2億6千万ドルが会費、残りは寄付金で、WHO予算の18%を占める。

また、ミレイ政権はアルゼンチンの医療機関に対し「構造的な見直し」を実施すると発表。長年にわたり重複や時代遅れの規則、監督の不十分さが指摘されてきた制度やプロセスの刷新と透明化を進める方針だ。さらに、全ての国家機関を対象に「非効率と官僚主義の排除」を目的とした審査を命じている。

アルゼンチンとアメリカによる国際的な医療連携の強化と、国内の医療制度改革が今後どのように進展するかが注目される。

林燕