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「アリゲーター・アルカトラズ」とは何か ワニ3万匹に囲まれた不法移民収容施設の実態

2025/07/04
更新: 2025/07/04

7月1日、フロリダ州エバーグレーズの奥地で、米国の最新の不法移民収容・送還施設「アリゲーター・アルカトラズ」が稼働し始めた。州当局による建設発表からわずか8日という異例のスピードで建設された。

新設された施設は仮設建物を集めた複合体で、最大で不法移民3千人を収容可能で、職員1千人が滞在できる。すぐ隣には全長約3200メートル、幅約46メートルの滑走路が整備されており、施設の建設費用の大部分は米国国土安全保障省によって賄われた。

「ここに何があるのか、考えてみてください」と、フロリダ州のロン・デサンティス知事は1日に語った。

また、デサンティス知事は「国外退去命令を受けた者がここに来る。彼らを滑走路までのおよそ600メートル運べば、送還は完了する。この施設は、収容から送還までを一貫して行える「ワンストップ」の仕組みであり、併設された空港は長年にわたり厳重なセキュリティを維持してきた。これは大きな転換点になる」と語った。

7月1日、フロリダ州オチョピーにある「アリゲーター・アルカトラズ」を視察するトランプ大統領(Andrew Caballero-Reynolds/AFP via Getty Image)

今年初め、デサンティス州知事は不法移民の流入を受けて非常事態を宣言し、緊急事態対策責任者のケビン・ガスリー氏に対し、マイアミ・デイド郡の飛行場を接収し、施設建設に着手するための緊急権限を付与した。

ガスリー氏は、「13社を超えるベンダーが結集し、わずか8日間でこのプロジェクトを完遂した。これはまさに、民間セクター全体による真のパートナーシップの成果である」と述べた。

また、「背後にある設計図を見れば分かるとおり、8日間で最大3千人を収容可能な、すべての規制に準拠した拘置施設を建設した。要請があれば、さらなる収容能力の拡張も可能である。この施設には約1万4700平方メートルを超える居住スペースがあり、最大風速約177キロメートル、すなわちカテゴリー2の強風にも耐えうる、全アルミ製フレーム構造となっている」と強調した。

この施設には、職員向けの居住エリア(いわゆる職員村)をはじめ、冗長化された電源システム、空調設備、1日3回の温かい食事を提供する体制、24時間対応の医療施設、薬局、ランドリーのほか、法律および聖職者による支援体制、屋内外のレクリエーションスペースも完備されている。

7月1日、フロリダ州オチョピーにある「アリゲーター・アルカトラズ」を視察するドナルド・トランプ大統領(左から2人目)、フロリダ州のロン・デサンティス知事(左)、クリスティ・ノーム国土安全保障長官(右)(Andrew Caballero-Reynolds/AFP via Getty Images)

この施設は、通称「アリゲーター・アルカトラズ」と呼ばれており、マイアミ市中心部から西へ約80キロ離れたハイウェイ41号線沿いに位置している。周囲は、全長約8.5キロに及ぶ有刺鉄線と、約16キロ以上広がるエバーグレーズ湿地に囲まれている。警備体制も極めて厳重であり、フロリダ州兵200人を含む400人超の警備要員が配置されているほか、監視カメラも200台以上設置されている。

フロリダ州のジェームズ・ウスマイヤー司法長官は、周囲の自然環境そのものが障壁となっている点を踏まえ、この施設を「アリゲーター・アルカトラズ」と称している。サンフランシスコのアルカトラズが実際の島であるのに対し、フロリダ版は、アメリカアリゲーターをはじめとする脱走を阻む野生動物が生息する沼地に囲まれた、アスファルト舗装の「陸の孤島」となる予定である。

本施設は1970年代初頭にビッグサイプレス国立保護区内に建設された。国立公園局によれば、この保護区には約3万匹のアリゲーターをはじめ、アメリカワニ、ビルマニシキヘビ(アリゲーターを捕食することもある)、ダスキーピグミーガラガラヘビ、イースタンダイヤガラガラヘビ、コーラルスネーク、フロリダマムシなどの毒ヘビ類、30頭以上のフロリダパンサー、さらにクモや蚊、有毒植物も生息している。

5月19日、深刻な干ばつに見舞われたフロリダ・エバーグレーズ国立公園で、運河にわずかに残った水に群がるワニたち(Joe Raedle/Getty Images)

トランプ氏の視察には、国土安全保障省のクリスティ・ノーム長官も同席しており、フロリダ州の取り組みを称賛したうえで、不法移民に対しては、税関・国境警備局(CBP)のホームアプリを使い、連邦政府の費用で自発的に母国へ帰国するよう促した。

デサンティス知事もこれに賛同し、「自分で帰れるなら、わざわざアリゲーター・アルカトラズに来たいとは思わないはず。多くの人がそう判断すると思う」と述べた。

「アリゲーター・アルカトラズ」は、フロリダ州が開設する二つの収容施設のうちの一つであり、もう一つの施設であるキャンプ・ブランディングには、不法移民2千人を収容できる。フロリダ州は、国外追放対象の外国人を最大5千人収容できる体制の確立を目指している。

複数の環境保護団体は、急ピッチで進められた「アリゲーター・アルカトラズ」の建設に懸念を示し、連邦法で義務付けられた環境影響調査を実施するよう訴訟を通じて求めている。

環境保護団体「アースジャスティス」の共同顧問アリサ・コー氏は、1日の記者会見で「このプロジェクトは、現場で使用されるすべての車両や、拘束・勤務する何千人もの人々の影響を一切分析することなく、拙速に進められてきた」と述べ、「法律に反して国民にほとんど情報が提供されていない」と付け加えた。

コー氏は「エバーグレーズにはもっと配慮が必要だ。だからこそ私たちは法廷で争っている」とも語った。

原告らは、ゴミや下水などの物理的汚染物質に加え、光や騒音による環境負荷の増大が、地域の野生動物の繁殖や採餌行動に悪影響を及ぼすと主張している。また、保護区の暗い夜空を楽しむ訪問者に対しても影響があると訴えている。

さらに、道路交通量の増加による野生動物の交通事故死の増加についても懸念を示している。

フロリダ州担当記者。米国の宇宙産業、テーマパーク産業、家族関連の問題も取り扱う。