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マスク氏VSトランプ氏 対立状態は長く続かないだろう

2025/06/20
更新: 2025/06/20

米実業家イーロン・マスク氏とトランプ米大統領には賛否があるが、いずれも非常に強い個性を持っている点で共通している。両者は並外れた自信、主導力、粘り強さ、強い自我、揺るがぬ信念を備えており、これらがなければ、それぞれの分野でこれほどの成功を収めることは不可能と思える。

米政府効率省(DOGE)のトップにマスク氏が任命された時点で、すでに注目の組み合わせとされていた。両者がそれぞれ築き上げた実績やカリスマ性を考えれば、協力によって何が達成できるのか期待が高まった。この二人が強力なチームを形成する可能性は明白である一方、巨大なエゴ同士の衝突も避けられないと見られていた。

最近の両者の対立は、連邦政府の大幅な縮小を望む多くの米国民にとって望ましいものではなかった。一方で、この衝突は野党やDOGEの目標に反対する勢力にとっては歓迎すべき事態となった。

いくつかの視点からこの対立を見てみよう。

そもそも、マスク氏が「沼の排水」(政府の腐敗排除)の先頭に立つ人選として注目されたのは興味深い。マスク氏の経営手腕や問題解決力は伝説的だが、一方でワシントン・ポストによれば、マスク氏の企業は約380億ドルもの政府補助金や融資、税制優遇を受けてきたという。数字の正確性には不明点があるものの、連邦政府から多大な支援を受けていることは事実である。

一見すると、マスク氏が政府支出削減の責任者に任命されるのは奇妙に思えるかもしれない。

しかし、より詳しく見ると、マスク氏は政府からの支援による私利よりも国家の利益を優先しようとする人物であることがわかる。弊紙『エポック・タイムズ』のジャック・フィリップス氏によれば、昨年マスク氏はトランプ支持を表明した。その理由は、トランプ氏が「電気自動車に対する連邦義務を廃止する」と約束したからである。それは、マスク氏の主力企業テスラにとって不利な内容であったにもかかわらずだ。

多くの経営者は、政府支援の打ち切りを公約する候補を支持しないが、マスク氏は例外であった。フィリップス氏の報道によれば、マスク氏は「それ(EV義務撤廃)が全員に平等に適用されるなら、自分は競争できる」と語ったという。この姿勢は、マスク氏が特定の利権に依存せず、公平な競争の場で勝負する愛国者であることを示している。

マスク氏が最近、議会や大統領、ワシントンの腐敗に対して激しい言葉を投じているのは、怒りや失望、挫折、そして裏切られたという思いが背景にあると思われる。彼は多くの時間を費やしてきたが、本来であればその時間を自身の企業に注力し、さらなるリーダーシップを発揮するために使うべきだった。

それにもかかわらず、政府支出削減のための並々ならぬ努力が無駄に終わったように見えることは、彼にとって非常に辛いことであったに違いない。彼がトランプ氏肝いりの「ビッグ・ビューティフル・ビル法案」を「忌まわしい」と評し、議会を弱腰で臆病、さらには暗に腐敗していると非難したことに、私は特に違和感を覚えない。議会が米国民を裏切り、特定の利権や既得権層に屈した結果だからである。

では、トランプ大統領はどうか。彼が議会に「ビッグ・ビューティフル・ビル」法案の可決を促したことで、単純に悪者とされるべきだろうか。確かに、大統領自身が自らの歳出法案を熱烈に支持する姿に嫌悪感を抱く人がいても不思議ではない。しかし彼はこれまで、ばかげた過剰な政府支出に対して一貫して強く反対してきた人物である。

しかし、状況が厳しさを増すなかで、彼が現状維持に過度な譲歩をしているように見えるのは否めない。では、トランプ大統領は偽善者なのか、それともそれ以上に悪質な存在なのか。私はそうは考えない。

一体何が起きているのか。それは、結局のところ「その人がどこに座っているか(立場)」によって異なるのだ。民間人としてのトランプなら、間違いなくビッグ・ビューティフル・ビル法案に含まれる以上の歳出削減を求めていただろう。だが彼はいまや大統領であり、つまり政治家なのだ。政治についての古い格言を覚えているだろうか?「政治とは妥協の産物であり、可能性の芸術である」(ビスマルクの言葉)という言葉がある。

ビッグ・ビューティフル・ビル法案には、トランプ氏が個人的に嫌悪している要素もあるだろう。だが、法案を通すために必要な票を確保するには、好ましくない妥協も避けられないという政治的現実を、彼は理解している。

そう考えれば、イーロン・マスク氏が苛立っている相手はトランプ氏個人ではなく、連邦議会における政治の現実そのものだと言える。

トランプ氏とマスク氏の今後の関係がどうなるかは誰にも分からないが、対立がすでに解消に向かっているという明確な兆しがある。

マスク氏自身も、SNSでトランプ氏に対して攻撃的な投稿をしたことについて「言い過ぎた」と反省を表明している。

フィリップス氏の記事によれば、トランプ氏はマスク氏の怒りの爆発を、国を思う本物の愛国心からくるものであり、個人攻撃ではなかったと受け止めており、すでに許している可能性もある。

逆にマスク氏も、大統領であってもすべてを思い通りに進められるわけではなく、必要な票が得られなければ目標を達成できないという政治の現実を理解すれば、トランプ氏を許せるだろう。

トランプ氏とマスク氏の関係が今後どうなるにせよ、私たちにとって重要なのは「ビッグ・ビューティフル・ビル法案」には良い点も悪い点も含まれているということだ。良くも悪くも、それが2025年夏のアメリカ政治の現実である。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
経済学者であり、ペンシルベニア州のグローブ・シティ大学の教授を退職した後、同大学の「信仰と自由研究所」において経済・社会政策のフェローを務めている。アメリカ経済史、聖書に登場する人物、富の不平等問題、気候変動など多岐にわたるテーマについての著書を複数執筆している。