オランダのルーベン・ブレケルマンス国防大臣は5月31日、中国共産党(中共)によるオランダへのスパイ活動が激化しており、特に半導体産業が主要な標的になっていると述べた。
ロイターによると、ブレケルマンス氏はシンガポールで開催されたアジア安全保障会議「シャングリラ・ダイアローグ」の期間中に、「我が国は半導体産業において技術的に先行しており、それが中国(中共)にとって知的財産の面で強い関心を引いている」と語った。
半導体製造の中核を担う技術はリソグラフィー(露光)であり、オランダのASML(エーエスエムエル)社は、世界で唯一、極端紫外線(EUV)露光装置を製造できる企業である。EUV装置は、電気自動車(EV)から軍事装備に至るまで、最先端の半導体チップの製造に不可欠な設備だ。
EUVは、波長が約13.5ナノメートルの非常に短い波長の光を指している。EUV露光とは、7nm以降の微細回路パターンをシリコンウェーハ上に転写(露光)するための技術。
ホワイトハウスは5月23日、中国へのEUV装置の輸出を制限することについて、「半導体分野における最も重要な輸出管理措置」と位置づけている。
これまでもオランダの情報機関は、中国(中)からのサイバー攻撃を複数確認しており、その目的はASMLの知的財産の窃取だったと報告している。
オランダ軍事情報・保安局(MIVD)は、2024年4月に発表した年次報告書で、中共によるスパイ活動がオランダの半導体、航空宇宙、海事産業を標的としており、それが中国の軍事力強化に結びついていると警告している。
スパイ活動が現在も続いているかとの質問に対し、ブレケルマンス氏は「その通りだ、続いている。情報機関の最新の報告では、現在オランダに対する最大のサイバー脅威は中国に由来しており、確認されたネットワーク活動の大半が中国から発信されているということだ。これは昨年も同様でしたが、現在はその活動がさらに活発になっている」と述べた。
オランダの情報機関は昨年、初めて中共によるサイバー諜報活動を名指しで非難し、2023年には中共支援のハッカーがオランダ軍のネットワークに侵入していたことを明らかにしている。
ブレケルマンス氏は「国家安全保障はオランダにとってかつてないほど重要な課題になっている」と述べ、「中共は経済的地位を地政学的な手段として利用し、我々に圧力をかけている」と警鐘を鳴らした。
また、オランダでは重要産業や国家の中核的利益を守るための制度がすでに整備されているが、同氏は「オランダおよび欧州全体として、中国への重要資源の依存度を引き下げる必要がある」と強調した。
「EUレベルでも各国レベルでも、この依存を減らす取り組みをさらに強化すべきだ」と語った。
さらに、軍事情報保安局は今年4月22日に発表した年次報告書で、ロシアが欧州社会の不安定化を狙って“ハイブリッド攻撃”(軍事と非軍事の手段を組み合わせた攻撃)を強めていると指摘。中国がロシアの軍事行動を支援し、台湾に対して攻撃的な姿勢を取り続けていることから、ヨーロッパにとって引き続き深刻な脅威であると警告している。
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