トランプ政権はハーバード大学への補助金凍結と留学生受け入れ制限の方針を強化し、両者の対立が深刻化している。留学生や教育界への影響、訴訟の進展、今後の展望について詳述する。
国際学生にとって、ハーバード大学の立場は依然として不安定な状況にある。連邦裁判官が一時的にハーバードへの外国人学生受け入れ禁止を無効化したが、この措置以前から多くの学生が不安と混乱に直面していた。中には帰国便のキャンセルを決断し、合法的にアメリカにとどまるため法的助言を求める学生も存在する。
争いの発端
先月、アメリカ国土安全保障省(DHS)のクリスティ・ノーム長官が、ハーバード大学に対して国際学生に関する情報提出を要請した。対象は各学生の履修内容、ビザ保持者の行動記録に加え、過去5年間に違法または危険と見なされる抗議活動へ関与した学生の映像資料にまで及ぶ。
数週間にわたる交渉の結果、ハーバード大学は一部の要求を拒否した。5月22日、ノーム長官は学生・交流訪問者プログラム(SEVP)認証の終了を命じたため、同大学は今後外国人学生の受け入れ資格を失うこととなった。現在在籍する数千人の留学生は、転校または出国の選択を迫られる。
2025-2026学年度、ハーバード大学はFビザ(学生ビザ)およびJビザ(交流訪問者ビザ)の発給対象校としての資格を喪失する。F-1ビザは外国人学生がアメリカの大学で学ぶ際に必要であり、J-1ビザは認可された教育・文化交流プログラムの参加者向けのものである。
ノーム長官は声明で、今回の措置の理由を明確にし、「政権はハーバード大学による暴力・反ユダヤ主義の助長、および中国共産党との共謀に対して責任を追及する」と述べた。また、大学側が是正の機会を繰り返し得ながら、それを拒み続けた点を批判した。
これに対し、ハーバード大学は5月23日にトランプ政権を提訴した。大学側は、今回の措置が政治的報復であり、合衆国憲法修正第1条に違反し、「ハーバード大学および7千人以上のビザ保持者に直接的かつ深刻な損害をもたらす」と主張している。
連邦裁判官は同日中に仮差し止め命令を発し、政権の政策執行を一時的に停止させた。
最近、トランプ政権はハーバード大学への連邦補助金数十億ドルの凍結措置も講じた。これに対し大学側は訴訟を起こし、資金の回復を目指している。加えて、政権はハーバード大学の非課税資格の剥奪、寄付基金への課税強化、民権法違反の有無を調査対象としている。
ハーバード大学名誉法学教授アラン・ダーショウィッツ氏は、5月27日のFOX番組に出演し、ハーバード大学に対する制裁の必要性を訴えた。ダーショウィッツ氏は、大学の反ユダヤ主義的姿勢を問題視し、「資金提供の絞り込みは効果的であり、全米に広がる反ユダヤ主義への適切な対応だ」と評価した。
ただし、すべての資金を断つという考えには慎重な姿勢を見せ、「行き過ぎの可能性はあるが、大統領の意図は善意によるものであり、一定の措置は必要だ」と述べた。
仮差し止め命令の影響
5月23日、連邦裁判官は仮差し止め命令を発し、ハーバード大学による国際学生の受け入れを継続可能にした。この措置により、同大学は訴訟審理中も国際学生や研究者を受け入れる体制を維持でき、今学期の卒業生も予定通り卒業式に参加できる。
ハーバード大学の発表によれば、F-1およびJ-1ビザプログラムは再開しており、学生および研究者は学業・研究を継続できる環境が整っている。現在ビザを所持し、キャンパスに滞在している学生の身分は有効であり、出国や転校の必要はないと大学側は説明する。
一方、ビザをまだ取得していない、または国外にいる学生にとって、今後の見通しは依然として不透明である。大学は公式ウェブサイト上で、入国予定の学生に対し、必要書類の準備と冷静な対応、ならびにフライト情報を含めた旅行計画を家族や友人に共有するよう勧告している。これにより、入国に支障が生じた際、代理人が大学の国際オフィスに迅速に連絡を取れる体制が整う。
大学の公式サイトには、「一部の学生および研究者が再入国に成功した事例があるが、各自が自身のリスクを見極め、最適な判断を下す必要がある」と記されている。
今後の展開
ハーバード大学とトランプ政権の対立に関する重要な法廷審問は5月29日に予定されており、裁判官は仮差し止め命令の延長の是非を判断する見通しである。
さらに、ハーバード大学は政権に対して別件の訴訟も提起しており、6月中に審理が予定されている。この訴訟では、政府による補助金凍結や非課税資格の見直しに対して異議を申し立てる。
両件を担当する裁判官は、オバマ政権下で任命されたアリソン・バローズ氏である。
仮にハーバード大学が勝訴したとしても、問題の終結には至らない可能性がある。トランプ政権が上級裁判所に控訴し、下級裁判所の判断を覆す手段が残されているからである。
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